魔法の水
青月 日日
第1話
ここにあるのは 魔法の水
名前もなくて
ただ 透きとおっていて
なにも 味がしない
だけど 魔法をかけてみよう
色をたらして
匂いをふわり
それだけで ほら
赤をぽとんと 落としたら
あまい香りが すうっと満ちる
イチゴかな? なつかしいかな?
口の中が 甘酸っぱい
黄色をひとさじ 垂らせば
つんと光る レモンのにおい
まだ飲んでないのに もうすっぱい
顔が きゅっとなる
こげ茶のしずく ひと粒で
チョコレートの香りがただよう
カカオのような 少しの苦み
のどの奥まで 味がした
――でもね
ほんとうは
味なんて
どこにも つけていない
魔法の水に足したのは
色と匂い それだけ
それなのに
味がしたと 思ったのは
わたしたちの こころ
知っていると 思ったとき
見ていないものが 見えてしまう
味わってないのに
味がした気が してしまう
決めつけていた
思い込んでいた
きっとこうだと 信じてた
でも それをそっと ほどいたとき
目をこすって もう一度のぞいたら
そこにあるのは
ただの水
それでも
そこにあるのは
名前の無いほんとうの水
魔法の水 青月 日日 @aotuki_hibi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます