レベルアップ・ラブ ~努力する女の子の恋物語~

トムさんとナナ

レベルアップ・ラブ ~努力する女の子の恋物語~

## 第一章 スタート地点


私の名前は田中美咲。今年で二十五歳、入社三年目のOLです。毎朝八時に起きて、慌ただしく身支度を整えて、満員電車に揺られて会社に向かう。そんな平凡な毎日を送っています。


でも、そんな私にも一つだけ、心の支えになっているものがあります。それは、隣の部署の先輩、佐藤健一郎さんへの憧れです。


健一郎さんは三十歳で、営業部のエース。いつもさわやかな笑顔で、誰にでも優しく接してくれます。背が高くて、スーツの着こなしも完璧。まるで雑誌から抜け出してきたような人です。


「おはようございます、田中さん」


今朝も健一郎さんが声をかけてくれました。私はいつものように、顔を真っ赤にしながら小さく会釈するのが精一杯でした。


「お、おはようございます」


声が裏返ってしまいました。恥ずかしい。健一郎さんは優しく微笑んで、颯爽と自分の席に向かって行きます。


私はため息をついて、自分の机に座りました。また今日も、まともに話すことができませんでした。


お昼休み、いつものように親友の山田花音と一緒にカフェテリアで食事をしていると、花音が呆れたような顔で私を見ました。


「美咲、また今朝も佐藤先輩と話せなかったでしょ?」


「バレバレだね」私は苦笑いしました。


「もう三年も同じことの繰り返しじゃない。いい加減、何か行動起こしたら?」


花音の言葉が胸に刺さります。確かにその通りです。私は健一郎さんに憧れているだけで、何も努力していません。


「でも、私なんかが健一郎さんと釣り合うわけないよ。あの人はモテるし、きっと素敵な彼女もいるし…」


「はいはい、いつものネガティブ発言ね」花音がスマートフォンを取り出しました。「最近、こんなアプリがあるのよ。知ってる?」


画面には「ラブレベル」というアプリのアイコンが表示されていました。


「恋愛スキルを数値化して、レベルアップしていくゲームなの。面白そうでしょ?」


「ゲーム?」


「そう。でも普通のゲームじゃなくて、実際に自分を磨いて、その成果を記録していくの。料理とか、読書とか、運動とか。努力した分だけレベルが上がるのよ」


花音が操作すると、詳しい説明画面が表示されました。確かに面白そうです。でも…


「私にできるかな?」


「やってみなければわからないでしょ?それに、美咲は元々可愛いんだから、少し自信を持てばきっと変われるよ」


花音の励ましの言葉に、私の心が少し軽くなりました。


## 第二章 チュートリアル開始


その日の夜、私は早速「ラブレベル」をダウンロードしました。


最初にキャラクター設定があります。名前、年齢、職業を入力すると、現在のステータスが表示されました。


```

田中美咲 Lv.1

外見力:15/100

知識力:30/100

コミュニケーション力:10/100

料理力:20/100

総合魅力度:18.75/100

