第7話 観て貰いたかったけど
もう1つのバンドは、曲決めもスムーズ。
少し前に流行った、福山雅治のドラマ・映画の「ガリレオ」のテーマ。
少し前でも。ビートルズに比べたら、断然新しい。
ギターのヤツがめちゃくちゃ練習して、弾けるようになったし、ボーカルはいないから、インスト曲で盛り上がる曲を探した。
キーボードを弾きまくりたいから、古い曲も探した。
最近の日本のバンドは、キーボードが少なかったから、00年代は。
今、僕が17歳。時代は2010年代に入った。
ボカロPや、髭男や藤井風はまだ先だけど。
バンドは別れても、一平はウチにギターを置いてた。
「もう受験生だから、バンドはやめなさいと」と、お母さんはより厳しくなってたから。
ウチの母は言っていた。
「どうせ、お母さんは真面目だから、学校にはくる。オケ部もあるから、観に来たら多分バレるよ。プログラム見るだろし。私がお母さんに黙ってたって、恨まれるのも嫌だし、先に言っておいたら?親はね、嘘つかれるのが、1番こたえるんやから。一平君と、大和君にそう伝えておいて」
当日やっぱり外のステージで演奏中に、お母さんが来てバレた。鬼の形相だった。
ウチの母に「知ってたのに、教えてくれないなんて」と、それ以降はほぼ口をきいてくれなくなったらしい。
「私は言ったのに、とんだとばっちりやわ」と嘆いていた。
そこから、1週間は母は一平と話して貰えなかったらしい。
大和の母は変わらず、母には接してくれたらしい。
「先に言えばってアドバイスはしてみたんですけど」には、「ウチの大和が悪いから、気になさらないで」と、以降仲良くなったぐらい。
親だからって、なんでも話したい訳じゃない。でも親になってわかったのは、嘘をつかれるのは、辛いってことなんだと、母は言ってた。
その裏には理由があって、面と向き合うと、負けてしまうから嘘をつく。嘘をつかせているのは、自分なんだと、親になって理解出来るようになった。
嘘の原因は、今までの自分の言動だから、辛い。
傷つけないための嘘であっても、本音が言えない関係はよく無い。
肝心なことで、嘘はお互いに傷付く。
母はそんなことを言った。
美玖ちゃんにした電話の後、一平たちとバンドが一緒に出来ない、って話になった。
でも、彼女の文化祭で会った時には、一緒にステージに上がれないことは、言えなかった。
僕も、体育館の中で、美玖ちゃんを探したけど、見つからずに会えなかった。
恥ずかしくて、言えなかった僕。
体育祭を出たら、後ろから声がした。
手を怪我したとか、咄嗟に嘘が浮かんだ。
でも、多分それは良くない、
周りが、「あー航太は外されたって?ワンマンだったからな」とか、知りもしないヤツらが、話してる。美玖ちゃんにま聞こえただろう。
「ステージは出られなくなった。せっかく来てくれたのに、ごめん」
美玖ちゃんは、
「他の皆んなは見られたから、良かった。他はもうやらないのよね?ちょっと残念。航太が見たかったから。まだホームルームとかあるよね?先に帰るね」と美玖ちゃんは、友達と歩き出した
思わず言ってしまった。
「受験頑張ってな。東京だろう?俺も東京行けるように、頑張るから」
美玖ちゃんは、滑り込みめも東京だから、どのみち東京へ行く。
「一緒に東京行きたいな」
彼女は、「うん」と笑った。
バンドは崩壊、彼女には演奏は聞かせられなかった。
呼んでおいて、やらないなら、先に断るべきだったは、わかってたけど、いなかった。
彼女の後姿を、ずっと見ていた。
文化祭が終わり、1学期が終わった。
母は多分、僕の気持ちを考えて、東京芸大でも変わった分野をやる、音楽創造、とかは面白そうだけど?と水を向けてはくれた。
が、僕は音大と言う狭い世界より.広い世界が知りたくて、大学進学を考えた。
実は、1度目高2の時に特に練習もせずに出私た、キーボードの雑誌で、審査員特別賞を、3年では文化祭後にファイナリストに選ばれた。
このまま、東京の大学へ行ければ、雑誌社にも知り合いがいたから、何か音楽で食べる道、演奏で生きていけそうだと感じていた。
バンドでは、上手くはいかなかったけど、バンドの輪の中への入り方は、少しは学べたと思っていたけど。
本当は彼女に待ってて貰って、一緒に帰りながら話したかった。
が、この有り様じゃ、彼女の顔を見て、笑顔を見て、話したかったけど、勇気が出なかった。
※ ※ ※ ※ ※
美玖は、ずっと2人の後を、追いかけてきた。
1番の大和と、ここ1番の航太君の。
大和君は、小学生時代から、華々しい成績を上げてきた。
端正にキチンと弾くピアノ。先生方に減点させないピアノで。
上手いし、キチンとのレベルが高い。でも、人の心を動かすようなピアノか?と言われたら、違う気がする。
航太君のピアノは、一瞬で心を持って行かれるような、素敵な音を出す。
が、それがワンフレーズだけで終わったりする。
1曲ずっとが、続かない。
彼は自分で小学生時代から
「俺の集中力は、ウルトラマン以下しか続かないからな」と笑っていた。
集中してるその瞬間の音が出たら、彼はその前や後は、もうどうでも良いかのように、気のない?明らかに違うピアノを弾く。
だから、減点が多かったり、冒頭でそれをやると、中盤ね良いフレーズまっ、聴いて貰えなかったりする。
代わりに、1音にかけるパワーは.多分誰ダにも真似が出来ない。続かないだけで。
演奏を聴いた、美玖の昔の先生も、こんな表現をしていた。
「あの子があんな音出す部分は、後家殺しだわ〜」と。
それぐらい、乾いたハートにも、火をつけるような、ウットリする音を出す。
大和君のキチンとした演奏も、航太君のウットリするような音も出せない、そんな私が、毎日1番練習時間は多い皮肉。
彼らのレベルには、届かないのがわかっていても、練習をピアノをやめられない、自分の未練がましさが、悲しかった。
おまけにに、そんな2人に一平君まで入ってバンドをやるとか?
