第6話 バンドから弾かれた

多分、一平も美玖ちゃんが気になっていて、演奏会で一緒になると、よく話しかけていた。美玖ちゃんは、愛想よく誰とでも、話していた。お兄さんやお姉さんたちとも、

僕は美玖ちゃんと話したいけど、彼女と2人になると、なかなか上手く話せない。

美玖ちゃんは、目がクリクリで、肩までのストレートヘアがよく似合う。

演奏会だと、アップにしてたりしたけど。

よく笑うし、つまらないギャグにも、反応してくれる。

僕は正直、美玖ちゃんが、好きだったし、彼女は僕には、特別だったと思う。


彼女は普通大学ではなく、音大へ進学するようだった。

受験する学校は1番難しい学校だし、朝から夜まで、レッスンが詰まっているらしい。

ピアノを弾く以外に、試験科目があるから、それぞれ先生に付いて、普通高だから学校の勉強もある。

僕が高1までて、コンクールに出るのをやめたから、なかなか会わなくなった。2年は、美玖ちゃんの学校の文化祭には、友達に誘われて行って少し会えた。

次は最後だから、美玖ちゃんを文化祭に誘いたかった。


2年の文化祭が終わり、夏休みにはロボコンに出て、アクシデントで県大会には行けなかった。

本体がぶつかった衝撃で、バラバラに壊れたからだ。


文化祭の後、来年こそは、美玖ちゃんを誘いたい。

僕らが楽しくやってるところを見て欲しかった。妹たちも来る。

家には、彼女の家の電話番号はある。

ある日曜日の夕方、母もいないから、こっそりとかけてみた。


なかなか出ないなぁと思っていたら、妹さんが出た。「美玖ちゃんは?」

「練習してる。ちょっと待って」と、妹は呼びに行ってくれた。

多分防音室だから、電話は聞こえないんだろう。

しばらくして、美玖ちゃんが出た。

「もしもし?航太君?どうしたの?」

黙ってる場合じゃない。ちゃんと話さないと。

「あのさ来年の文化祭は、友達と行くことにしたから、ちょっとだけでも、会えないかなぁって。案内してくれたら.嬉しい」美玖ちゃんは笑って言った。

「大丈夫だよ。皆んなで歌を歌うのが、昼前だからそれ見て。終わったらお一緒にぁ昼食べよう、屋台とか」僕には美玖ちゃんの笑い声が、楽しそうに聞こえたから、思い切って言ってみた。

「で、忙しいと思うけど、うちの文化祭にも来てくれない?夕方にステージで、あの皆んなとバンドやるからさ。観に来てくれない?来てくれたら、嬉しいけど」と言ってみた。

「日曜日ね午後からは、声楽やレッスンはあるけど、4時ぐらいからなら行ける。私もバンド見てみたいから。ボーカルが大和君って、本気?って思ったよ」クスクスと笑っている。

「僕らも最後だから、良かったら少しだけども、聞いて欲しい」

「うん。わかった」

彼女と約束した。嬉しくて、皆んなに話したくなったけど、黙ってた。


新年明けて早々に、驚きの話があった。

皆んなで、バンドを抜けたい。つまりは僕1人になると言うことだ。

いったい何があった?


まずは、一平がビートルズ以外は、ウケようとウケまいと、演奏したく無いと言うこと。例外はRCサクセション。

変わらないと言うとそうだけど、変わらな過ぎて、意固地になったか、熱病にでもかかっているのか?

3年近く経っても、微塵も変わらない、

何故今だに、ビートルズにこだわるのかは、さっぱりわからないけど、ビートルズの音楽が好きなのは、よく知ってる。

1番情熱はあるけど、厄介な情熱だし、女子にモテたいなら、絶対にビートルズは、選曲すべきじゃない。

何故、それがわからないのが、頭が良いだけぬ。不思議で仕方なかった。まずは、一平がビートルズ以外は、ウケようとウケまいと、演奏したく無いと言うことだけ。


他のメンバーは、「航太には好きな音楽を好きにやって欲しい。自分たちでは、足を引っ張ってるから、自由にさせてあげたい」とのことだった。


大和はバンク系が好きだったり、僕とは違う分野の今の音楽は好きな。

でも、自分の声質と高さ、ビートルズマニアが頑固だから、自分でも歌える、ビートルズに甘んじているように見える。

ウチのバンドに、サイケやグランジは合わないし、反対されるのがわかってるから、何も言わないでいる感じだった。


望には夢がある。ゲーム会社に入って、げを作る夢。それが、1番だから今採用されてる、1番の学校に入るのが、最優先だ。それだけは、何があっても、親には反対されていても譲らない。

ずっと真面目に勉強して来たからこそ、大切さ時間は他に避けないことは、よくわかっている。


そもそも、楽器が出来るからと、あの2人を誘ったのは、間違いだったんだろう。

ピアノが上手くても、大和のロックボーカルは上手くないし、家で練習出来ないでいる、一平も、ギターは上手くは無い。

練習しないと、偏差値は高くても、上手くはならない見本みたいな、ヤツらではある。大和を含めて。彼も家で練習は多分してない。


僕に才能かあるとか、無いとかじゃなく。

僕には音楽が、バンドが1番大事だったから、差がついただけ。

打ち込めるかどうか?も、才能のうちならば、僕が1番才能はあったのかも知れないし、色々なジャンルを聴いて来たからこそ、出来る音楽の幅も1番広くなっただけ。マインドが役に立ってはくれた。