```


数値で見ると、改めて自分のダメさ加減がよくわかります。特にコミュニケーション力の低さが致命的です。


でも、だからこそやりがいがあるというものです。ゲームなら、レベル1から始めて、少しずつ強くなっていくのが醍醐味ですから。


最初のクエストが表示されました。


『【チュートリアル】3日間連続で30分以上の運動をしよう!』


運動ですか。確かに最近、全然体を動かしていません。これくらいならできそうです。


翌朝、いつもより30分早く起きて、近所をジョギングすることにしました。


「うう、きつい…」


五分も走らないうちに息が切れてしまいました。普段の運動不足が如実に現れています。でも、途中で歩いたりしながらも、なんとか三十分続けることができました。


アプリに記録すると、経験値が10ポイント獲得できました。


「よし、続けよう」


二日目、三日目も同様にジョギングを続けました。三日目には、途中で歩く時間がぐっと短くなりていました。


『【チュートリアル】クリア!外見力が+5されました』


外見力が20になりました。わずかな変化ですが、数値が上がると嬉しいものです。


## 第三章 本格始動


チュートリアルクリア後、本格的なクエストが選択できるようになりました。


『【料理クエスト】手作り弁当を5日間持参しよう』

『【読書クエスト】月に3冊以上の本を読もう』

『【ファッションクエスト】新しいコーディネートに挑戦しよう』

『【コミュニケーションクエスト】知らない人と3回以上会話しよう』


どれも私には高いハードルですが、一番簡単そうな料理クエストから始めることにしました。


実家にいた頃は母親任せで、一人暮らしを始めてからもコンビニ弁当ばかりでした。でも、健一郎さんのような素敵な人には、手料理を振る舞えるような女性が似合います。


週末、スーパーで食材を買い込みました。料理本も購入して、基本的なレシピを勉強しました。


月曜日の朝、人生初の手作り弁当が完成しました。玉子焼きは少し焦げて、ご飯の炊き加減もいまいちでしたが、それでも自分で作ったお弁当は感慨深いものがありました。


「美咲、お弁当持ってきたの?」


お昼休み、花音が驚いた顔で私を見ました。


「うん、頑張って作ってみたの」


「えー、すごいじゃない!どうしたの、急に」


「例のアプリよ。料理クエストに挑戦してるの」


私は少し誇らしげに説明しました。花音は感心したように頷きました。


「へえ、本当にやってるのね。どう?楽しい?」


「うん、思ったより楽しいよ。数値が上がると達成感があるし」


実際、毎日少しずつレベルアップしていく感覚は、まるでゲームのようで楽しいのです。


五日間のクエストを無事クリアすると、料理力が+10されました。


## 第四章 意外な発見


料理クエストをクリアした私は、次に読書クエストに挑戦することにしました。


本屋で小説を三冊選んで、通勤電車の中で読むことにしました。今まではスマートフォンでSNSを見ているだけでしたが、読書の時間に変えました。


すると、不思議なことに気づきました。本を読んでいると、語彙が増えて、考え方の幅が広がるような気がするのです。


特に、恋愛小説を読んでいると、主人公の心情描写に共感することが多くて、自分の気持ちを言葉にするのが少し上手になったような気がしました。


「美咲、最近なんだか雰囲気変わったよね」


ある日、花音がそう言いました。


「そう?」


「うん、なんていうか、前より生き生きしてる感じ」


言われてみれば、確かに毎日が充実しています。アプリのクエストをクリアするのが楽しくて、朝起きるのも苦痛ではなくなりました。


読書クエストをクリアすると、知識力が+15されました。


現在のステータスは:


```

田中美咲 Lv.3

外見力:25/100

知識力:45/100

コミュニケーション力:10/100

料理力:30/100

総合魅力度:27.5/100

