社会の安定

治安が無条件に確保されるという信念は危険である。治安は警察機構の能力に依存するものではなくそれぞれが持つ文化、経験によるところが多いからだ。

一度崩壊してしまった社会は回復するのは難しい。正義に則って行動する人が徐々に損をするような状況になれば制度は空理空論になる。

培われてきた他人に対する様々なアプローチが無になるとき人は残酷になる。しかし優しさがあれば状況は改善されるかもしれない。

人に優しくするというのは最高の治安対策なのだ。人にやさしくしその人が人として報われているという実感を得られたならまず社会に対して復讐しようとはならないからだ。優しさは様々なものを試される。他人がどのような状況なのか判断する能力、自分にどのような手段があるのか判別する能力、他人と協調して状況を改善しようとする意思。

これはすべての人が持たなくてはいけない徳目であるし、常にアップデートしなくてはいけない。

残酷さが評価されるようになれば常に警戒しなければいけないコストが生じる。残酷さとは短期的な利益の追求であり、裏切りの推奨であり、縮小均衡である。

公共の空間や利益は残酷さでは生まれない。優しさが不可欠だ。

ちまたでは優しさは取り柄のない人が最後に取る表現だというが、優しさは社会という無形の財を支えているのを無視している。優しさは短期的な利益にはならないし、すぐ報われるとは限らないし、自己主張するものではない。

ただそこにある。それが評価されるのだ。

他人に対するアプローチの積み重ねが社会を作る。有形であれ無形であれそれは存在しているのだ。

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