無職、タイムマシンで面接へ。〜江戸で始まる俺の就活物語〜

ブロッコリー

第1話

無職、タイムマシンで面接へ。


第一話 面接5分前、俺は江戸時代にいた。


「……え? 嘘だろ?」


目の前には、チョンマゲの男たち。全員が刀を差している。

俺はリクルートスーツ姿。手には履歴書。

そして、背後には……煙をあげて動かなくなった球体――タイムマシン。


***


話は今朝にさかのぼる。


ポストに、一通の封筒が届いていた。

差出人は「時空株式会社 採用担当」。知らない会社。聞いたこともない。


「このたびは弊社の時空営業職にご応募いただき、誠にありがとうございます。面接のご案内を同封いたします」


応募した覚えは、ない。けど、俺はいま無職。

大学卒業から半年、30社以上落ち続けて、心も財布もズタボロだ。


だから、行くしかなかった。

指定された倉庫街に向かうと、そこには白い球体の装置があった。


「面接会場へ送ります。安全のため、着席ください」


無機質な機械音声とともに、俺は乗せられた。

気づけば──ここだ。江戸時代っぽい街。土と木とチョンマゲの世界。


完全に異常事態だ。


「おぬし、何者じゃ?」


刀に手をかけた侍が、俺に問いかける。

ヤバい。下手すれば首が飛ぶ。


俺は履歴書を握りしめながら、とっさに言った。


「……営業です。時空の」


空気が張り詰める。


侍たちは顔を見合わせた。


次の瞬間――


「おおお……ついに来られたか!」

「時空の御方か! よくぞお越しくださった!」


まさかの歓迎モード。


あれ? なんか……面接受かってない?


こうして俺の、「江戸で就職物語」が始まった。

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