第5話 僕らのバンドは全くモテない?
この調子だと、1年計画じゃ無いと、曲は仕上がらない。
終わってすぐに候補曲をリストアップした。UVERworldや、RADの曲とか、色々出したけど、皆んなは関心が薄い。
音楽の偏差値は高い。
音感は皆んな、良いほうだ。
絶対音感じゃなくても、相対音感は。
でも、僕らには、肝心のバンドへの情熱が足りなかった。
BUMPの『天体観測』は強力に推してみたけど。
中3男子で、それなりに楽器は弾ける。
でも、僕らには情熱が足りなかった。
来年の曲に『情熱大陸のテーマ』を出してみた。
ヴァイオリンが、弾けるメンバーがいるから、盛り上がるから。
大和は歌わなくても、ヴァイオリンが弾ける。なら、カッコ良いし、皆んなが知っ出るから、盛り上がるかも?と。
が、メンバーは渋い顔。
リズム隊は、とてもラテンのリズムは無理だと言う。
どんなバージョンでやるかにも、よるけれど、ギターは少ないし、リズムだけはつまらないと言う。
なら、お前はチェロを弾けは?ギターはアレンジで誤魔化すから、ソロギターにだけ持ち替えて弾いたら?
「やっば、ムズイよ〜」が、全員の意見だった。
良い案だと思っても、いつもこんな調子に流れていく。
帰り道、雅也と一緒になった。
雅也は言う「やればやるほど、才能の差を感じるんだよ。特にお前と大和には。コード間違えたり、すぐに気づくだろう。耳で聞いてるだけで。違いを感じて、俺はやめたくなる。お前らは音楽以外もだけど、音楽は特にエリートなんだよ。凡人の俺らとは違うなぁってな」
航太は盛り上げたい一心で、家にあった余った機材で、自作のショルダーキーボードを作り始めた。
父親が買って放置していた、MIDIのキーボードに、木の板切れでボディとネックを付けて、切り替えスイッチやら、色々付けた。
無線じゃないから、ケーブルは繋がってるけど。
ハンマーみたいな形になって、レッドハンマーと呼ばれたそのショルキーは、僕の情熱の現れでもあったんだけど。
間違えないように、固まったまま弾くベースや、棒立ちなボーカルを、ショルダーで、走り回って掻き回したかったからだ。
ピートルズ路線は、曲は変わったけど同じ。『天体観測』は下手過ぎた。
つまり俺たちの実力では、不足してたってことで。
僕らは元から仲が良い。
が、周りからは、何故仲が良いのか、理解されないような、仲間ではあった。
学年1、2位の成績の、真面目なお坊ちゃま。ついでに怖い母か2人とも付いてる。
普段は基本はみ出さない2人。
数学の成績はずっと学年トップの、無口で冗談も言わない、真面目に宿題をやるのが当たり前の、地味な超優等生。
たまにふざけるけど、基本真面目に勉強するし、人付き合いが悪くは無いけど、良いとも言えない。
チャラチャラして、授業中も寝てるか、考えごとをしていて、質問に答えられない、不真面目な生徒で、友達の幅が広い。
こんな5人が、何故集まって、テスト前にバンドの練習をしてるのか、周りにはサッパリ理解出来ないようだ。
『航太みたいに、いい加減なヤツらと、一緒にいないほうが良いのでは?」と、心配してくれる女子もたくさんいるらしい。
面と向かって「アンタのお遊びに、他の人を振り回さないで」と言われたこともある。周りには僕らの友情も、何もわかってないと、考えてたけど、本当をわかってなかったのは、僕だったかもしれない。
ギターとボーカルは幼稚園から親友。おまけに部活も同じで、家もすぐ近く、
僕とも小学生からの知り合い。
ドラムと僕も、小3で彼が引っ越してから、ゲーム仲間で塾も一緒に行った仲。
ドラムとベースも塾からの友達で、部活は数少ない男子で、親友。塾ては3人で、仲良しだった。
どこかが喧嘩しても、繋ぐ輪の僕が居れば大丈夫だし、皆んなは付いてきてくれた。
航太も、皆んなに、頑張って合わせてきた。
メンバーが弾けないなら、弾けるようににアレンジを直して、即興で変えることもあった。
実は高校からは、もう1つバンドをやるヤツらが出て来た。
ギターとベースだけだけど。ドラムは打ち込みして、鳴らしてそれに合わせるらしい。
新しい曲をやりたい話も、色々提案してくれる、
僕は高2の前の高1のお年玉で、やりたかったから、ベースを買った。
超初心者向けの2万円しない安物。
ギターより多分自分に合ってるし、ギターはアコギがある。ピアノの合間に練習したら、ベースの雅也より難しいフレーズが弾けるようになった。まあ、ピアノで両手の指を動かしてるから、動くし弾ける。ベースは楽しかった。
高2は変わらないメンバーで、ビートルズだのをやった.ショルキーをぶら下げながら、ステージ前で弾くのは最高だった。
皆んなもそれぞれ、上達もして満足だった。
3年近くやって、僕らにはバンドがある生活が、普通になっていた。僕だけだったのかも?だけど。
僕には皆んなで、ステージに立ちたい理由があった。大和、一平に望は、小学生時代からの、音楽仲間だ。
そのグループには、僕の妹や、一平の妹もいた。中に1人の女子、美玖ちゃんがいた。憧れの女の子だった。医者の娘。妹が僕らの妹と同級生だから、女の子たちは仲が良い。
