異世界修仙~宿敵・王二狗(ワン・アーゴウ)再臨~

温 栖 云 (オン セイ ウン)

第1話 宿敵・再臨!

  風霊宗、外門執事堂の前。


  七月の太陽が容赦なく照りつけ、青石板からはむっとした熱気が立ち上っていた。新たに入門した百人余りの外門弟子たちは、やや乱れた列を作り、仙門に入ったばかりの興奮と不安を顔に浮かべながら、身分を示す玉札(ぎょくさつ)と入門時の物資を受け取るのを待っていた。


  徐令(じょ・れい)は執事堂の廊下の、漆(うるし)の剥げた柱にもたれかかり、半ば目を細めて、眼前の雑踏を退屈そうに見ていた。彼がこの風霊宗に転生してから、すでに幾日も経っていた。もはや、かつて山門をくぐりたての頃のように、天霊根(てんれいこん)の驕子(きょうし)として衆目を集め、意気盛んだった頃の自分ではない。今の彼は、気配を内に秘め、ごく普通の外門弟子の灰色の袍(ほう)を着て、人混みに紛れれば全く目立たない。ただひたすら、穏やかに一からやり直し、あらゆる争いの渦中を避けて通りたいと願っていた。


  執事の弟子が名簿を読み上げる。一つ一つ名前が呼ばれ、緊張した面持ちの者や、はしゃいだ様子の者が前に出て物品を受け取っていく。


  「……陳鉄柱(ちん・てっちゅう)……李秀児(り・しゅうじ)……王二狗(わん・あーごう)……」


  ありふれた名前が次々と耳をすり抜ける。徐令は最初、気にも留めなかった。風霊宗の支配地域は広大で、凡俗の子弟の名付けは昔からずばりそのもので、「狗剩(ゴウション/犬の残飯)」だの「石頭(シートウ/石っころ)」だの、珍しいことではなかった。彼はただ、転生者特有の、本能に近い警戒心をわずかに抱きながら、反射的に、呼び名に応じて列から出てきたその姿を、何気なく一瞥しただけだった。


  それは十五、六歳ほどの少年だった。背丈は高からず低からず、体格は太からず細からず、洗いざらした木綿の粗末な服を着て、初めて来た場所でのぎこちなさと当惑を少し顔に浮かべていた。どこにでもいそうな普通の顔立ちで、人混みに放り込めば瞬時に見失われそうだ。目つきもこれといって特徴がなく、鋭さもなければ、ひらめくような才気の光も感じられない。全身から漂うのは…素朴さ?あるいは、全く存在感のない平凡さと言ったほうが適切かもしれない。


  しかし、徐令の視線がその平凡な顔に触れた瞬間、彼の心臓はまるで無形の手に握りつぶされるように、激しく締めつけられた!


  王二狗(わん・あーごう)!


  この名…この顔立ち…


  記憶の閘門(こうもん)が轟音とともに開かれた!前世、彼の修為(しゅうい)を廃し、命を奪った時の冷酷で無関心な表情ではない。もっと前、彼がまだ燦然(さんぜん)と輝く天才だった頃、宗門の祝典で、任務大殿の片隅で、徐令という存在の光に覆い隠された無数の陰で、確かに…確かによく見かけた、同じように沈黙し、ぼんやりとした似たような影だ!あの影も同じように平凡で、同じように目立たず、背景の板に描かれた取るに足らない塵の一粒に過ぎなかった。


  あの者は何という名だった?徐令は前世、一度も気に留めたことがなかった。彼の周りを取り巻き媚び諂(へつら)う者、あるいは彼の天賦の才を妬(ねた)む同門たち、そのどれもが、こうした「塵」の何百倍も目立っていたのだから。


  あの致命的一戦に至るまで。名も知られず、その名すら徐令の記憶に刻まれていなかった相手が、奇妙な霊獣(れいじゅう)を連れ、電光石火の一撃で彼を雲の上から塵埃(じんあい)の底へと叩き落とし、二十年にわたる苦修(くしゅう)の基盤を破壊した時、初めて、その顔は苦痛と絶望の中で、異様なまでにくっきりと浮かび上がったのだ――まさに、こうして人混みに紛れればすぐに見失う、何の特徴もない、平凡きわまる顔だった!


  冷や汗が一瞬にして徐令の背中を伝った。焼けつくような陽射しが体を照らしているのに、足の裏から頭頂まで、骨まで凍りつくような寒気が走るのを感じた。


  まさか、あの男か?!同じ名前で、この全く目立たない気質までもが寸分違わず同じだ!


  なるほど…なるほど、かつて自分が絶賛に酔いしれ、同輩を見下していた頃、そのすぐそばに、これほどまでに真の、潜伏することを知る猛毒の蛇が潜んでいたとは!そして自分は、それにまったく気づかず、いや、一度たりともまともに相手を見ることさえなかった!


  「人間の外見などあてにならぬ…まったくあてにならぬ…」


徐令は心の内で呟き、苦渋と後悔が蔦のように絡みついてくる。前世、命と引き換えに得た教訓が、今この瞬間、これほどまでに生々しく、これほどまでに深く魂の奥底に刻み込まれた。


  彼は深く息を吸い込み、渦巻く感情を無理やり押し殺した。そして、何食わぬ顔で、その「王二狗(わん・あーごう)」という新弟子から視線をそらした。まるでただ何気なく目をやっただけのように。そして、彼は物音一つ立てずに背を向けると、廊下の柱の陰に身を隠しながら、一歩一歩、喧騒の群衆から離れていった。


  ここに留まるべきではない。王二狗という男は、彼が前世の記憶を持っているかどうかにかかわらず、未来に再び自分の劫(こう)となるかどうかにかかわらず、もうこれ以上、ほんの少しでも関わってはならない。


  今度こそ、彼、徐令は誰にも気づかれない「塵」となって、ひっそりと、遠く離れて、あらゆる嵐の中心となる可能性から避けて通るつもりだ。大道は独り行くもの。慎重さと保身こそが、遠くへ至る道なのだ。彼は身にまとった灰色の袍(ほう)をきつく握りしめると、その姿は雑役区(ざつえきく)へと続く細道の奥へと素早く消えていった。背後には、新弟子たちが物資を受け取る喧騒だけが残され、それはまるで別世界の出来事のように思われた。

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