第3話 返上クロニクル

「お前!なんでもうここにいるんだよ!」

「それはあなたが今日無駄な時間ばっかり過ごしているからでしょう!」

無駄な時間?いやいや少なくとも今俺は何一つ無駄な行動していなかっただろ。上履きもスムーズに履けたし。


「無駄な行動なんていつしたっていうんだよ!」

「あなた今日私を見てわざわざ迂回して学校に行ったわよね!」

「ああそうだけどそれがなんか関係あるのかよ!」

「関係あるでしょ!だって無駄な時間過ごしたらそれだけ遅くなるのが普通でしょ!」

さっきからずっとこいつは何を言ってるんだ。朝のことは一切関係ないはずだろ。まあいい俺はそのことを目的にこいつを呼んだ訳じゃない。


「まあそれは一旦置いといて、お前今日俺によくもあんな恥かかせてくれたな!」

「それも自業自得でしょ!」

「うるせえ!とりあえずお前は明日投稿した時にすみません私が間違っていました。鈴木くんは、無実です!って頭下げて言え!」


「ぜっっったいに嫌!なんで私がそんなこと言わないといけないのよ!」

「それはお前が今朝大声で話したからだろ!」

「じゃあいいわ話したげる!でも条件があるわ!」

こいつ自分の立場分かってんのかよ。まあでも俺の目的はもう達成されつつあるし、一応聞くだけ聞いてみるか。


「承諾するつもりはないがそれはなんだ!」

「先に承諾しなさい!」

くそこいつ本当に厄介だな。というかこれ立場逆転してないか?

「分かったじゃあ絶対明日謝れよ!」

「約束するわ!じゃあこっちに来なさい!」

俺は言われた通りコトリの方へ向かった。


「でなんだその条件ってのは」

「突然だけど、この現実でなんかおかしいと思ったこととかない?」

「おかしいっていうのは、具体的に」

「物理的にとか!なんかないわけ!?」


そんな急に言われてもわかる訳ないだろ。もうそれ哲学とかそういう問題だろ。

あ、でもそういえばついさっき。

「お前がさっき俺より早く着いていたことだ」

「それもあるわね!でも今回私が言いたかったのは、あなた普段行ったことのない建物とか、普段自分が立っている地面とかの中身は見たことがないでしょ!」

「ああないけど、それがどうしたんだよ」


本来ならクラスで今、教室に残って連絡先とか交換しているんだろうなと想像してしまった俺は、もうすでにこいつと言い合う気力を失いつつあった。


「それが違うのよ!私ね、一度だけ小さい頃道に迷って、普段帰り道じゃない建物に間違えて入っちゃったことがあるのよ!」

「おん、それで?」

「そしたら中身はなんだったと思う!」

なんだったと思うって普通に人がいるとかそういうのじゃないのか。

「人がいた、とか?」

「そんなありきたりな答えな訳ないでしょ!」

「じゃあわからん」

「それが全部空だったのよ!」

あー分かった分かった。こいつさては厨二病だな?まあ誰にでもそういう時期はあるよ。


「はいはい。じゃあ協力してやるから明日は頼んだぞ」

そう言って俺はコトリの肩に手を乗せて立ち去ろうとした。

「本当に協力してくれるの!やったー!」

そうやってコトリはガッツポーズをしながら、喜んでいた。そういうところは本当にピュアで可愛いぞ。ずっとそうしていてもいいんだぞ?


翌朝、俺はこれから昨日の汚名返上ができるんだと思ってワクワクしながら学校へ向かった。いつもよりも朝日が綺麗なのは気のせいだろうか。ああなんて気持ちのいい朝なんだ!

そうして俺は学校に着いて、またしても上履きを履くのに手こずりながらもなんとか教室に着いた。だが小鳥遊コトリがいない。まあまだ始業10分前だ。待っていればいずれ来るさ。

そうして10分経ったがあいつは一向に来る気配がない。俺は怒りが込み上げてきて、無意識に貧乏ゆすりをしていた。


そして1限が終わり、結局あいつは登校してこなかった。俺はあいつがいないことへの怒りとモヤモヤで、限界を迎えそうだった。あーイライラする。そもそも何であんなやつ信用したんだよ俺。

そう考えていると、2限目の国語が始まった。入学式前に配られた教材を昨日俺はロッカーに置いたから、廊下にあるロッカーに急いで行った。もうチャイムは鳴ってるからな。すると教科書の上に何やら一枚のピンク色のメモが置いてあった。そこには

今日放課後正門前で待ってる

なんだこれ!ラブレターか!?


しかし下の方を見てみると

――小鳥遊コトリ

俺は何回こいつに弄ばれるんだ。今日は絶対に裏門から帰ってやるもうこいつなんて知らねえ。そう思いながら俺はその日の学校を、昨日のように女子からの冷たい視線に耐えながら過ごした。

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