第18話

第18話「おばあちゃん、未来でパチンコ無双」


「やっと戻ってきたわね……未来!」


タイムマシンのドアが開いた瞬間、

そこには見慣れた、けれど少しハイテクになった未来の街並みが広がっていた。

空にはドローンが飛び交い、自動運転のリムジンが無音で走る。

一見、平和そのものだ。


「なあ、あの江戸からこっちに帰ってくると、やけに現代が静かに感じるな……」

俺が思わずつぶやくと、隣にいたお銀が頷いた。


「でも、なんか足りない感じもするよね」


「足りない……って、何が?」


「パチンコよ!」


バンッ!!


突然ドアを蹴破って現れたのは、銀色のジャンパーにピンクのサングラス、

手には大量のパチンコ玉を抱えた――


「おばあちゃんッ!!??」


お銀の祖母、“時空のパチンカス”こと“おばあちゃん”が未来のゲーセンから凱旋帰還!

なぜかサイボーグ化され、足にキャタピラが付いている。


「どっから来た! てか何その足!? モビルスーツ!?」


「お年寄りも時代に乗ってかないとねぇ。こっちの未来パチは脳波で打てるのよ、便利ったらありゃしない!」


「脳波で……!? そんな進化してんのパチンコだけ!?」


俺が口をあんぐりさせていると、

おばあちゃんは腰に装着された“CRお地蔵様∞”という謎機種のユニットを指差した。


「この台、設定MAXにしといたから、今日も出すよ~!」


「おい未来の倫理観どこいった!」


お銀が呆れながらも笑う。


「おばあちゃん、未来の街で何してたのよ」


「ん? ちょっとねぇ、パチンコ大会で世界ランキングに挑戦してたのよ」


「世界……? っていうか未来で?」


「そ。今の未来、もう国とかないから、パチンコ連盟が世界統治してんのよ」


「ディストピアすぎる……!!」


しかも、未来のパチンコホールは宇宙船内にまで広がっており、

木星軌道上のカジノステーションで宇宙最強の“パチの神”と戦ってきたらしい。


「そんなワケあるかぁ!!」


「あるのよ。勝てば1億未来ポイントで、時間旅行券もらえるの」


「景品に時空超えのアイテム!? 法律ガバガバすぎだろこの時代!」


だが、おばあちゃんの話は嘘ではなかった。

なんと、パチンコ玉が時空エネルギーの蓄積装置に転用されており、

高出力を叩き出すことでタイムワープが可能になるシステムが発明されていた。


「つまり未来のエネルギー源は……」


「パチンコ玉なのよ!!!」


「終わった……この世界、終わってる!!」


***


一方その頃、ぬえは未来の裁判にかけられていた。

とはいえ、裁判所もパチンコホールの一角で開かれている。


「……判決。被告・ぬえ、実刑15万玉!!」


「って、玉で!? 実刑が玉数なの!? 何だよこの世界!!」


「溜まったら釈放だそうよ。だから今、懲役で“パチンコ打たされて”る」


「罰なのかご褒美なのかわかんねぇ!!」


結局、ぬえは「玉の刑」に服しながら反省したようで、

今は清掃係としてホールの玉流しを手伝っている。


「人生って、わかんねぇな……」


俺は夜の未来都市を見上げながら、つぶやいた。


「でもさ、今はこうして無事でしょ。江戸も救ったし」


お銀が隣で笑った。

その手には、なぜか交換したばかりの「焼き芋スナック」が握られている。


「未来の芋、味が薄いな……」


「それ、たぶんただのエアパッケージだよ」


「食い物ですらバーチャルって、どうなってんだ……」


おばあちゃんが笑う。


「さ、あんたたちも行くよ。次は銀河間パチンコ大会!」


「えっ、まだ続くの!?」


「出玉が……未来を変えるのよ!!」

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