才能って言葉は、神聖にも、与えられた感も、追いつけない感も含んでいるように感じる言葉だけど、つまりは好きと繋がっているなっは無いか。

好きなら、さの才能は伸びるし、紙かがり的な物になる可能性はある。

好きなり打ち込んで、才能が花開くこともある。

好きなら、練習も工夫もするから、上手くなる。

才能は皆んな色々持っているけれど、好きと結びつかないと、なかなか形にならないだけなのかもしれない。

好きは簡単に変わるし、揺れる。

自分より上手い、リフティングをするヤツを見て、心が折れたら好きは萎んでしまう。上手いヤツを見ても、好きで居続けられて、悔しいから追い越そうと努力するには、好きがエネルギーになる、

多分、どの分野でもそう。

諦めてしまえるなら、好きの量が少ないか、人と比べてしまうからだ。


好きの量に圧倒されて、僕には無理と自分で歯止めをかけて、好きじゃなくてもできること、一般的に評価されることに逃げてしまう。

仕事が好きなら、それも好きなんだから、良いと思う。好きは、何も絵を描いたり、芸術的なことだけじゃない。

人の話を聞いてあげるとか、人を元気付けるとか、そんな小さな好きから、始まっていくことも多いし、それも才能だと感じる。

人をノセるのが、上手い人もいる。わかっていても、ノセられて挑戦してしまうこともある。


僕は、「皆んなが揃ってやりたい。それが希望だ」とは言ってみた。

が、彼らは黙ったまま。

話しても、無駄な空気が流れていた。

一平が、立ち上がると「皆んなで、決めたことだから、皆んなのために。お前だって好きな曲を存分に弾きたいだろう。なら、仕方ないやん」


僕がこの前の年のキーボードコンテストに、ファイナリスト3人の次の、審査員特別賞を獲ったことも、彼らは知ってる。

あの演奏を聴いたら、自分たちのパックでは、航太は存分に出来ないのが、よくわかった、とも話してたことがある。

僕が1人ずつ勧誘した。

皆んなも賛同してくれていると思っていたのに。

どうして、他が抜けるのか?

僕とはやりたくないって、意思表示だったことだくは、確かだった。


自分からは、絶対にやめない僕のためと、考えた策だった様子だった。

プロ中のプロに褒められているんだから、僕らじゃダメと考えたんだろう。色々と考えたら、涙が溢れてきた。

ヤツらの前では、泣きたくは無いから、航太は教室から、走って出た。もう泣いていた。


もう1つのグループのヤツらは、こっちよりは多少は上手い。何より絶対の拘りのあるヤツはいない。

結局、自分が集めて、勧誘して楽譜もアレンジして、作ったバンド。

それなのに自分だけが、放り出されると言うことか?


僕がベースを買って、練習して上手くなったから?

ディープパープルの『バーン』をやりたいって言ったせい?

ヴァンヘイレンの『ジャンプ』をやりたいって言い出したせい?

ワンオクか、UVERworldは、1曲ぐらいは、したいと言ったから?


ひとことで言うと、今までの延長ぐらいなら良いけど、それ以上の練習が、必要な曲はやりたくないってことか?

それも、盟友の一平が言い出すとか。


僕らの友達の絆は強いから、バンドが飛んだぐらいでは、仲は変わらない。

それでも、航太は寂しくて、寂しくて辛かった。

実力差はわかってたけど、皆んなでやりたかったのに。それに意味があったのに、

パート譜を作るのに、膨大なな時間を使っても、楽しかったのに。手書きだったから、汚い楽譜だったけど。


僕には。何も相談なしに、決めたことが、1番辛かった。

僕以外のメンバーだけで、そんな話をしていたことが。

やるなら、僕のいるところで、正面から言いたいことを、直接僕言って欲しかった。

僕を前にしたら、言いにくいのはわかるけど。

悔しくて、泣きそうだった。


そして学祭に申請してたのは、元のバンドの名前だから、体育館のステージに、僕以外の皆んなはでる。

僕はは出られなくなった。


『ジャンプ』って言って、皆んなで合わせて、飛んでみたかっただけなのに。

リズムを飛ばしても、あのドラムが好きだったし、芯になってくれて安心したのに。

弾けなくも、頑張ってくれるペースが聞きたかったし、歌えてなくても、普段と違う姿を見せてくれた、大和が少しだけカッコ良かったのに。

ビートルズ以外にも、世界は広いって、ちょっとだけでも、理解しようとしてくれたら、嬉しかったのに。


こうし最初の偏差値高いバンドは、泡の向こうに消えた。


もう1つのバンドは、曲決めもスムーズ。

少し前に流行った、福山雅治のドラマ・映画の「ガリレオ」のテーマ。

少し前でも。ビートルズに比べたら、断然新しい。

ギターのヤツがめちゃくちゃ練習して、弾けるようになったし、ボーカルはいないから、インスト曲で盛り上がる曲を探した。

キーボードを弾きまくりたいから、古い曲も探した。


最近の日本のバンドは、キーボードが少なかったから、00年代は。

今、僕が17歳。時代は2010年代に入った。

ボカロPや、髭男や藤井風はまだ先だけど。


最後の学祭は、やり切った、

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