クラスで浮いてた俺、ある日突然「全校女子の理想の彼氏」になった理由
赤いシャボン玉
第1話
「……今日も、誰とも喋らなかったな」
放課後の教室。最後まで席に残っていたのは、俺だけだった。
誰もいない教室って、案外落ち着く。
誰かの目を気にする必要も、無理に会話を合わせる必要もない。
静かで、心地よい。
俺の名前は――
地味で冴えない陰キャ、クラスでの存在感はほぼゼロ。
友達?いない。彼女?できたことない。
休み時間は図書室、昼休みは自分の席で弁当、放課後は即帰宅。
まさに“浮いてる”存在。
だけど、俺には俺なりの生活がある。
妹に夕飯を作って、洗濯して、ついでに翌日の弁当を詰めて――
そういう毎日を繰り返してる。
……それで十分だった。昨日までは。
「なあ、これ見た?」
昼休みの教室で、男子たちがスマホを見ながらざわめいていた。
「マジで言ってんの?こいつが“理想の彼氏”って……どこの世界の話だよ」
「いやでも、書いてあること全部マジだったら、確かに女子が惚れるかもな」
「家事全般OK、読書好き、口数少ないけど優しくて、どんな女の子にも平等で……」
「おいおい、しかも“同じクラスにいる”ってよ?」
……なんの話だ。
興味がないふりをしながらも、耳が勝手に拾ってしまう。
どうやら校内SNSに、こんな投稿があったらしい。
『理想の彼氏って、こういう人じゃない?』
・家事が完璧
・目立たないけど清潔感がある
・気配りがさりげない
・誰にでも優しいけど距離感を保つ
・趣味は読書
・無駄に騒がないし、落ち着いてる
・「ありがとう」「ごめん」が自然に言える
その条件に当てはまる“ある男子生徒”がいるらしく、
「もしかしてこの人、同じクラスにいない?」と話題になっていた。
「なあ……それって相原じゃね?」
え?
「いやいや、さすがにないって」
「でもよ、アイツ……一人で静かにしてるし、いつも誰かに席譲ってね?
あとこの前、転んだ後輩助けてたの見たし……」
「うわ、やべ。これ“マジの理想男子”じゃね?」
……何言ってんだ、こいつら。
昼休みが終わっても、その話題は教室の隅々まで広がっていた。
「ねえ……あの相原くんって、どんな人なんだろ?」
「私、気づかなかった……同じクラスなのに……!」
「話しかけてみよっかな……」
女子たちの視線が、明らかにこちらを向いている。
それは――俺に、だった。
放課後。下駄箱の前。
「相原くん、だよね?」
声をかけてきたのは、クラスのギャル――
金髪ハーフアップ、ピアス、短いスカート。
目立つ存在で、俺とは真逆の人種。
なのに、彼女は笑顔で近づいてきた。
「さっきのSNSの投稿、見た?あれ、たぶんアンタのことだよね?」
「……いや、俺じゃない」
「うそ。照れてんでしょ? だってさ、いつも誰かのために動いてるの、私見てたもん」
「……」
「あとね――私、そういう男子、めっちゃ好き」
彼女の笑顔は、悪戯っぽくもあたたかくて、なぜかドキッとした。
その日からだった。
地味だった俺が、“全校女子の理想の彼氏”として認識され始めたのは――。
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