```


レベルが3になりました。でも、コミュニケーション力だけは全然上がっていません。


## 第五章 最大の難関


コミュニケーションクエストに挑戦することにしました。『知らない人と3回以上会話しよう』というクエストです。


私にとって、これは最も高いハードルでした。人見知りで、知らない人と話すのがとても苦手なのです。


でも、健一郎さんともっとお話しできるようになりたい。その想いが私を後押ししました。


最初のチャンスは、コンビニでした。レジの店員さんと軽く挨拶を交わしました。


「ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございます」


たったこれだけですが、私にとっては大きな一歩でした。


二回目は、電車で席を譲った時でした。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


三回目は、エレベーターで一緒になった人との何気ない会話でした。


「今日は暖かいですね」

「そうですね、春らしくなりました」


どれも短い会話でしたが、少しずつ人と話すことへの抵抗感が薄れていくのを感じました。


クエストをクリアすると、コミュニケーション力が+10されました。


## 第六章 ファッション革命


次に挑戦したのは、ファッションクエストでした。『新しいコーディネートに挑戦しよう』


今まで私は、無難で地味な服ばかり選んでいました。目立たないように、注目されないように。でも、それでは健一郎さんに振り向いてもらえません。


花音と一緒にショッピングに出かけました。


「美咲には、もっと明るい色が似合うと思うな」


花音が選んでくれたのは、淡いピンクのブラウスと、ベージュのスカートでした。


「え、でも目立ちすぎない?」


「それがいいのよ。美咲は今まで隠れすぎてたの」


試着してみると、確かに今までとは違う印象になりました。少し大人っぽくて、女性らしい感じです。


「似合ってる!絶対これにしなさい」


花音の強い勧めで、新しい服を購入しました。


翌週、その服を着て出社しました。


「田中さん、今日は雰囲気が違いますね」


なんと、健一郎さんが声をかけてくれました。私は緊張で心臓がバクバクしました。


「あ、ありがとうございます」


「その服、とても似合ってますよ」


「そ、そうですか?」


まだまだ上手く話せませんが、以前よりは少しマシになったような気がします。


ファッションクエストクリアで、外見力が+15されました。


## 第七章 小さな変化


アプリを始めてから二ヶ月が経ちました。


現在のステータスは:


```

田中美咲 Lv.6

外見力:45/100

知識力:60/100

コミュニケーション力:25/100

料理力:50/100

総合魅力度:45/100

