歳の近い父、時雨さんと暮らす夕雨くんは、常に期待と諦めが入り混じる複雑な感情を抱えています。そしてそれは時雨さんも同じです。お互いに、一歩近づいたと思ったら離れていくような、絶妙な距離感の中で物語が展開されます。
一般的に想像するような親子の関係、何でも話し合えるような対等な関係ではなく、どこか距離を感じるような、全体的には暗めな印象のこの作品。しかしその中で、些細な感情の揺れや行動の変化がダイレクトに伝わってくるので、二人の世界に没入できます。
夕雨くんの純粋な子ども心や、時雨さんの大人になりきれていないような人間らしい弱さも、この物語の魅力です。仲良しの昴くんや、時雨さんの会社の先輩である村瀬さんといったキャラクターたちが絡み合い、二人は不器用なりに家族のカタチについて考えていきます。
最終話まで読んだときには、心がほんのり晴れたような心地に浸れますよ。
文章力が非常に高く情景描写が丁寧で、読んでいてうっとりしてしまいます。
特に、生活音が丁寧に描かれており、その場の空気感や温度が読んでいる側にも伝わってきて、想像力が膨らみます。
じんわりと心に沁み込んでくるような、繊細で儚い物語が好きな方にオススメです!