25話 遡行する未来
白い光が揺らめき、ユリの身体から溢れ出す浄化の力は次第に安定してきた。だが、その光の中に潜む黒百合の影が、依然として彼女の心を引き裂こうとしていた。
ローズは目を血走らせて言った。
「お前、あいつの力を恐れてるんだろ? そうやって自分を縛って……」
「違う!」ユリは声を震わせ、だが揺るぎない意志で答える。
「あの力は、私の一部かもしれない。でも、私はそれを乗り越える。世界を壊すためじゃなくて、守るために――」
シャクヤクが冷たい視線を向ける。
「守る?そんな甘い理想で呪いが消えると思うのか?お前にはまだわからないんだよ……」
その言葉にユリの心は一瞬揺れた。だが、スイレンが小さく囁く。
「ユリ、私たちもかつては同じだった。絶望と怒りに囚われて……でも、それが全てじゃない」
他の教祖たちもそれぞれの感情を押し殺しながら、ユリの変化を見つめていた。互いに目を合わせると、かつての痛みが一気に蘇り、胸の奥が締めつけられる。
マリーがぽつりと言った。
「私たちも……いつかは、あの呪いから解放されたいのかもしれない……」
ロベリアが不敵な笑みを浮かべる。
「ならば、まずは自分の罪を見つめ直すことね。そうしなければ何も変わらない」
キキョウは静かに頷いた。
「孤独の先に、何が見えるのか……私も知りたい」
ダリアは苦笑いを浮かべて、少しだけ表情を和らげた。
「信じることがどれだけ難しいか、身をもって知ったから……」
その時、ユリの体内からエンド・フラワーの冷たくて複数の声が囁く。
『お前の弱さが世界を滅ぼす。だが、もしお前が強くなれば、破滅は避けられぬ』
ユリはぐっと目を閉じ、己の中の闇と光を見つめた。
「私の道は、私が決める」
その宣言と共に、彼女の周囲の空気が震え、光はより一層強く輝き始める。
教祖たちは目を見開き、唇を震わせる。何かが確実に変わろうとしていることを――感じていた。
だが、それは終わりではなく、真の戦いの幕開けに過ぎなかった。
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