暴食の覇者 ~嫌われ者の豚伯爵に悪役転生したけど、チートスキルで【全て】を食らい、最強に! そして人生大逆転の学園ハーレム無双へ~

六志麻あさ@死亡ルート確定2~発売中!

1 悪役デブに転生

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「嘘……だろ……」


 鏡に映る自分の姿を見て、俺は呆然と立ち尽くした。


 脂肪だらけの丸い顔。たるんだ二重あご。ビヤ樽のようなデブ体型。


「この顔ってまさか――豚伯爵か!?」


 見覚えがある姿だった。


 そう、俺が毎日のようにやりこんでいた大人気恋愛ファンタジーゲーム、『メルトノール・ファンタジア』……通称『メルファン』に登場するキャラクターそっくりなのだ。


「クソデブ悪役、ガロン・アルガローダじゃねえか! ヒロインに粘着して、主人公に断罪される未来しかない破滅エンド確定キャラ!」


 おいおい、まさかこれって――ゲーム世界に転生したってことじゃないのか?


 そう、転生だ。


 俺はブラック企業に通うサラリーマンだったけど……どうも通勤途中に事故に遭ったような記憶があるんだよな。


 あのとき俺は死んで……『メルファン』の世界に生まれ変わったんじゃないだろうか。


 よりもによってデブの悪役に。


 ちなみにゲーム内のガロンはこんな感じのキャラだ。


 伯爵家の嫡男で、傲慢かつ卑劣な性格の嫌われ者。


 あだ名は【豚伯爵】。


 本編の中盤で数々の悪事が露見し、主人公と彼を慕うヒロインたちによって断罪され、破滅してそのままフェードアウト。


 もし俺がゲーム通りの運命をたどるとしたら――。


「最悪だ……最悪すぎるぞ」


 俺はその場に崩れ落ちた。


 せっかくクソみたいな前世から転生できたっていうのに、またクソみたいな人生を過ごさなきゃいけないのか?


 ――ぐう。


 不意に腹の虫が盛大な音を立てた。


「絶望してても腹は減るんだな……デブキャラに転生したせいか? まあ前世でも俺はデブだったが……」


 この状況で食欲が湧く自分に、少し呆れてしまう。


 けれど、この強烈な空腹感には抗いがたい。


「とりあえず、腹ごしらえだな」


 俺は重い体を必死に持ち上げ、どたどたと歩き出す。


 そのままダイニングルームへと向かった。





「お食事ですか、ガロン様」


 そこには一人のメイドが待っていた。


 銀色の髪を綺麗に編み込み、清楚なメイド服に身を包んだ可憐な美少女だ。


 ゲームには登場しないモブのメイドみたいだ。


 モブにしては、めちゃくちゃ美少女だが――。


「あ、ああ……腹が減ったんで、つい」


 彼女は俺の姿を認めると優雅に一礼した。


「承知いたしました、ガロン様。お食事をお持ちいたしますね」


 そう言って彼女はワゴンで大量の料理を運んできた。


 いずれもLサイズの各種パン、巨大なローストビーフにステーキやチキンソテー、色彩鮮やかな野菜が添えられたサラダの大皿、なみなみと注がれたスープ……とにかく、すべてがビッグサイズで、しかもめちゃくちゃ美味しそうだ!


「いや、それにしても多くないか」


 いくら俺が前世でデブだったといっても、さすがにこんな量は食べきれない。


 平均的な一食分の五倍……いや、十倍近くあるかもしれない。


「? いつもの量ですが?」


 メイドはキョトンとした顔になった。


「いつも、こんなに食ってるの!?」


 驚きつつも、ごくり、と喉が鳴る。


 もう我慢の限界だった。


「い、いただきます……っ!」


 俺は椅子に腰を下ろし、一番近くにあったローストビーフに手を伸ばした。


 かぶりつくように食べ始める。


「なんだこれ……う、美味いぞぉぉぉぉぉぉっ!」


 思わず絶叫してしまった。


 ステーキやソテー、サラダ、スープ、パン……と次々に手を伸ばしていく俺。


「美味い……美味い……!}


 感動的だった。


 食材も調理の技術も、すべてが極上の数々だった。


 俺は夢中で料理を口に運び続ける。


 次から次へと、一心不乱に――。


 と、そのときだった。




 ぴろりーん!




 どこからか、ゲームの効果音のような音が響いた。


「なんだ……?」


 俺がきょろきょろと周囲を見渡す。


 その瞬間。目の前に半透明のゲーム画面のウィンドウのようなものが浮かび上がった。




『スキル【暴食の覇者ベルゼール】が発動しました』

『極上のローストビーフを食したことで、筋力値が0.01上昇します』

『特級のステーキを食したことで、筋力値が0.01上昇します』

『最高のチキンソテーを食したことで、筋力値が0.01上昇します』

『新鮮な山の幸のサラダを食したことで、俊敏性が0.01上昇します』

『秘伝のコンソメスープを食したことで、魔力値が0.02上昇します』

『職人の手作りパンを食したことで、魔力値が0.02上昇します』




 ウィンドウには、そんなメッセージが表示されている。


「なんだこれ? 食ったらステータスが上がった、ってこと……?」


 俺は驚いてつぶやいた。


暴食の覇者ベルゼール】?


 そんなスキル、原作ゲームにはなかったはずだ。


 俺は『メルファン』を隅々までやり込んだ。


 こんなチートみたいなスキルがあれば、絶対に覚えている。


 ただ、実際に筋力や魔力が上がったという実感はない。


「数値が小さいからな……誤差レベルってことか?」


 0.01や0.02ぽっち上がったところで、体感できるわけもないだろう。


 そもそも魔力に関しては、前世の俺には未知の力だ。


 自分の魔力が今どれくらいあって、どうすれば使えるのかさえ、全く分からない。


 けれど……。


「ま、試してみる価値はありそうだ」


 破滅エンドしかない悪役に転生した俺にとって、これは唯一の希望かもしれない。


 もし、このスキルが本物なら――。


 もし、食べ続けるだけで無限に強くなれるとしたら。


 ――ぐう。


 腹がまた鳴った。


「まだまだ腹も減ってるし、いろいろ考えるのは食後にしよう……おかわりをくれ!」




 ――結果、俺はその日の食事だけで、筋力と魔力を合計で『0.3』ずつ上げたのだった。


 微々たる数値だけど、まずはここからだ。


 すべては――ここからだ。





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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。

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