```


数値的には確実に成長していますが、それよりも自分の中の変化の方が大きいように感じます。


朝のジョギングは習慣になって、体力がついただけでなく、肌の調子も良くなりました。


手作り弁当も上達して、今では彩り豊かなお弁当が作れるようになりました。


読書によって語彙が増えて、会話でも適切な言葉を選べるようになりました。


そして何より、人と話すことへの恐怖心が少しずつ薄れてきました。


ある日、エレベーターで健一郎さんと二人きりになりました。以前なら緊張でガチガチになっていたところですが、今日は違いました。


「佐藤さん、お疲れ様です」


自分から話しかけることができました。


「お疲れ様です。田中さん、最近元気そうですね」


「ありがとうございます。健康管理を頑張ってるんです」


「そうなんですね。僕も見習わないと」


健一郎さんが微笑みました。何気ない会話でしたが、私にとっては大きな進歩でした。


## 第八章 新たなクエスト


レベル6になると、新しいクエストが解放されました。


『【上級クエスト】得意分野を見つけて極めよう』


これは今までのクエストとは違って、自分で目標を設定するタイプでした。


私は何が得意なのでしょうか?料理?読書?どれもまだまだ初心者レベルです。


そんな時、会社でちょっとした事件が起きました。


新人の後輩が、プレゼンテーション資料の作成で困っていたのです。


「田中先輩、どうしたらいいでしょうか?」


後輩の鈴木愛美ちゃんが泣きそうな顔で相談してきました。


資料を見ると、確かに文字ばかりで読みにくく、構成もちぐはぐでした。


「愛美ちゃん、ちょっと一緒に直してみない?」


私は最近読んだビジネス書の知識を活かして、資料の構成を整理し、見やすいレイアウトに変更しました。


「わあ、田中先輩すごいです!こんなに見やすくなるんですね」


愛美ちゃんの喜ぶ顔を見て、私は嬉しくなりました。人の役に立てるって、こんなに気持ちの良いことなんですね。


それからというもの、愛美ちゃんだけでなく、他の後輩たちからも資料作成の相談を受けるようになりました。


「田中さんって、教えるのが上手ですね」


ある日、健一郎さんが声をかけてくれました。


「そうですか?」


「ええ、後輩たちからの評判もいいですよ。面倒見がいいって」


健一郎さんに褒められて、私は嬉しくて仕方ありませんでした。


私の得意分野は「人をサポートすること」だったのかもしれません。


## 第九章 思わぬ展開


ある金曜日の夕方、健一郎さんが私の席にやってきました。


「田中さん、お疲れ様です」


「お疲れ様です」


「実は、お願いがあるんです」


私の心臓が早鐘を打ちました。健一郎さんからのお願いなんて、初めてです。


「明日、大学時代の友人たちとバーベキューをするんですが、料理の準備を手伝ってくれる人を探してるんです。田中さん、最近お料理が上手だって聞いたので…」


私は一瞬、耳を疑いました。健一郎さんが、私に料理の手伝いを頼んでいるのです。


「も、もちろんです!喜んで!」


思わず大きな声で答えてしまいました。


翌日、指定された公園でバーベキューの準備をしました。健一郎さんの友人たちは皆さん良い人で、すぐに馴染むことができました。


「美咲さんの作ったポテトサラダ、めちゃくちゃ美味しいですね」


「この野菜炒めも絶品だ」


皆さんに褒められて、私は嬉しくて仕方ありませんでした。


「田中さん、本当にありがとうございました。おかげで楽しいバーベキューになりました」


帰り際、健一郎さんが感謝の言葉をかけてくれました。


「こちらこそ、楽しかったです」


私は自然に笑顔で答えることができました。


## 第十章 大きな壁


バーベキューの後、健一郎さんとの距離が少し縮まったような気がしました。でも、それは友人としての距離であって、恋愛対象として見てもらえているかは分かりません。


そんな時、衝撃的な情報が入ってきました。


「美咲、聞いた?佐藤先輩、来月から東京本社に転勤になるんだって」


花音の言葉に、私は愕然としました。


「転勤?」


「ええ、昇進で管理職になるから、本社勤務なのよ。すごいじゃない」


すごいことです。でも、私にとっては悲しい知らせでした。健一郎さんがいなくなってしまうなんて。


それから数日間、私は落ち込んでいました。アプリのクエストも手につきません。


でも、ある日気づいたのです。


私は変われたじゃないか。健一郎さんに憧れて始めた自分磨きでしたが、その過程で本当の自分を見つけることができました。


料理も上達したし、読書で知識も増えた。何より、人と話すことが怖くなくなった。後輩たちの相談に乗ることで、人の役に立つ喜びも知りました。


これらは全て、私の財産です。健一郎さんがいなくなっても、私の成長は消えません。


## 第十一章 勇気の決断


健一郎さんの送別会の日がやってきました。


会社のメンバー総出で、近くのレストランで開催されました。私も参加しましたが、なかなか健一郎さんと話す機会がありませんでした。


会が終わりに近づいた頃、健一郎さんが私のところにやってきました。


「田中さん、今日はありがとうございました」


「こちらこそ、お疲れ様でした」


「実は、お話ししたいことがあるんです。よろしければ、少しお時間いただけませんか?」


私の心臓がドキドキしました。健一郎さんと二人でお話しするなんて、初めてです。


近くのカフェに移動して、向かい合って座りました。


「田中さん、最近本当に変わりましたよね」


健一郎さんが真剣な顔で言いました。


「そうでしょうか?」


「ええ、以前はもっと控えめで、あまり前に出てこない印象でした。でも今は、積極的だし、後輩の面倒もよく見てくれるし」


私は嬉しくなりました。健一郎さんが私の変化に気づいてくれていたのです。


「実は、僕も田中さんを見習わなければと思っていたんです」


「え?」


「田中さんの努力する姿を見ていて、僕も自分を磨かなければと思いました。東京での新しい仕事も、田中さんからもらった勇気があったから決断できたんです」


私は驚きました。健一郎さんが、私から勇気をもらったと言っているのです。


そして、私は決心しました。今まで言えなかった気持ちを、今度こそ伝えよう。


「佐藤さん、実は私…」


私は深呼吸しました。


「私、佐藤さんのことがずっと好きでした」


健一郎さんの目が丸くなりました。


「ずっと憧れていて、佐藤さんのような人になりたくて、自分を変える努力をしてきました。転勤されると聞いて、今言わなければ後悔すると思ったんです」


私は一気に話しました。顔が真っ赤になっているのが分かりました。


健一郎さんはしばらく黙っていましたが、やがて優しい笑顔を浮かべました。


「田中さん、ありがとうございます。とても嬉しいです」


そして、少し困ったような表情になりました。


「でも、僕は東京に行ってしまうし、田中さんにはもっと素敵な人が現れると思います」


やはり、そうですよね。私も、そうなるだろうとは思っていました。


でも、不思議と悲しくありませんでした。私の気持ちを伝えることができて、健一郎さんも喜んでくれた。それだけで十分でした。


## 第十二章 新しいステージ


健一郎さんが東京に転勤してから一ヶ月が経ちました。


最初は寂しかったですが、今は充実した毎日を送っています。


アプリのレベルは10になり、ステータスも大幅に向上しました。


```

田中美咲 Lv.10

外見力:70/100

知識力:80/100

コミュニケーション力:65/100

料理力:75/100

総合魅力度:72.5/100

