貴方が死んだ日

優優

第1話 片思いの記録

揺れる髪の毛。

絹のように柔らかく綺麗な白い髪。

まるでそれはおとぎ話にでてくるお姫様のよう。

透き通る肌、腰より長い白い髪。

そして、この世のものとは思えないほどの美貌。


誰もが貴方を羨んだ。

だれもが貴方を欲した。

けれども貴方は来るものを受け入れ続けた。

去るものは全く追わず、ずっとずっと愛を探していた。


貴方には味覚がなかった。

だからタバコを吸うんだと貴方は言った。

貴方には痛覚がなかった。

だから傷跡を隠すのだと貴方は言った。

貴方には心の傷があった。

だからオッドアイを隠すのだと言った。


俺は貴方が欲しかった。

欲しくて欲しくてたまらなかった。

それでも貴方は愛を探すために、ひたすら駆けた。


貴方は最愛を失った。

俺は貴方を失った。

貴方は笑顔を作ったま、貴方は心を失った。

貴方は言った。

「人を殺した。大勢殺した。」


貴方は罪を背負った。

それでも尚美しかった。

貴方は兄を失った。

貴方は姉を失った。


貴方が初めて笑った。

「しにたい。」


とても美しい人だった。

男かも女かも分からない貴方。

俺は貴方のことを何も知らない。

俺は貴方が大好きだった。


貴方が死んだ。

俺は心を失った。


紙切れを見つけた。

貴方の髪で結ばれていた。

それには一言だけ書かれていた。


「ありがとう。」


俺は貴方に何もしてあげられなかった。

…空から雨が降ってきた。

土砂降りだった。

貴方の死には似つかわしくない。

そんな天気だった。


天は貴方を見放した。

それでも俺は欲しかった。

世界を敵に回しても。

俺は貴方が欲しかった。

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貴方が死んだ日 優優 @suguruyuu

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