第26話 ミス上海
九月の初め、理央が新しくできた中華料理店に行きたいと言いだした。場所は南海新今宮駅の近くであった。通天閣近くのいわゆる新世界と呼ばれるエリアであった。大阪に住んでいるけどこのあたりに行くことはあまりない。
随分前にこのあたりのビルの清掃に入った事があるぐらいだ。
理央が行きたい中華料理店の名前は西遊記といった。香辛料のきいた麻婆豆腐が名物だという。
僕たちは南海難波駅で待ち合わせをした。理央は仕事帰りで僕はその日は休日であった。
理央はスーツスカートで長い黒髪はほどかれていた。さすがに外では僕の好きなツインテールはしてくれない。美琴なら何時でも何処でもツインテールをしてくれるのだけどね。
まあいくら彼女でも無理強いは良くないな。家に帰ったらツインテールにしてもらおう。そしてじっくりとアラサー女子のツインテールを堪能するのだ。
そんなたわいない妄想をしていたら、中華料理店西遊記に着いた。
お店の中は西遊記という名前だけのことはあって、壁一面に孫悟空や沙悟浄、猪八戒の絵が描かれている。それもけっこうリアルなタッチで描かれていた。ちょっと怖い。この店内の様子が映えるとSNSで話題であった。
店の中は平日だというのにけっこうな賑わいだ。
僕たちが店に入るとチャイナドレスの女性店員が出迎えてくれた。ミニスカートタイプのチャイナドレスでけっこうかわいい。しかもその店員はお団子ヘアーであった。ひと昔前のテンプレートチャイナガールだ。
そのお団子ヘアー店員に僕たちは二人席に案内された。
どうやら僕たちで満員になったようだ。店の外に行列ができだしている。
ネットレビューではチャイナドレスの可愛い女性店員がいて、料理もかなり美味しいということであった。今のところ前半部分はあっている。
僕たちは向かい会って座る。メニュー表を見てオーダーを吟味する。
名物という麻婆豆腐はマストとしてあとは何にするかな。
「ねえ悠真君、このレモン甘酢唐揚げ食べたい」
ぴっと理央がメニューの写真を指さす。そこには輪切りにされたレモンの甘酢がかかった唐揚げの写真が載っている。うん、これはうまそうだ。
「じゃあ麻婆豆腐とレモン甘酢唐揚げと後何にする?」
僕は理央に訊く。
いろいろと美味しそうで迷う。こんな時、理央はびしっと決めてくれる。決断力に優れたできる女なのだ。
「うーんと天津炒飯と黒胡椒餃子にしようかな」
理央はすいませーんと店員さんを呼ぶ。呼ばれてきたのはズボンタイプのチャイナドレスを着た女性店員だった。カンフー娘といった印象であった。ズボンタイプは残念だったがその代わり白石澪なみの巨乳だったので満足だ。
理央は巨乳カンフー娘店員にオーダーしていく。店員が言うには烏龍茶はセルフサービスでピッチャーから自由にいれていいとのことであった。
僕は席を立ち、烏龍茶を入れに行く。
二人分を入れて、店内を見回すとチャイナドレスを着た可愛い店員たちが忙しいそうに働いている。これは良い目の保養だ。
僕が烏龍茶を持って戻ると理央が青島ビールを追加で頼んでいた。
唐揚げと餃子といえばビールということらしい。
僕はアルコールが無理なのでちょっとよくわからないが理央曰く最高の組み合わせだということだ。
ほどなくして料理が運ばれてくる。女性店員たちちはバドガールみたいな雰囲気であったが、料理は本格的なものであった。なんでも料理人は本場上海のホテルで料理長をしていたということだ。ネットの情報だけどね。
「それではサークル未確認生物リオネルの今後の発展を願って乾杯!!」
理央はビールの入ったグラスを眼前に持ってくる。
僕は烏龍茶の入ったグラスをそれにカチンと当てる。
未確認生物リオネルのグループラインには僕と理央、それにカメラマンの南城早苗とメイクの木村佳奈恵が参加している。木村佳奈恵にはまだあったことがないけど写真でみるかぎりギャルっぽい。ギャルっぽいけど理央と同い年だというのが驚きだ。
僕はレモンの甘酢唐揚げを一口食べる。甘酢がかかっているのに衣はサクサクで一口食べると肉汁が口の中に広がる。それにレモンの爽やかさが加わり、いくらでも食べられそうだ。
そのほかの料理もかなりのクオリティーで来たばかりだが、また来たいと思わせた。
「ねえチャイナドレスって可愛いわね」
理央は別のテーブルでオーダーを聞いているお団子頭店員を見ている。
頭の中でミニスカートチャイドレス着ている理央がカンフーのポーズをとっている様子が思い描かれる。うん、めちゃくちゃ可愛い。
理央はすらりと手足が長いのでチャイナドレスが良く似合うと思う。
今度チャイナドレスを着てもらおうかな。
「実はクローゼットに神戸で買ったチャイナドレスかけてあるのよね」
理央はビールをぐびぐび飲む。本当に美味しそうにビールを飲むな。まるでテレビのCМみたいだ。
しかしいつの間にチャイナドレスをクローゼットに入れたのだ。もはやどれだけ侵略されているのか把握できない。
「帰ったら着てあげようか」
その理央の提案を断る理由はない。
満足のいく食事を終えた僕たちは帰路に着いた。ビールを三本あけた理央は白い頬を紅色に染めていた。九月になってもまだまだ暑いが理央は僕の腕にしがみついて歩いた。腕に理央の胸が当たる感覚が良い。
自宅に帰った理央はさっそくチャイナドレスに着替えてくれた。もはや恥ずかしがることなく目のまえで彼女は着替える。うーん警戒されないのはいいが、もうちょっと恥じらいも欲しいな。
ミニスカートの白いチャイナドレスを着た理央は西遊記の店員の誰よりも綺麗で可愛くてチャーミングであった。長い黒髪を左右二つのおさげ髪にしてくれた。
さすがに僕の性癖をよく理解している。
「どう私可愛いアルか?」
今時そんなチャイナキャラはいないと思ったけど可愛いから、まあいいかな。
理央は片足を上げて右手に開いた扇子を持っていた。どうやら扇子で戦うカンフー娘という設定のようだ。
そんな美麗なる理央を僕はデジカメとスマートフォンで交互に撮影する。
その時僕の脳内に天啓がおりてきた。
それは絶頂の感覚に近い。脳内物質がドバドバと流れる感覚がする。
僕の脳内にあるアイデアがひらめいた。それはあのアサシンバニーガールを思いついたときに酷似している。
中国文化が大好きなミス
僕はアサシンバニーガールに続く第二のオリジナルキャラクターミス上海を思いついた。
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