魔獣変化

黒雪姫

第1話


 ねぇ、みんな、僕はね、僕の言葉が先っぽの尖った刃よりも誰かを傷つけるのなら、そんな言葉なんか失くなっちゃえばいいなって思うの。


 もし、自分が誰かを傷つけちゃうくらいなら、自分が傷つくほうが、僕は、ずっと幸せだから。


 ねぇ、みんな、僕の唇はみんなより紅いよね。


その紅はね、愛と情熱を象徴する色なの。


そんな薔薇のように紅い唇から、水のように透明な声を出して、みんなを優しく包み込むカラフルな言葉を発する僕だって、いつか、きっと、身も心も言葉も全部が真っ黒に塗り潰されちゃうのかな?。


それなら、僕は最初から、言葉なんて要らないの。


  何故なら、僕は、誰のことも、傷つけたくないから。


 僕の心がこんなに晴れないのは、悩んでいるのは、もやもやが募っているのは、それくらいにこの世界が、僕が僕らしく誰かを愛しながら生きるためには、酷く残酷で、心臓がビクビクしちゃうくらい危ない場所だからだよ。


 

  ねぇ、そういえば、「口」は災いの、つまり、好くないことや嫌なことの元だよって誰かが言っていたよ。


 じゃあ、僕はお口なんか要らない……


何故なら、お口は心の出口だから。


 もし、心が心を壊すなら、僕の心はガラス細工のお人形さんのようにあっけなく壊れている……


 ねぇ、そういえば、「目」は「口」ほどに物を言うよって誰かが言っていたよ。


 それなら、僕は「目」なんて要らないよ。


そうなの。僕の「目」がね、もし、誰かを氷のように冷たい眼差しで視てしまうのなら、その前に僕は「目」を棄ててしまいたいの。


例え、 どんなに悪い人が、僕の目の前にいたとしても、僕は、その人を氷のように冷たい眼差しで視てしまうなんて、やっぱり嫌だから……。


 そうなの。僕の「目」はね、みんなにとっては、おっきくて、くりくりとしていて、まつ毛もお人形さんみたいに長くて、羨望の的になるような目だけれど、僕には暗闇以外、視せてくれないの……。


何故なら、 僕の「瞳」が映す世界は、ずっと昔から、哀哭と憤激と絶望のこの三つで黒く塗りつぶされていたんだもの。

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