第1話 バディは実質なんでもサーチ
「私は三日月メグルよ、さっきは悪かったわね。改めて対戦よろしく。」
中学生くらいだろうか、私服はまだ幼げだが。
「俺は葉月タケル、対戦よろしくお願いします。」
相手が表、俺が裏
コイントスは表
互いにデッキをシャッフルする。カットする。フィールドにデッキを置く。
「私が先攻!5枚ドローする!」
この世はカードゲームが至上の世界であり、そんな世界に迷いこんだのが俺。
「私はフィールドに『ミラクルメイジ』を召喚!効果を発動、1枚ドローする!」
5歳の頃に父母を亡くした上大怪我をしたらしく、その頃から俺がこの子として生きている。
「フィールドに『ミラクルメイジ』が存在する場合、『ミラクルアークメイジ』は生け贄なしで召喚できる攻撃力2300のモンスターよ!」
叔母がいたので天涯孤独ではないのが幸いだった。この世界の孤児院はカードパックの入手方法が非常に限られているので、社会に出てもデッキが纏まっておらず苦労するらしい。
「さらに『ミラクルメイジ』を生け贄に、魔法『ミラクルマッドマジック』を発動!この効果で『ミラクルマッドキマイラ』をデッキから召喚する!」
あと俺自身の事はほとんど覚えていない。わかるのは俺のデッキのカードたちの元ネタがとても好きだった、ということくらいだ。
「魔法カードを2枚セットしてエンドステップに手札を全てデッキの下に戻すわ。『ミラクルマッドキマイラ』は直接攻撃出来ない代わりに、攻撃力3000と貫通能力を持っている。下手にモンスターを出せば初期ライフポイント6000なんて簡単に消し飛ばせる!先攻は攻撃出来ないからあなたのターンよ!」
そしてこのゲーム『サモンズクロニクル』はこの世界における、古今東西唯一のカードゲームであり、全ての人間が手にする『ブランクカードパック』から『バディカード』と根幹となる
「ちょっと!あなたのターンよ。早くカードをドローしなさい。ぼうっとして、大丈夫なの?」
自分のターンだった。確か後攻だったかな。
「失礼しました。俺のターン、後攻なので6枚ドローします。」
鼻を鳴らされた。初心者扱いされたかな?
「『コスモカロン』を召喚して効果発動、1枚ドロー。さらに魔法カード『未知への探査』発動。手札を全て裏側で墓地へ置き同じ枚数ドローします。5枚ドローします。」
これで6枚。
「再利用の難しい『未知への探査』って事はこのターンで決める気?いいわよ、どうぞご自由に回すといいわ。」
「さらに『コスモカロン』を召喚し効果、1枚ドロー。魔法カードを1枚セットします。さらに『未知への探査』発動。手札を裏側墓地に置き3枚ドローします」
これで10枚。
「『コスモカロン』2体を生け贄に『コスモマーティドラゴン』をバディゾーンから召喚します。効果を発動します。相手フィールドのモンスター全ての攻撃力を自身の攻撃力2500に追加します。」
12枚目。
「攻撃力7800ね、やるじゃないの。でも私のセット魔法を踏み越えられる?」
「手札を1枚裏側で墓地へ送りセットした魔法カード『大突風』をセットされた2枚のカードに発動します。効果でデッキの下に戻します。」
これで14枚。
「させないわ!セットした魔法は相手の魔法の発動に対して発動できる。魔法『立ち塞がる強敵』を発動!効果で『ミラクルマッドキマイラ』に相手モンスターは攻撃しなければならない!さらに攻撃力はエンドステップまで倍になる!」
「攻撃力6000とはすごいな。」
思わず笑みと共に呟く。こちらの自爆と貫通能力も合わせてごっそりライフを削り取られる。
「ふふん!私の完璧で最高なデッキだもの!」
相手も最高の引きで自信満々の様子だ。
でもこのカードで倒しきれるはず。
「手札を1枚デッキに戻し魔法カード『革命の光』発動する。自分の墓地のカードを全て裏側で異次元ゾーンへ送りその枚数×300攻撃力を自分のモンスターに加える。」
「まさか!届きうるとでも!?」
ファイトデバイスの電卓を叩きながら答える
「裏側墓地が9枚、『未知への探査』2枚、『コスモカロン』2枚、『大突風』1枚。14枚で4200の攻撃力上昇です。」
やめなさい。指で数えようとしない。デバイス見せるから、これで計算しなさい。
「あっ、助かるわ。14×300で、あっ本当ね」
「はい。攻撃力上昇を『コスモマーティドラゴン』に付与します。攻撃力は12000になります。」
これでワンショットキル確定。
「私の『ミラクルマッドキマイラ』の攻撃力は6000よね?」
気付いたようだ。
「その通りですね。『ミラクルマッドキマイラ』に『コスモマーティドラゴン』で攻撃宣言をします。」
「初期ライフポイントは6000よね。通すしかないわね。」
伏せカードは1枚もない。
「互いの差分のダメージが戦闘ダメージとして相手ライフに与えられますね。」
「6000ダメージで全損ですけれど?」
大人しくなっちゃった。
「そうですね。6000ポイントの戦闘ダメージになります。」
「くっ!ぬうっ!ぐわーっ!」
その辺のファイトでも吹き飛んでるけど危ないよ。やりたいのはわかるけれど。
「対戦ありがとうございました。いいファイトでした。」
「対戦、ありがとう、ございました。」
ノリでやって滑ったと思ったのか顔がとても赤い。かわいそうに。
「機会があればまたやりましょう。あなたのバディも見れていませんから。」
「そっ!そうね!まだ私は本気出せてないから!次は勝つわ!」
同じ脳筋デッキとしても気になるので、連絡先を交換した。叔母以外だと初めてでは?
「んじゃ、参加賞貰いに行きましょう。いいカード引きたいですね。」
「そうね!先攻でも相手をぶっ飛ばせるカードがいいわ!」
夏休みが始まって数日。今生でようやく、物騒だけど友達が出来た。久々に父母にいい報告が出来そうだ。
これからの日々がよき日々でありますように。
この世はサーチカードに厳しい やわたの鳩 @yoshi1103
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます