第10話 【研究ノートの抜粋】第一部まとめと今後の調査方針
忘れられた日本の足跡
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第一部まとめ:調査ノートより
カテゴリ: 民俗学考察 , 赤坂田市
投稿日時: 2025年9月15日
こんばんは。久坂部です。
前回の記事「信仰の断片を求めて」を公開してから、数日が経ちました。多くの励ましのメッセージ、そして「うしろのかがみ」に関する新たな情報提供、誠にありがとうございます。皆様からいただいた情報は、今後の調査の大きな力となります。
一方で、記事の最後にあった「井戸をのぞくな」という、たった一言の匿名コメント。
この短い言葉は、これまでのどんな情報よりも、私の心を重く、そして冷たく締め付けています。あれは、単なる悪戯か。それとも、この先に待つ何かを知る者からの、真に迫った「警告」だったのでしょうか。
正直に言って、今の私は、暗闇の中で手探りをしているような状態です。このまま闇雲に進む前に、一度立ち止まり、これまで得られた情報を整理し、思考をまとめる必要があると感じました。
今回は、いつもと思考を変え、私が思考を整理するために書き殴った、生の手書きノートの一部を公開したいと思います。乱雑なメモ書きで恐縮ですが、これが今の私の、フィルターのかかっていない頭の中です。
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研究ノート 2025.9.14 付 (抜粋)
1.現状の整理とキーワード
・赤坂田市再開発地区における、未知の土着信仰「オイカガミ様」の存在が浮上。
・信仰の核心には「古い三つの井戸」が存在した可能性。
・笹川トメ氏の証言より、「神隠し」の伝承との関連が示唆される。
・子供の遊び唄「うしろのかがみ」が、その信仰の断片である可能性が高い。
・郷土史家・三田村氏、神主・犬飼氏ともに、この件に関して意図的な沈黙・否定を貫いている。壁は厚い。
・建設作業員・吉岡氏の証言から、現代の再開発現場でも怪異が発生していることが判明。過去の伝承の「再現」か?
・ブログに寄せられた匿名の警告。調査が「誰か」に監視されている可能性。
2.「オイカガミ様」に関する考察
現時点で考えられる、3つの解釈。
① 御井鏡(おいかがみ): 聖なる井戸の
② 追い鏡(おいかがみ): 一度認識した者を、どこまでも「追いかけてくる」鏡。ストーカー的な、逃れられない呪いのイメージ。→ 笹川氏の「見られちまう」という言葉は、これに関連しているのではないか?
③ 負い鏡(おいかがみ): 土地の罪や人々の穢れ、記憶を背「負わされる」鏡。→ 神隠しは、共同体の罪を一身に負う「生贄」だったのか? 調査を進める私自身も、この土地の記憶を「負わされ」始めているのではないかという、漠然とした恐怖。
3.関係者への印象と疑問点
笹川トメ氏: 恐怖と敬意が混在。核心に近い情報を持つが、記憶の混濁か、あるいは意図的にか、断片的にしか語らない。彼女の言う「神様の目」とは、井戸そのものか?
三田村耕介氏: 頑なな否定は、知識人としてのプライドか、それとも恐怖の裏返しか? 彼の言う「俗説」という言葉は、何かを覆い隠すための壁に聞こえる。
犬飼正宮司: 計算されたかのような「沈黙」。恐怖よりも、何かを守る「義務感」のようなものを感じる。彼が言った「(うちの神社は)新しい」という言葉の真意は? 何か古いものを「封じる」ために、新しく建てられたということか?
匿名のコメント主: 警告者。敵か、味方か? 内部の人間か、過去の経験者か?
4.今後の調査方針
沈黙の壁を破るには、物的な証拠と、より深い口伝の両方が必要。
方針1【原点回帰】: 再度、笹川トメ氏に接触。「うしろのかがみ」の詳しいルールや、彼女が隠していると思われる「井戸」に関する記憶を、慎重に聞き出す。
方針2【物証捜索】: 「古い井戸」の正確な場所を特定する。市の土木課などで、ニュータウン造成以前の古い地図や航空写真を入手できないか。
方針3【周辺調査】: 建設作業員の吉岡氏に再度接触し、現場の噂の続報を聞く。
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このように思考を整理することで、進むべき道が少しだけ、しかし確かに見えてきた気がします。
恐怖は、無知から生まれる。ならば私は、知ることで、その正体に一歩でも近づいていきたいと思います。
(久坂部 誠)
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