```


でも、数値以上に大切なものを得ることができました。それは自信です。


努力すれば変われる。頑張れば成長できる。そのことを身をもって体験しました。


「美咲、最近すごく輝いてるよね」


花音がそう言ってくれます。


「ありがとう。でも、まだまだこれからよ」


私はもう、以前のような自信のない女の子ではありません。


ある日、新しく配属された後輩の男性、山田大地くんが私に相談を持ちかけてきました。


「田中先輩、僕、気になる人がいるんですが、どうしたら振り向いてもらえるでしょうか?」


私は微笑みました。この質問に答えるのに、私ほど適任な人はいないでしょう。


「大地くん、まずは自分を磨くことから始めましょう」


私は自分の体験談を交えながら、アドバイスをしました。努力することの大切さ、小さな変化の積み重ねが大きな成長につながることを話しました。


「田中先輩の話を聞いていると、僕も頑張れそうな気がします」


大地くんの目が輝いていました。


私は思いました。健一郎さんへの憧れから始まった私の成長の物語は、今度は誰かの背中を押すきっかけになっているのです。


それからさらに半年が経ちました。


私は今、会社で新人研修の講師を任されています。自分の経験を活かして、新入社員たちに仕事のコツや自己啓発の大切さを教えています。


「田中さんの研修は分かりやすくて、やる気が出ます」


研修生たちからそんな感想をもらうたびに、私は嬉しくなります。


ある日、研修が終わった後、一人の研修生が残って話しかけてきました。


「田中さん、僕、田中さんのような人になりたいです」


彼の名前は佐々木翔太。今年の新入社員で、真面目で一生懸命な青年です。


「どうしてそう思うの?」


「田中さんは、いつも前向きで、みんなに優しくて、尊敬できる人だからです」


私は少し照れました。かつて私が健一郎さんに抱いていた憧れと同じような気持ちを、翔太くんが私に抱いているのかもしれません。


「翔太くん、大切なのは努力することよ。小さなことでもいいから、毎日続けること。そうすれば必ず変われるから」


私は自分の体験を振り返りながら、そう言いました。


「はい!頑張ります!」


翔太くんの真剣な表情を見て、私は微笑みました。


帰り道、私はアプリを開いてみました。


```

田中美咲 Lv.15

外見力:85/100

知識力:90/100

コミュニケーション力:80/100

料理力:85/100

総合魅力度:85/100

```


最高レベルに近づいています。でも、私にとって本当の成長は数値では測れないところにあります。


自分を信じる気持ち、人を支える喜び、努力し続ける意志。これらは何にも代えがたい財産です。


そして私は確信しています。努力すれば、必ず報われる。求めれば、必ず得られる。ただし、そのためには諦めずに頑張り続けることが必要なのです。


健一郎さんへの憧れから始まった私の物語は、今では多くの人を励ます物語になりました。そして私自身も、新しい出会いや可能性に向けて、これからも努力し続けていくのです。


