第3話 曲とボーカルが決まらない

ギターの一平は頑固だ。

僕が、「他にこんなのもあるよ」と、学校で聴かせたり、CDを貸しても全く耳を貸さない。

ビートルズとRC命。

それ以外は、ハードロックも、ソフトロックも、もちろんブラック系も拒否。

まだ、中二なのに、そんなに決めつけるか?

厨二病な感じ。

後に大学以降「僕は子供やったな。迷惑かけてごめん」と謝ったけど。


とにかく、中二の秋から始めたけど、文化祭まではほぼ半年しか無い。

ベースとドラムが間に合うのか?それが、何より問題で。

中三の文化祭は、演奏出来そうな曲を選ぶしか無い。

ウチには楽譜は、母親が持ってたスティービー・ワンダー、ビリージョエルに曲ごとの、他にはJポップのドリカムとか、坂本龍一が曲ごとのとか。

他は、父親が持ってたジャズと、古いヤングギターに乗ってる曲ぐらいしかなくて。

今の僕らには、難易度が高いか、好みじゃない。


ビートルズ好きの一平の家には、ビートルズの有名曲の楽譜へあった。

が、バンスコ、つまりバンドスコアでは無くて、ギターのコードとメロディーが書いてあるだけの楽譜。

今のように「初心者向けの曲」とかを、ネットで探しても、ほぼ出て来ない時代でもあり。

ネットで曲ごとに、楽譜が買えることもなく。

バンドスコアは高い。

一冊三千円の楽譜を買うお金も無い。

だいたい、ビートルズで、皆んな良いのか?

バンド4人で、好みがあるのが2人。でも、好みは全く合わない。僕はハード系ロックか、ブラック系が好き。

もう1人はビートルズオンリー。

残り2人はポップスや、ロックに興味も知識も、無い。まだ、大塚愛が好きとか、何かあれば、近いのも探すことも出来たけと。


仕方なく、とりあえずビートルズの曲から、コードやリズムが、簡単そうな三曲を選んだ。

比較的簡単な『ヘイ・ジュード』なんかは、盛り上がらないから、却下。

『抱きしめたい』とか、初期の曲。

バンスコじゃ無いから、他の部分は僕が耳コピーして、楽譜を作ることに。

聴きたくも無いのに、毎日何十回も、部分を切り分けて聞いた。


僕は中二の秋には、シンセを父親の知り合いから、安くで譲って貰い、お年玉で返済した。

初めてのキーボード。自分だけの楽器。

古い機種で、傷もあるから、置く場所が無いから、格安で。

ファントムは、大学に入るまで相棒だった。

ピアノは家族の共有だから。

ギター二人でも良かったけど、足りない音を足すには、僕がシンセを弾くのが一番早いと考えたのは、全員の意見。


ドラムは、吹奏楽で打楽器をやってるから、手は大丈夫。叩ける。

脚が難題だった。

手と脚を、違うリズムで動かすのに、苦労をしてたようだけど、先生に毎週土曜日習ううちに、正確なリズムだけは叩けるようになった。

脚と両手で違うリズム、複雑なリズムを叩くのは、やっぱりかなり、大変そうだった。釣られてしまうから。

正確には叩ける。が、それ以上出来無いのが、難点だけど、初心者はまずそこが難しい。

グルーヴなんて、遠い先の話だし、性格も几帳面だから、正確なリズムから外れるのが、気持ち悪いみたいだし。

何より数学が大好きで、プログラムが好きな奴だから、仕方ないかで。ある意味打ち込みのような、ドラムっぽい。ロボット的?かましれない。


ベースは、かなり難航した。

ユーフォは金管だし、左手はほぼ指は使わない。

動かすのも、片方だけ。

ベースは、左右を動かさないといけない。

右手は動かしてたけど、左手は指は使わないから、左で弦を押さえる、移動させるのに、苦労している。同じ低音だからは、無理があり過ぎたか?


リズムも、ユーフォより複雑だったり。

だいたい、ビートルズだから、元のベースは馬鹿上手いポールが弾いてるから、コピーしながら考えた。

「雅也は本当に、コレが弾けるのか?」

試しに、八小節分を渡して、弾けるかやって貰った。

雅也の答えは「無理〜。左手が追いつかない」と。

八分音符がむりなら、それ以上は当然無理。


ますは、オリジナルに近い音を楽譜にして、そこから、楽譜を簡単に弾きやすいように、音数を減らしたり、変えたりした。

僕は音をミニマムに削る、職人になった。

そして、フレットの移動を、出来るだけ減らす。

僕らがあれこれ模索してるのは、友達には伝わっていたのか?


