夕雨(ゆう)と時雨(しぐれ)はふたり暮らし。
彼らの年齢差はわずか13歳。少し歳の離れた兄弟感覚を思い浮かべますが、実は親子という衝撃の事実。際どい年齢差のギリギリを攻めた意欲作です。
見た目は兄として見紛うほどの父親、しっかりしているようで、どこか子供っぽくて。接し方、言葉遣い、気持ちの移ろい、兄弟としても親子としても、どこかなりきれない心の保ちが絶妙なんです。
同性同士の営み、体に刻み込んだ細い線――お互いに打ち明けられない秘密を抱えながら生活する心情も相まって、中々晴れないモヤモヤ感がたまりません。
また、思春期の真っ直ぐありながら澄んできれいなワルをイメージできるキャラも好印象で、個人的にタバコを吸いながら同級生・昴とのキスシーンが鮮烈で忘れられません。色素の薄い榛色の瞳にゆれながら、最も柔らかいところにできたキズを埋め慰めるような行為も含めて。
何だろう……日頃の苛立ちや蟠りといった翳りが、ややあって晴れていく、そんな気持ちにさせてくれるから何だかとっても不思議なんです。
洗練された美しい文章に、時に打ちのめされながら、時に惑いながら。そして窓ガラスの雨粒の跡を指先で追うように愛でながら。
心は、その拠り所は、それまでの雨空から雨上がりの光へと希望を探し求めるように流れていく。名前に込められた雨のイメージをその為人として味わい深い、卓越した心理・背景描写ともに秀逸な作品です。
歳の近い父、時雨さんと暮らす夕雨くんは、常に期待と諦めが入り混じる複雑な感情を抱えています。そしてそれは時雨さんも同じです。お互いに、一歩近づいたと思ったら離れていくような、絶妙な距離感の中で物語が展開されます。
一般的に想像するような親子の関係、何でも話し合えるような対等な関係ではなく、どこか距離を感じるような、全体的には暗めな印象のこの作品。しかしその中で、些細な感情の揺れや行動の変化がダイレクトに伝わってくるので、二人の世界に没入できます。
夕雨くんの純粋な子ども心や、時雨さんの大人になりきれていないような人間らしい弱さも、この物語の魅力です。仲良しの昴くんや、時雨さんの会社の先輩である村瀬さんといったキャラクターたちが絡み合い、二人は不器用なりに家族のカタチについて考えていきます。
最終話まで読んだときには、心がほんのり晴れたような心地に浸れますよ。
文章力が非常に高く情景描写が丁寧で、読んでいてうっとりしてしまいます。
特に、生活音が丁寧に描かれており、その場の空気感や温度が読んでいる側にも伝わってきて、想像力が膨らみます。
じんわりと心に沁み込んでくるような、繊細で儚い物語が好きな方にオススメです!