空を見上げると、夕日が美しく輝いていました。明日もまた、素敵な一日になりそうです。


そう、人生はレベルアップの連続なのです。ゲームオーバーはありません。常に新しいステージが待っているのです。


私、田中美咲の成長物語は、これからも続いていきます。


## 第十三章 新しい風


それから三ヶ月後、私の人生に思わぬ変化が訪れました。


「田中さん、お疲れ様です」


いつものように研修を終えて資料を片付けていると、翔太くんが声をかけてきました。最近の彼は、私のアドバイスを真面目に実践していて、見違えるほど成長しています。


「翔太くん、お疲れ様。今日の研修はどうだった?」


「とても勉強になりました。特に、プレゼンテーションのコツは目から鱗でした」


彼の真剣な表情を見ていると、かつての自分を思い出します。あの頃の私も、こんな風に必死だったのでしょう。


「実は、田中さんにお話ししたいことがあるんです」


翔太くんが少し緊張した様子で言いました。


「何かしら?」


「今度の日曜日、時間があるときに、お茶でもいかがですか?お礼も兼ねて、ゆっくりお話しできればと思うんです」


私は少し驚きました。翔太くんからお誘いを受けるなんて、思ってもみませんでした。


「お礼だなんて、そんな」


「いえ、田中さんのおかげで僕は変われました。本当に感謝しているんです」


彼の真摯な気持ちが伝わってきました。私は微笑みました。


「それなら、ぜひ」


## 第十四章 新たな始まり


日曜日、翔太くんと駅前のカフェで会いました。


「田中さん、今日はありがとうございます」


「こちらこそ。翔太くんの成長ぶりを見ていると、私も嬉しくなるの」


コーヒーを注文して、ゆっくりと話し始めました。翔太くんは、入社当初の不安から、最近の成長まで、詳しく話してくれました。


「実は、僕も田中さんと同じようなアプリを使い始めたんです」


「あら、そうなの?」


「はい。『スキルアップ・マスター』っていうアプリです。毎日小さな目標を設定して、クリアしていくんです」


翔太くんが嬉しそうにスマートフォンを見せてくれました。私が使っている「ラブレベル」と似たようなシステムでした。


「素晴らしいじゃない。どんなクエストに挑戦しているの?」


「今は読書と筋トレ、それから料理にも挑戦しています。田中さんを見習って」


私は嬉しくなりました。かつて健一郎さんに憧れていた私のように、翔太くんが私を目標にしてくれているなんて。


「でも、一つだけ、どうしてもクリアできないクエストがあるんです」


翔太くんが少し照れたような表情になりました。


「どんなクエスト?」


「『好きな人に気持ちを伝える』というクエストです」


私の心臓が少しドキドキしました。翔太くんに好きな人がいるのですね。


「それは勇気がいるクエストね。相手はどんな人?」


翔太くんが私をじっと見つめました。


「とても素敵な先輩で、いつも優しくて、努力家で…僕の憧れの人です」


私はハッとしました。まさか…


「田中さん、僕、あなたのことが好きです」


翔太くんが真剣な顔で告白しました。


私は驚きで言葉が出ませんでした。まさか自分が告白される側になるなんて、思ってもみませんでした。


## 第十五章 心の変化


翔太くんの告白から一週間が経ちました。


私は彼に「少し時間をください」とお願いして、今は自分の気持ちを整理しているところです。


正直に言うと、翔太くんのことは後輩として大切に思っていましたが、恋愛対象として意識したことはありませんでした。


でも、彼の真摯な気持ちと、この数ヶ月で見せてくれた成長ぶりを思うと、心が動かされるものがありました。


「美咲、どうするの?」


花音に相談すると、いつものように率直な意見をくれました。


「翔太くん、いい子だと思うよ。真面目だし、美咲を本当に尊敬してくれているし」


「でも、私まだ健一郎さんのことを…」


「えー、まだ言ってるの?」花音が呆れたような顔をしました。「美咲、佐藤先輩はもう過去の人でしょ?それに、美咲自身が変わったんだから、好みのタイプだって変わっていいのよ」


