第25話 いつかの、今の

「会長と…お相手の方だわ…!」

ホールに誰かの声が響く。

令嬢の方を見ると、ぱっと顔が明るくなった。

…どうやら、令嬢の反応はいいみたいだ。

「…ええと、レイナさん。学園長に意見してくれて、心強かった、ありがとう」

ヴェルミラ様から聞いた、この令嬢の名前を呼ぶ。レイナさんが意見してくれたから、私も、学園長に意見するって選択ができたんだしね。

「いえ、そんな。私は、私が正しいと思うことをしたまでですわ」

レイナさんが照れくさそうに笑う。ホールの雰囲気が少し和やかになった。

そんな中、会長は学園長のほうへ近づいていく。

「じいさま。頭は冷えましたか?」

しっかりと学園長を睨み据える。

「アウル…」

学園長が苦々しげに言う。

「どういうことだとは、どういうことでしょうか?僕は、自分がともに踊りたいと思った人をお誘いしたまでですが?」

ふたたび空気が張り詰める。学園長はここに学園の生徒全員がいるということを忘れたのか、厳しい口調で怒り出した。

「家柄のいいあの資料の中の娘から選べと!そう言っただろう!なのに、どこの馬の骨ともわからん小娘に!」

小娘…。わたしのこと?罵詈雑言、会長のことを道具としか思ってない。

「じいさまはそんなこと言いませんでしたよ?僕は、『おまえがダンスに誘った相手を、婚約者として指名する。だいたいの相手は見繕ってある。どうするかはお前が決めろ』…その言葉に従って、ミウェルナに婚約者になってもらおうと決めたのですが?」

会長は、やっぱりすごい。いまの言葉で、そうすごく思った。

「…っ、屁理屈を…!」

言い返す材料がないのだろう、ぎりぎりと歯ぎしりをするだけで、何も言ってこなくなった。

「わ…私は、アウル様が望まぬ婚約をするのは、嫌です。ずっと、我慢して…子どものころからの、夢だから…」

つたない口調だけど、言い切った。さらにこちらをにらんでくる学園長。

「認めてくれますよね、おじいさま?」

会長が畳みかけるようにいうと、みんなの期待に満ちた視線に気づいたらしい。観念したのか、ものっすごくいやそうに…

「この娘を、アウル・ウィゼトの婚約者として認める」

うわあああああああああ!

ホールが沸いた。歓声に包まれる。

そうして、パーティーは閉幕し、学園は冬休みに入った。

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