ページの裏側で……♡
鵺野かげり
1.静かな図書室で、君の隣に……
ねえ今、どこ見てたの?
本棚のほう?
それとも……私?
ここ、図書室の受付カウンターの中って、狭いよね……ううん、私は好き。
ほら、こうして君と一緒に図書委員のお仕事で、こんなに近くにいられるから。
今日は少し早めに来てくれて……うれしかった。
君がこっちに歩いてくるの……足音で、すぐにわかったの。
静かな廊下に……君の音だけ、響いてたから。
ふふっ、ちょっと変かな?
でもね、君の足音って、いつもリズムが優しくて……落ち着くの。まるで小説の一行みたいに。
ねえ、今日の本……もう読み終わったの?
じゃあ、返却……うん、私が処理するね。
あっ……
指先が、また……触れちゃった。
わざとじゃ、ないよ?
でも……あったかかったね。
……ごめん、今ちょっとドキドキしてる。
君の手に、ほんの少し触れただけなのに……胸の奥が、ぎゅうってなって……
あっ、また当たっちゃった。
ほら、膝と膝……カウンターの下、狭いから……ごめんね?
うん、君もわざとじゃないって、わかってるよ。
それにむしろ、ちょっと嬉しいって思っちゃう私は……変かな?
ねえ……前に私が薦めた本、こないだ借りていったよね?
どうだった?
感想、すごく気になってたの。
君がどんな風に読んで、どこで驚いて、どこで泣いたのか……ねえ、教えて?
うん、うん……うん。
へぇ、そうなんだ。
君はそういう読み方をするんだね。
それでそれで……
わぁ、良かったぁ。
わたしもその場面が『好き』なの。
でもそれ以上に私ね……君の声で、本の話を聞くのが……『好き』なの。
静かで、でも熱があって……まっすぐで。
ねえ、もしかして……君も少し緊張してる?
だってさっきから私の方、見てくれないし……
声も少し低くなってる気がして……
私は……うん、してるよ。
めちゃくちゃ、緊張してる。
だって、こんなに近くにいるから。
なんだかほっぺたとか、熱くなっちゃってるし。
私の心臓の音、聞こえてない……よね?
ドキドキしちゃってるから……
ええ……恥ずかしいよぉ。
じゃあ、君の音も聴かせてよ……
君の鼓動は、どんな音なの……?
ねえ、この図書室って……本のページをめくる音さえ特別に感じるくらい、静かだよね。
でも私は、君の存在を一番強く感じてるの。
こうして、君と並んで……
話す声も、小さくなって……
カウンターの下で、触れちゃったりして……
こんなに近いのに、まだ全部は伝えられなくて……
でも、少しずつでいいよね?
ねえ、今日もここで二人だけの時間、もう少しだけ……いいでしょ?
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