鞄島巡記
空空
猫は路地裏で目覚める
はた、と目を開けると、そこには満天の星空が広がっていた。ああ、遠いな。猫はそのようなことを考えた。というのも、猫は猫の言語で思考しており、およそ人の文法とは違うのだった。
「星」
散らかった意識が知識を集めて、人の言葉で目に映るものをあらわす。あおむけに寝転がった猫は、人の形をしていた。猫は猫だが、いわゆる地球でみかけるネコとは異なっていた。ゆらゆらと白い尾を揺らし、くしくしと頬を手の甲で洗う。真夏にしては涼やかな夜の風が猫を随分元気づけた。
「しかたがないから、家、探す」
頭上の星々はあまりに遠く、手も足も届きそうになかった。子ども特有のしなやかな体躯を伸ばし、わがままに起き上がる。歩き出す裸足の裏を小石がくすぐった。
猫は、自分を見守る瞳があるのには気づく素振りを見せなかった。
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