資料03|インタビュー 導念寺 住職

日時:2025年7月15日 11:00

場所:███県██市 導念寺どうねんじ

対象:伊藤いとう貞慶じょうけい(住職)


 どうもどうも。伊藤と申します。はい、川野辺かわのべさんですね。よろしくどうぞ。


 ええ、うちは浄土宗のお寺です。浄土宗というのは、簡単に言うと「南無阿弥陀仏なむあみだぶつ」と念仏を唱えれば、誰でも極楽浄土に行けますよという宗派ですね。1550年に創建しました。先にお向かいの深久良みくらさんを伺ったんですよね? ええ、そうなんです。だからあちらさんと比べたら断然新しいですね。


 それで今日は? ……ああ、あのほこらですか。……ああそうなんですか? いや、でもそうだ、聞いたことがあったな。前まで深久良さんのとこの祠だと思っていたんですが、違うんですよね。ええ、うちのでもありません。でも、何となく深久良さんとうちとで掃除を手伝っていますよ。昔の人が何か思いがあって作ったものでしょうし、長年地域の人々を見守ってくれていたものですから、大切にしたいと思いまして。


 そうなんです、なのでうちでもあまり詳しいことは把握していなくて。もしかすると昔の資料を漁ったら何か出てくるかもしれませんが……ちょっとすぐには。うちの若いのに調べてみるよう言ってみますが、少しお時間がかかると思いますし、あまり期待はされないほうが良いかもしれません。申し訳ない。


 ああ……確かにそういえばそんなこともありましたねえ。10年……15年くらい前だったかな。そうです、戸が壊れていました。それでどうしたもんかと思っていたら、ご近所の方が費用を出して修繕されると。ありがたいお話です。その話自体は大して揉めることもなく決まったのですが……そう、修繕自体は少し時間がかかったのです。いえ、修繕を始めるまでがです。うーん……あの日、ちょうどあの祠の前で、まあ……何と言いますか、警察がいらっしゃるようなことがありまして。見分やらなんやらで、祠に近づけるようになるまでに少し時間がかかったのです。ええ、ニュースにもなったと記憶しています。痛ましい話です。


 そうですね、その件の影響で、祠にも少し悪い噂が流れました。祠の呪いだとかなんとか、そういう類の話です。ほら、小学校もすぐそこにありますから、子供達の間で広まったようです。当時うちのせがれもあそこに通っていましてね、根も葉もない話を聞かされましたよ。祠には怨霊が封じられているだの、壊したからその怒りに触れただの、そういう話です。でも、結局あの祠に何が収められているのかはわかりません。うーん、もしかすると本当に、何かの祟りを恐れた昔の人が建てた祠の可能性もありますが、私には確証がありません。ああ、確かに女性を鎮めるためという話は聞いたことがありますね。もう掠れててわかりにくいんですが、祠に女性のお名前らしきものが刻まれているんです。ただ、どのような方なのかまでは……。


 ああ、奥田おくださん。そうですね、確かに奥田さんなら何かをご存じかもしれませんねえ。あとは自治会館にいらっしゃる方だったら、どなたかご存じかもしれません。この辺にお住まいのご老人が、よく集まって麻雀とか将棋やったり、お喋りしているんですよ。奥田さんもたまにいらっしゃっていたと思いますが、ただ少し前に体調を崩されていたので、どうでしょう……。もしお会いすることがあったらよろしくお伝えください。


 そういえば、歴史資料館には行かれましたか? このあたりの郷土史だったら、あそこが一番資料が揃っていると思いますよ。もしまだであれば、行ってみても良いかもしれません。ご検討ください。

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