第24話 竜(きみ)と生きる道を選んだ日
村⼈たちは僕らの帰還を歓迎した。
彼らにとっては、シエナの本来の姿を、未確認であった恐ろしい化け物だとし、村の危機だと⻑が命をかけて打ち倒したという感動話になっているようだ。
そこは、ゼルコバが上⼿く⾔いくるめたらしい。本当はその⻑が⿊幕だったのだが、シエナの意向で真実は明かさないでおこうと決まった。
⻯の⾎は、全てアーノルドが処分するらしく、今後はもう彼のような実験体とされる⼈は出てこないとのことだ。
その晩、⻑や兵⼠たちの追悼式が⾏われ、何とも⾔えない感情のまま、僕はゼルコバ兄さんと⼀緒に⼤きな⽯を運んでいた。
なるべく⾒晴らしのいい場所と、決めていたが、兄さんも納得してくれた。
「ローランにいさん、ドミニク兄さん……、⺟さん。さようなら、どうか安らかに。」
この⼟の下には、何も埋められていない。だけど、願わずにはいられなかった。
僕のせいではないとゼルコバ兄さんは⾔ってくれる。それだけで、救われた気がした。
兄さんは実家に⼀度帰るといって、⼭を降りて⾏く。それを⾒送り、僕もあの⻯を探そうと、旅に出ることにした。
異形たちやギード、謎の少年の動向も気になる。もっと強くならねばという気概を、拳を握って⾼めていく。
⼀⼈では⼼細いけれど、きっと⼤丈夫。
「荷物はそれだけで平気か?」
「私たちがいるもの、動きやすい⽅がいいでしょう。」
『うむ、そうだな。』
「…………なんでいるの!?」
当たり前のようにいるが、彼⼥たちには⽔⻯としての役目と、その騎⼠としての任があったはずだ。シャノン様は別として、⼆⼈がいるのが疑問しか湧かなかった。
「私、⽔⻯から任を下ろされたのよ。」
「俺は雇⽤主がいなくなったから、⾃由の⾝ってわけだ。」
そんな簡単に、⽔⻯の役目ってとかれるものか!?アーノルドにいたっては、せっかく⾃由になれたんだったら、僕についてこなくてもいいじゃないか!と⾔いたいことが募るが、どれから話せばいいのか分からず、頭を抱えてしまう。
それよりも、彼らには⾔いたいことがあるようで、ずいっと顔を近づけてきた。
「いいのか、あのまま残れば、お前が⻑になれたのに。」
そう、村の上の⽴場の⼈が、僕が⻯を打ち倒した張本⼈として、英雄のように崇められたのだ。トドメを刺したといっただけだが、もう会場はお祭り状態。
英雄様を⻑にという⼈まで出てきた。でも僕には必要ない。他に大事な役目があるのだ。
「うん、僕が上に⽴つのなんて性に合わないから。それに…。」
僕は⾜を⽌め、少し先で同じく⽴ちどまり、こちらを振りかえる⼆⼈と⼀⽻に、思いっきりの笑顔を向けた。
「お前たちと⼀緒にいれば幸せだから!」
その後、オークスはシエナとアーノルドともに、姿を消した。⾃分たちのことを知らない⼟地で住み始めたのだ。
そして、数年後、オークスはシエナと結婚。彼らの間に娘が⽣まれた。
名前をラルムと名付けられた⼦は、激動の運命を辿ることになるのだが…、それはまた先の話。
終
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