用があると、たまにお母さんから電話があった。
練習の邪魔になるし、学校が近くて必要がないから、僕らは携帯は持たせて貰えないままだった。
中学生の9割は、携帯を持ってた時代だったけど。やり取りには、僕はパソコンのメールを使ってた。
望は一平の妹と仲良しだったし、大和は学校で、ピアノが1番上手いから、取り巻きの女子がいた。
普通のバンド物だと、不良っぽいヤツやルックスの良いヤツがいて、女の子たちは寄ってくる。漫画の世界だと、そんな感じになる。たまにタバコを吸ったりするヤツらがいたり。
僕らもバンドをしたら、少しは女子が興味を貰ってくれるかと、期待はした。
が、それは全くの夢物語だった。
ボーカルの大和はクラッシック好きの女子に、蘊蓄を垂れて取り巻きはいた。が、彼も屈折していて、あまり人と距離を詰めない。今もそう。
幼馴染の一平や、僕とも。孤高の人な雰囲気。
ウチの母とは、よく話すらしいから、母が「おばちゃんの私にも愛想が良いし、話してくれるから」と言うと、彼の母親は「多分気に入ってるんだと、思いますよ」と言われたらしい。おばちゃんにも、気にいる、いらないは確かにあるけど。
母は愛想は良いけど、たまに図星な、ピシャリと言うところがある。それが、気に入ってるかは、不明だけど、
一平は、バンドで、女子モテは1番期待はしてた。
成績は入試で1番だから、頭は良いし、人当たりも良い。彼女は欲しかったけど、人あたりは良いけど、高校では全くダメ。
仲良しさえ、出来なかった。
ルックスは、ちょっと頼りなげな顔に、細くて小さいけど。
バンドの平均身長は、かなり低かった。
高2の時でさえ、僕が唯一180センチ。他は176センチ、73、68、65センチ。
1番小さい雅也は横にはある。ぽっちゃりだし。
顔も、イケメンはゼロ。基本的に口ベタで、女子慣れはしてない。
成績も1番から皆んなヒトケタ。航太だけは、かなり下がって40番。
1学年は、250人以上だから、秀才のグループではある。
普通だと絶対バンドは組まない人たちが、バンドをやったと言う感じ。
だからか?バンドの話で、女子に話しかけられるたりすることもなく。
多分女子からは、真面目なオタク集団に見えてたんだろう。
1曲ぐらいは、女子ウケもする、アイドル曲や、アニソンとかやれば、良かったんだろうけど。
ビートルズだから、そりゃモテはしない。母たちの年代でも無理。クイーンでもどうかぐらいたし。
ベースの雅也は、ドラムの望のペアで打楽器の女子が好きだった。
でも、望と彼女は、単なる仲良しの同性の友達みたいで、輪には入れるけど、2人だけにはなれない。
望は部活でも、他の女子とはほぼ話さないから、雅也の気持ちも察してやれずに、いつも2人でいる。
雅也は何も言えないままだった、
僕らが話しても「気付かれたくないから、言わないで欲しい」と言う。
同性の友達とは話すし、慣れたおばちゃん=航太の母てはよく話すが、基本的に人見知り。幼い雰囲気の子が好きで、30歳に至るまで、ちゃんとした彼女がいたことは無いまま。
望は高校時代は、1番女子とはオープンに話せないヤツだった。彼女か出来るとは、全く思えないタイプ。ルックスもだし、無口どころか、僕や雅也とは話すけど、他とはほぼ話さないから、
女子に至っては、例の同じ楽器の子しか、ほぼ話したか?ぐらい話さないし、航太の母にもほぼ話さない。例外は自分のお母さんだけど、何でも話すとは限らない。航太のことは話すらしく、「こう言うところが、わかってくれるから好き。だから、気が合う」とか、血液型占いまで持ち出して、航太と合う話をするらしい。
彼の予想では、「航太君は、A型」らしかったが、残念ながら僕は、典型的なB型の人だった。
航太の母は、周りにB型が多かったから、性格?傾向はよくわかる。自分の母も親友も彼氏も、B型が多かったから。
そんな彼は、航太と一緒に東京へ行く夢が消えて、地方大へ進学して、主席だから皆んなも話しかけてくれて、人付き合いがまるで変わった。
オープンになったし、人見知りも薄くなった。ネットゲームのチャットで、彼女をゲットして、結婚するあたりは、これまでの彼らしいと言うとそう。
1番気難しそうに見えてたから、航太ほ母は心配してだけど。
僕に「付き合って欲しい」って言ってくれた子またいた。わりと人気のテニス部の女子。
が、彼女はバスケ部の、航太の友達が好きだった女子なのは、知ってた。
だから、僕からは何も言わないし、しないし、ちゃんと断ったのに、「アイツが横から出て来て、邪魔した」とか、男子で噂にされて、バスケ部のヤツは口も聞いてくれなくなった。
テニス部女子からは、もうそうスカん。
他の子らま、僕は口説いてもない。
「他に好きな子がいるから、ごめん」とちゃんと言ったのに、逆恨みされた。いい加減なヤツだと、言いふらされて、こっちが迷惑した。
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