嫉妬

@804yaoyo

第1話


陽も沈みかけてきた金曜日の夕方。多くの子供達が楽しそうにはしゃぐ音が外から聞こえてくる。

私はそれを心地よく思いながら音が遠く離れていくなと感じていった。

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「阿須さん」


__なぁに?


放課後。生徒の声がまだ聞こえるくらいの時間帯だ。


どうかしたの?


私のことを気にかけているようでそうでない。そんな上辺だけの面をさげながら私の話を聞こうとしている。あぁやっぱり私はこの人が嫌いだと本能的に感じた。


「たいしたことじゃないんだけど。今度の大会のエントリーで聞きたいことがあって。」


あぁそのことね

私は奈々ちゃんに出場してほしいとおもってるの


「出てほしいとかじゃなくてタイムで決めるのが普通なの。だから、阿須さんにエントリーしてもらおうと思って。」


__なんで?

私はまだ陸上始めたばかりだから、歴の長い奈々ちゃんに出て欲しいな。


優しい口調で話しかける。

廊下に差し込んでいた光も気づけば薄暗くなっていた。


「、、、、タイムで決めるから阿須さんが出るべきなの」


でも…


本当はこの人は私をイライラさせる。いい加減察してほしい。この行動が私を劣等感から悩ませる。


タイムで決めるって納得いかないわ、だって「だから、私よりも阿須さんのタイムのほうが速いの。私はあなたよりも遅い。それだけ。」


声が震えそうになる。

額から汗が滲んでくる。

心臓の動悸が激しくなる。


言ってしまった。こんなことを言ったら私が負けを認めたということになってしまう。だから言いたくなかったんだ。


貼り付けたような笑みを見せながら私は彼女と目を合わせた。絶対に見返してやりたい。でも今の私にそんなことできる術はない。


__わかったわ


そう言って彼女は微笑んだ。


その日の帰り道は何度か人とぶつかってしまった。視力が落ちたのだろうか。まだ少し明るかった空も、もう暗くなって等間隔に星が並んでいたようだ。


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ころころと鈴の音を転がすような音も今となってはもう聞こえない。あの頃の明るい陽の光もない。時間を確認することもなく、もう少しと思いながら私はもう一度目を閉じた。明日は休みだったっけ?遅番だったけ?


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