灰より願う、炎に堕ちた二人

王宮の謁見の間。完璧な公爵令嬢リディアは、婚約破棄を突き付けられた断罪劇のただ中で、鮮やかにその刃を返す。 腐敗した王子と側近たちは失脚し、リディアの勝利は揺るぎないものになる――はずだった。
だが、罪人として連行される男爵令嬢の、静かな灰色の瞳。 リディアに向けられたその一瞥は、懇願でも憎悪でもなく、まるで全てを諦めきった、底なしの闇を宿していた。
完璧な勝利に残された、一つの亀裂。 その日を境に、王都の底から、誰も知らぬ静かな炎が燃え広がり始める。
英雄の栄光も、復讐の甘美も、革命の歓声もいらない。
これは英雄譚ではない。復讐譚でも革命譚でもない。ただ二人の少女が己の中の炎で燃え尽きるだけの――何も残らない物語。

【作品のテーマ性に関する重要なお知らせ】
・本作はフィクションであり、…続きを読む