確かに花音の言う通りかもしれません。私は以前の、自信のない私ではありません。求める相手だって変わって当然です。


ある日、翔太くんから連絡がありました。


「田中さん、お疲れ様です。今日も研修、ありがとうございました」


研修後、彼が私のところにやってきました。


「翔太くん、お疲れ様」


「あの、先日のお返事の件ですが、お時間はかかっても構いません。僕は待ちます」


翔太くんの誠実さが心に響きました。


「ありがとう。でも、そんなに待たせるつもりはないから」


私は微笑みました。実は、もう答えは決まっていたのです。


## 第十六章 新しい恋の始まり


次の週末、私は翔太くんに連絡しました。


「翔太くん、お時間があるときに、少しお話ししませんか?」


「はい、もちろんです」


今度は私から、近くの公園を散歩しませんかと提案しました。


桜が咲き始めた公園を歩きながら、私は翔太くんに向かって言いました。


「翔太くん、先日の件ですが」


彼が緊張した顔で私を見ました。


「私も、翔太くんと一緒にいると楽しいです。これから、もっとお互いを知っていけたらと思います」


翔太くんの顔がぱあっと明るくなりました。


「本当ですか?ありがとうございます!」


「でも、職場では今まで通り、先輩と後輩として接しましょうね」


「はい、もちろんです」


私たちは桜の下で、新しい関係のスタートを切りました。


かつて健一郎さんに憧れていた私が、今度は誰かに憧れられる立場になって、そして新しい恋を見つけました。人生って、本当に不思議なものです。


## 第十七章 共に成長する日々


翔太くんとお付き合いを始めて二ヶ月が経ちました。


彼は本当に努力家で、毎日何かしらの自己啓発に取り組んでいます。私も彼に刺激されて、新しいことに挑戦するようになりました。


「美咲さん、今度の休みに一緒に料理教室に行きませんか?」


「料理教室?」


「はい、二人で参加できるカップル向けのコースがあるんです」


翔太くんの提案で、週末に料理教室に参加することになりました。


「今日はパスタとティラミスを作りましょう」


先生の指導の下、二人で協力して料理を作りました。翔太くんは最初こそぎこちなかったものの、真面目に取り組んで、みるみる上達していきました。


「美咲さんの指導のおかげです」


「そんなことないよ。翔太くんが頑張ったからよ」


二人で作った料理は、とても美味しくできました。


「これからも、いろんなことに一緒に挑戦しましょう」


翔太くんの言葉に、私は頷きました。一人で頑張るのも良いですが、誰かと一緒に成長していくのも素敵なことです。


## 第十八章 思いがけない再会


ある日、会社に来客がありました。


「田中さん、お客様がお見えです」


受付から連絡があり、応接室に向かうと、そこには懐かしい顔がありました。


「田中さん、お久しぶりです」


健一郎さんでした。


「佐藤さん!お久しぶりです」


「東京の案件で、こちらに来ることになりまして。せっかくなので、皆さんにご挨拶をと思いまして」


健一郎さんは相変わらず爽やかで、でも以前より大人っぽくなったような気がしました。


「お忙しい中、ありがとうございます」


「田中さんこそ、研修講師をされているとお聞きしました。素晴らしいですね」


私たちは少しの間、近況報告をしました。健一郎さんは東京で充実した日々を送っているようでした。


「実は、僕も結婚することになったんです」


「え?」


「相手は東京で知り合った方で、来月式を挙げる予定です」


私は一瞬、胸がちくりと痛みましたが、すぐに笑顔になりました。


「おめでとうございます!」


「ありがとうございます。田中さんにも、ぜひ素敵な人が見つかりますように」


健一郎さんは知らないのです。私にはもう、大切な人がいることを。


## 第十九章 真の成長


健一郎さんとの再会の後、私は不思議と清々しい気持ちでした。


かつてあれほど憧れていた健一郎さんでしたが、今の私には特別な感情はありませんでした。それよりも、彼の幸せを心から祝福できる自分がいました。


これが、本当の成長なのかもしれません。


その日の夜、翔太くんと待ち合わせをしていました。


「お疲れ様です、美咲さん」


「翔太くん、お疲れ様」


いつものカフェで、今日あったことを話しました。翔太くんは私の話を真剣に聞いてくれました。


「美咲さんは本当に強い人ですね」


「そんなことないよ」


「いえ、昔の美咲さんを知らない僕でも、今の美咲さんがとても素敵だということは分かります」


翔太くんの言葉が心に響きました。


「翔太くんのおかげよ。あなたがいてくれるから、私は前向きでいられる」


「僕もです。美咲さんがいてくれるから、毎日頑張れます」


私たちは互いに支え合い、高め合える関係になっていました。これは、かつて私が健一郎さんに抱いていた一方的な憧れとは全く違う、対等で温かい関係でした。


## 第二十章 プロポーズ


翔太くんと付き合い始めて一年が経った頃、私たちの関係にも大きな変化が訪れました。


「美咲さん、今度の休みに、特別な場所に行きませんか?」


翔太くんがいつもより緊張した様子で言いました。


「特別な場所?」


「僕たちが初めてお茶をしたカフェです」


