第20話

くるんくるん19


私は玄関のドアを開けて、外へと出る。


「行ってきまぁ〜す」

 

 公民館なる体育館で一輪車の演技を見て、もう、六日も経ちました。外は夕焼けが綺麗です。

 これから私は、体育館へと向かいます。一輪車クラブの練習があると聞いたので、見学をしてクラブに入る申込をする予定です。


「紗和、待てって。本当の行くのか? お母さん心配してたぞ」

「うん、行く。もう決めたもん。一輪車の乗るって」


 お兄ちゃんが先に家を出た私を追いかけてきてくれました。

 本当なら、お父さんかお母さんと一緒に行かないといけないのだけど、親戚の法事とかで2人とも出かけて、代わりにお兄ちゃんがついてきてくれました。


『私。一論車に乗りたい。クラブに入って演技をしてみたいの』

 

 日曜日に体育館で一輪車の演技を見て、興奮が抜けなかった私は、勢いのまま、お母さんに頼みました。


「一輪車? 紗和、学校の授業で載ってるじゃない。それじゃダメなの。それに演技? 一輪車でどう演技するの。お母さんわからんないわ。教えて」

「学校じゃ、一輪車の乗って走るだけなの。でも今日見たの違うの。クルクルって回って、ピョンて飛び上がってクルンクルンって回るの。踊っているみたいなの。空だって飛びのよ」

「一輪車って走るだけじゃないの。クルクル回る? 空を飛ぶ? 踊る? お母さん、紗和の説明だけじゃイメージ湧かないわよ」

「だぁ、かぁ、らぁ、こうして、こうやって、こうなるの」

 

 私は、お母さんの前で、体育館で見たものを真似て、手を広げてクルンと周り、ギュと手を傍を絞めて、バタバタと周ります。


「う〜ん。それだけじゃねえ。修理、あなたも見たんでしょ。どんな感じなの。教えて」


 私の後を追っかけて、やっと家にやって来れたお兄ちゃんに、お母さんは聞きます。

 お願い、お兄ちゃん。上手のお母さんに説明して。私の夢に実現はお兄ちゃんの肩にかかっているの。

 祈りを込めて、お兄ちゃんを見つめます。


「えっ、俺ぇ。いきなり言われても説明できるかなぁ」


 ダメです。お兄ちゃんでは頼りになりません。やはり、ここは私がビシッと……,


「だからね、お母さん。あのね、あのね………」

「とにかく、紗和が、こんだけ、やりたいって言ってるんだから。やらせてみてもいいんじゃない。どうせ、飽きたら辞めるって」

 

 お兄ちゃん、いい事言うっと思ったら、最後は余計です。減点ものですよ。マイナス、マイナス。


「こいつ、自転車は早いうちから乗れたんだよね。運動神経は良いのかも。だから一輪車ってタイヤが二本から一本になるだけで、なんとかなるよ」


 お兄ちゃん、凄い。私を褒めてくれた。

 じゃあぁ、机の中の対戦カードは、もう隠したけど、戻しといてあげるね。


「あんたが、言うんだから大丈夫だと思うけど、そこの体育館でしょ。近いとはいえ、夕方に行くんでしょ。暗くなんったら1人では行かせられなし、誰が送り迎えするのよ」

「俺が、紗和を連れて行ってやるって」


 え、お兄ちゃん、本当⁈ だって、


「あんた、中学生なのよ。勉強はどうするの?」

「なんとかするよ。体育館はすぐ、そこでしょ。それに紗和が飽きるまでだしね」


 だぁ、かぁ、らぁ、最後のは余分なんだって。言わないでほしいな。

 絶対、絶対頑張るもん。見ててよね。私がみんなの前でクルンクルン回って、演技するところを。


「わっかたわ。お父さんが帰ってきたら相談してしてみるね。なんて言おうかしら」


 やったあ。お母さんも、話聞いてくれた見たい。

 そういえば、ダメって最初から反対して無かったけ。とにかく、お兄ちゃん、私の見方をしてくれてありがとう。


 夜になって、お父さんが帰ってきて。お母さんから話を聞いてくれたみたいなんだけど、


「紗和が一輪車乗るって。止めとけ、止めとけ。転んで擦り傷つくって、大泣きされてみろ。恥をかくの、ウチなんだぞ」

「あなた」

「お前も、こいつの性格をわかっているだろ。習い事させても、すぐ飽きたってやめちまうんだよ。この話だって、そうなるに決まってる」


 お父さんの中で私はどう、思われているか、よく解りました。でも、


「お父さん。私、今度は頑張るもん。だから、やらせてください。おねがい」


私の真剣な眼差しをお父さんはも見返します。


「まあ。紗和が言い出したことなんだから、勝手にしなさい。でも………」

「でも、何」

「止めるなんて言ったら、問答無用で塾とかに放り込むからな。英会話とかもさせるし」

「うん、分かった。紗和、絶対に頑張るから応援して」

「全く、言い出したら、聞かない性格は誰に似たんだか。お前か?」

「あなたでしょ」


 いきなり、夫婦喧嘩になりそうなんで、2人の前から逃げたけど。お父さんも反対することやめてくれました。

後は、自分が頑張るだけです。


 暫く歩いて、公民館に着きます。隣にある体育館の入り口まで行って、扉をくぐると、フロアの中に、私より年上のお姉さんたちが輪になんて集まっていました。


「あのぉ。見学に来たんですけど」

「見学ですか⁈ どうぞ。どうぞ」

「ありがとうございます」

「あら! あなた」


 誰だろう。私を知っている人がいるみたいです。




 夢へのペダルが半回転します。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る