第2話
冷やしうどんのおもひで
冷やしうどんを、初めて食べたのは1997年の5月だった。当時、小岩駅の北口を出てその先にうどん屋さんがあった。色々な冷やしうどんメニューがあって、トッピングも楽しめた。さらには、リーズナブルで駅前の好立地にあるにも関わらず、500円で冷やしうどんを楽しめた。麺はさぬき風、つゆは割としょっぱめ。私は普段は納豆トッピングの冷やしたぬき、多少お財布に余裕がある時は冷やしきつねを頼んでいた。
その店の特に気に入ってた点は、麺がしっかり冷水で締められていたところである。世の中には『冷やし』を名乗っていても、『冷やし』ではない、中華やうどんが蔓延っているのである。個人的に、麺を冷やして締めるという食べ方は、麺を最も美味しくいただく方法だと考えているからか、普段ぼやんとした私も多少口うるさくなる。
……興奮してしまった。話を戻すと、私が好きなそのお店は数年後には閉店してしまった。友人にそれを聴いて、私は酷く落胆した。自分の好きが世間の好きと一致するとは限らない。ほんの少しだけ世の中の厳しさを知った。それでも、この季節になると毎年思い出す味の1つだ。冷凍うどんを買ってきて同じように作る。氷水でこれでもかと冷やす。同じように、うまい。
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