私は微笑みました。あの日のことは、私にとっても特別な思い出です。


日曜日、約束のカフェで待っていると、翔太くんがやってきました。いつもよりおしゃれをして、少し緊張している様子でした。


「美咲さん、この一年間、本当にありがとうございました」


「こちらこそ」


「僕は美咲さんと出会って、人生が変わりました。毎日が楽しくて、自分も成長できて」


翔太くんが真剣な顔で話し続けました。


「美咲さん、僕と結婚してください」


翔太くんが小さな箱を取り出しました。中には、シンプルで上品な指輪が入っていました。


私は驚きで言葉が出ませんでした。でも、心の中では答えは決まっていました。


「はい」


私は涙ぐみながら答えました。


「本当ですか?」


「本当よ。私も、翔太くんと一緒にいると幸せだから」


翔太くんが指輪を私の指にはめてくれました。ぴったりでした。


## 第二十一章 新しい人生のスタート


プロポーズから半年後、私たちは結婚式を挙げました。


小さなチャペルでの、親族と親しい友人だけのささやかな式でした。花音が花嫁介添人を務めてくれて、会社の同僚たちも駆けつけてくれました。


「美咲さん、とても綺麗です」


翔太くんが感動で涙を浮かべて言いました。


「ありがとう」


私も嬉しくて涙が出そうでした。


披露宴では、花音がスピーチをしてくれました。


「美咲は、私が知っている中で最も努力家で、最も成長した人です。彼女の変化を間近で見てきた私が言うのですから、間違いありません」


花音の言葉に、会場が温かい拍手に包まれました。


「そして翔太くん、美咲を幸せにしてくださいね。でも、美咲はもう十分強い女性ですから、きっと翔太くんの方が幸せにしてもらえると思いますが」


みんなが笑いました。


式の後、私たちは新婚旅行でハワイに行きました。青い海と空の下で、私たちは誓いを新たにしました。


「美咲、これからもずっと一緒に成長していこうね」


「ええ、二人で頑張りましょう」


## エピローグ 受け継がれる想い


結婚から三年が経ちました。


私は今、会社で人事部に異動して、新入社員の研修を担当しています。翔太は営業部で頑張っていて、私たちは互いの仕事を応援し合いながら、充実した日々を送っています。


ある日、新入社員の女の子が私のところに相談に来ました。


「田中さん、私、自分に自信がなくて、どうしたらいいか分からないんです」


彼女の名前は小林あかり。内気で真面目な子で、どこかかつての私に似ていました。


「あかりちゃん、一つ面白いアプリがあるの。使ってみない?」


私は「ラブレベル」のことを教えました。今でも時々使っていて、現在レベル25になっています。


「レベルアップのアプリですか?」


「そう。でも一番大切なのは、小さなことでもいいから、毎日続けること。そうすれば必ず変われるから」


あかりちゃんの目が少し輝きました。


「頑張ってみます」


「応援してるから」


私は彼女の肩を優しく叩きました。


その夜、家で翔太に今日のことを話しました。


「美咲は本当に、みんなの憧れの存在になったね」


「そんなことないよ。でも、自分の経験が誰かの役に立つなら嬉しいわ」


「僕も最初は美咲に憧れていたけど、今は対等なパートナーとして一緒にいられて幸せだ」


翔太が私の手を握りました。


「私も幸せよ」


窓の外を見ると、満天の星空が広がっていました。


かつて健一郎さんに憧れて始めた自分磨きの旅は、思いもよらない形で実を結びました。恋愛だけでなく、仕事でも、人間関係でも、私は成長することができました。


そして今、その経験を次の世代に伝えていく立場になりました。


努力すれば報われる。求めれば得られる。でも、その「得られるもの」は、最初に思い描いていたものとは違うかもしれません。それでも、努力の過程で得られるものは、きっと人生を豊かにしてくれるはずです。


私の物語は終わりましたが、あかりちゃんの新しい物語が始まろうとしています。そしてその物語もまた、いつか誰かの背中を押すことになるでしょう。


努力の連鎖は、こうして受け継がれていくのです。


アプリを開くと、新しいメッセージが表示されていました。


『おめでとうございます!あなたは他のユーザーの成長をサポートするメンターレベルに到達しました。新機能「指導者モード」が解放されました』


私は微笑みました。ゲームはまだ終わっていないようです。でも今度は、プレイヤーとしてではなく、後輩たちを導く立場として。


人生は本当に、終わりのないレベルアップゲームなのですね。


【完】


---


*作品情報*

- タイトル:「レベルアップ・ラブ ~努力する女の子の恋物語~」

- 文字数:約15,000字

- ジャンル:恋愛小説、成長小説、コメディ

- テーマ:努力による成長、自己啓発、恋愛、人間関係、メンターシップ

- メッセージ:努力は必ず報われ、その経験は次の世代へと受け継がれていく

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レベルアップ・ラブ ~努力する女の子の恋物語~ トムさんとナナ @TomAndNana

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