ある日、ピアノが1番上手い大和が、僕らが話してるところに来て聞いた。

「ボーカルはいるの?」

「まだ」が答え。

「なら、僕が歌ってもいいか?」と。

正直クラッシックにしか、興味が無さそうだったけど、実はバンド物、洋楽はコッソリと、色々聴いてたことを話し出した。

皆んなが一斉に聞いたのは、

「お母さんは大丈夫なのか?」だった。

ここの母も強者で、先生たちも逆らえないような押しの強い人だった。

成績もトップクラスだし、部活から戻って、夕飯後、夜中12時までピアノを練習してることは、近所の一平はよく知ってるし、何よりお母さんの言うことに、絶対に服従の姿勢だったから。


中学からは、遠くまでピアノのための指の訓練にも通い、ゲームは全くしない。

させて貰えないし、持ってもいない

両親が夜遅くまで帰らないとか、泊まりの時には、中学生なら友達と遅くまで出かけるか、女子を誘うのが、今どきなんだろうけど、彼にはお目付け役のお姉さんまでいる。

そのお姉さんに、ワイロで500円を払って、親がいない時に友達からゲーム機ごと借りて、小学校からやらせて貰えない、ゲームをやってるらしい。

聞いていて、涙ぐましいと感じで。


小学生時代、コンクールの審査中や、演奏会のリハ後の待ち時間に、呑気にゲームボーイをしてた僕と、一緒にやったのは、本当に普段は出来なかったからなんだろうと。


そんな母に服従で、ピアノ優先の彼が、まさかのボーカル、

音感は良いから、音程は外れないけど、ロックは何処に?

これが、バンド?になる、キレイでシャウトしない歌い方。

他のメンバーは、学年1ピアノが上手い、音楽偏差値が高いヤツなら、万々歳な感じ。

歌は音感ては関係はあるけど、声が発生が問題。

文部省唱歌を歌うような、歌い方っはバンドなはならない、

かくして、音楽偏差値が馬鹿高く、勉強偏差値まで化け物みたいな、バンドが誕生した。


僕は聞いた『お母さんにバレても、大丈夫か?」 

『何とかなるんじゃないの?」

本気で、本番前にやめさられないかと、皆んなヒヤヒヤしながらの練習が始まった。

基本的に、普段は部活が優先だから、練習は試験前しか出来ない。

そのあたりが、そこらのバンドとは違う。

バンドのためなら、部活サボりは普通だけど。

同じ文化祭には、オケ部も吹奏楽も演奏時間があるから、本番前に休ませてはくれないし、休む度胸もない。


こんなんで、バンドやれるか?は、不安でいっぱいだった。


⚫︎学年1学校1ピアノが上手いが、おぼっちゃまカットは、ビートルズ風ねマッシュルームカットだけど、シャウト出来ない→ボーカリスト

⚫︎学年3番にピアノが上手いが、音楽はビートルズとRCサクセション以外は、受け付けないぐらい頑固だけど、憎めないヤツで、鬼のように怖い母がいるから、家で音が出せない→ギター

⚫︎リズムキープだけは抜群だけど、真面目だから、勉強にも手を抜かないから、練習時間がない、技が覚えらない。妹がボカロP聴いてても、全く耳に入ってはいない→ドラマー

⚫︎音楽偏差値は自分も高いほうなのに、周りが凄すぎて萎縮してるし、アニメの音楽ぐらいしか聴かない→ベーシスト

⚫︎学年と学校2番はピアノが上手いし、1番ポップスを色々聴いて、耳コピ能力やら、やれる楽器も多いから、バンマス的存在だけど、皆んなに意見が無さ過ぎて、結局全部、勝手に決めてるヤツと思われてしまう→キーボード


音楽偏差値は高ければ、良い物では無い。

ドラムは、五線譜はちゃんと読めないけど、リズム譜は読める。音楽4、

ベースは音楽史は得意、音楽は4か5。

ギターと、ボーカルと、キーボードは、学校の音楽で4は、とったことは無い。

もちろん楽譜は読めるし、書ける、、


学年最強の5人だから、アッと言う間に噂になったが、練習する様子も無い。

カッコ良い、ロゴだけは出来たけど。





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