歯車

　湿気るような朝に、歯車は目覚めた。

何のために回るのか、今日もわからないだろう。

　ぐるぐるぐるぐるぐる。

お腹が空いているのか。

違う、魂が削れる音だ。

　ぐるぐるぐるぐるぐる。

近くで犬が吠えているのか。

違う、同じように削れていく仲間の音だ。

　ぐるぐるぐるぐるぐ…。

音が止まった。やっと…。

　ぐるぐるぐるぐるぐる。

違った、自分じゃなかったようだ。

　ぐるぐるぐるぐるぐる。

なあ俺達は何のために回ってるんだ。

さあな、ここ以外知らないもんでな。

　ぐるぐるぐるぐるぐる。

明日も明々後日もその次も、歯車は回り続ける。

たとえ止まることがあっても、自分のあとにはまた新しい歯車がやってくるだけだ。

　ぐるぐるぐるぐるぐ…。