第20話:選ばれなかった記憶たち

【再会、それは希望か、絶望か】


――異空間の裂け目から現れたのは、《死んだはずの仲間たち》だった。


彼らは、レイたちがかつてともに訓練を受け、笑い合い、そして命を賭けて戦った仲間たち――そのはずだった。


「……セナ、リオ……なぜ……!」


レイの声が震える。

だが、仲間たちの瞳は冷たい。まるで“別人”のように。


「レイ……僕たちのこと、まだ覚えてるんだ」


「でも、あのとき見捨てたよね?」


かつて仲間だったセナが言った。


「僕たちは《記憶の器》の実験台にされたんだ。君とハルキだけが、生き残った」


アマデウスの声が響く。


「これはただの復讐じゃない。君たちが捨てた過去、その罪を“記憶”として返してあげるだけさ」



【アマデウスの能力――《因記構造:パラレイム》】


アマデウスは、“世界の過去”を再構築する力を持つ。

彼は死者の記憶と肉体をつなぎ合わせ、彼らを“存在したまま”蘇らせた。


だが、それは本当の彼らではない。

――ただの「記憶による人形」。


レイの心は揺れる。

本当に彼らは、もう……いないのか。



【ユナの命の蝕み】


「っ……く……!」


ユナが突然、膝をつく。

その身体のあちこちから、“錬金陣の痕”がにじみ始めていた。


「禁忌術を発動した代償が……もう来てる……の?」


レイが駆け寄ろうとしたその時、セナがレイに向けて銃のような術式を放つ。


「来るな! 罪を償え!」


だが、その一撃を受けたのは――


「ユナ!?」


ユナだった。


彼女は、レイをかばって倒れる。



【ユナ、死の兆し】


「バカ……ね……私が勝手に好きになって、勝手に守っただけ……」


「だから、泣かないで……レイ」


その言葉とともに、ユナの意識が落ちる。

全員が声を失う中、レイの叫びだけが、世界に響き渡る。


「ユナぁああああああああああああ!!!!!」



【新たな覚醒、そして闇】


その叫びに呼応するように、空間が黒く染まり始めた。


「これは……レイ、君の中にあるもの……!」


アマデウスが驚愕する。


レイの中に眠っていたのは、

かつて《記憶の器》で抑圧された“もう一人のレイ”だった。


――それは、感情のない殺戮者。

そして、ユナだけを“守る”ことに存在理由を持つ、暴走の人格。


「俺は……“彼女”のために、全部壊す」


その瞳から涙は消え、ただ“赤”だけが灯っていた。



【暴走覚醒:レイ=オルタ】


レイの暴走形態。

その力は、空間ごと記憶を消し去る“存在の否定”。


かつてハルキをも超えるはずだった、“理論上の最強”がここに姿を現す。


「すべて……記憶から消去する」


レイ=オルタが、アマデウスの“偽の仲間たち”を一撃で破壊し始める。


「これが……“器”の完成形……!」



🔔次回予告


第21話:「そして、世界は一度だけ泣いた」

・レイ=オルタ VS アマデウスの全面戦争

・ユナ、最期の願いと微かな灯

・カイ&アリア、レイを止めるための決断

・新たなる勢力空白の女王の接触――

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