最低でも、ピアノの練習時間を削るしか、方法はない。
1日は24時間しか無い。
寝ないでピアノは弾けない。
「ピアノも円運動だから」と言った先生もいる。
ピアニストのその人は、身体のメンテナンスのあめに、鍼や整体も通っているらしい。
脳や頭も使うから、ちゃんと睡眠を取らないと弾けない。
部活もやらず、友達と放課後遊びに行くことも無い。放課後にカラオケなんか、1度も行けた試しが無い。
練習やレッスンが詰まっているから、夕飯も、休憩のために食べといるような物だ。
遊びもオシャレも、無駄口を諦めてまで、私ごときがやって意味があるのだろうかと思う。
デートすることも、楽しいこと、ゲームもお預けだし、アイドルの話にも付いては行けない。
東京へは行っても、ライブを観たり、新しいお店によることもない。ひたすら、レッスンの時間を待ち、レッスンして帰ってくるだけ。
大和君なら、航太君なら、そこまで時間や、犠牲を払っても、やる意味がある気はする。だけど、自分は?
バンドの話は、正直ビックリした。
小学生時代から、ゲームもして友達とも遊んでた航空太君は、まだわかる。多分おそらく、彼が言い出したことなんだろう。
が、他の2人は?
小学生時代は、ピアノを頑張る仲間として、分かり合える仲間として、大切だった3人は部活を始めたり、それぞれ違うことにも時間を使うようになった。
私は?ソルフェージュだの、声楽だの聴音だな、ピアノに関係することが、増えた、費やす時間が増えただけ。
やらないと、大学入試で困るからやっているだけ。
楽しみのため、やりたいからやっている訳では全くない。
時間を費やしたら、大和君に追いつけたり、差が縮まるなら、頑張れる。
でも、持っている物が違うのか、音楽は好きなのに「アナタのピアノには音楽が無い。何か伝えたいことが、全然伝わって来ない」と言われるばかり。
「もっと音楽を出して」と言われても、私にはその方法がわからない。大袈裟に弾いて、「どう?これ?」みたいな、自己顕示の塊のような演奏も、嫌いだからしたくない。
練習は頑張るけど、結局私のピアノは、誰にも、どこにも伝わってないのかもしれない。
小学生のころには、小さな差だったはずだけど、その差は練習を減らした人たちと、広がっている惨めさ。
小学生時代には、ちょっとした賞が貰えて、母に褒められるのが嬉しくて、やっていた。
ピアノが嫌いな訳ではない。
後輩にあたる、航太君の妹とは、もう出るコンクールが違う。
彼女は、1番難しいコンクールに挑戦しつる。
自分は?自由に曲が選べるから、発表会代わり出ている子もいる。
発表会っ弾く曲も、もう明らかに越されてしまっているし、出番も自分が前だ。
後ろほど難しくて、上手い人が弾く。
学年順では無いけど、実力順にはなっている。
好きなことをやりながら、音楽をやり続けている、航太君が羨ましい。
私がそんなことを言うのは、多分ゆるさない。
今までかけてきた、お金と時間、回りの目を考えて、バンドなんかとんでも無いし、周りを誘う勇気も、リーダーシップも持ち合わせていない。
だのに、航太君は、作ったバンドから、追い出された形になった。
大和君も、一平君もよくわかってのことだろうと。
自分たちと、ビートルズやってるだけでは、航太君には不満?物足りないんだと言うことを。
バンドの真似事が出来たら、それで良かった皆んなと、先を見ていた航太君では、見えていた世界が違ったんだろう。
美玖は航太君の、そんな自由なところが好きだった。
一生懸命に練習はするけど、必死にはならない。自分がやりたいことが、わかっているから、アイデアも浮かぶ。
今年は、何を弾いたかは知らないけど、航太君らしく、好きな物を弾いただろうし、古い曲でも納得のいく曲を演奏したん、だろうと思った。
時間を誤魔化して、彼と帰りたかったけど、美玖にもステージに出られる無いことを、言えずにいたなら、きっと気まずいだろうから、帰った。
本当は、コレからどうしたいのか?音楽をどう考えているのか、聴きたいことは、たくさんあったけど。
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