未来の縁側で、また笑う。
まなじん
未来の縁側で、また笑う。(男性版)
所要時間 約15分
※さらっと読めるBLの恋愛会話劇です。
※当たり前に同性婚してます。
登場人物
凛太郎(りんたろう):5年前に会社で同期だった叶多に告白し、叶多と結婚し一緒に暮らしてる。性別男性。
叶多(かなた):5年前に会社で同期だった凛太郎に告白され、凛太郎と結婚し一緒に暮らしてる。性別男性。
*
*
*
*
*
叶多:
「なぁ」
凛太郎:
「ん?」
叶多:
「俺、お前のこと本当に愛してる?」
凛太郎:
「はぁ!?なんだよ、いきなり」
叶多:
「いや…ふと、気になって」
凛太郎:
「普通逆だろ?俺のこと本当に愛してる?の言い方だろうが」
叶多:
「だって気になるもん。毎日いってらっしゃいして家事して飯作っておかえりしておやすみのルーティーン。マンネリ化するって」
凛太郎:
「………たしかに、叶多の立場になって考えてみたけど、退屈になりそう…(考える間)……そうだ。じゃあさ、改めて告白しようよ」
叶多:
「なんでそうなる!?……むぅ…」
凛太郎:
「お、照れてる。可愛い」
叶多:
「んー……ありきたりだけど…」
凛太郎:
「うん」
叶多:
「お…俺の人生の半分あげるから、凛太郎の人生の半分を俺にください。絶対…幸せにするから」
凛太郎:
「ふふ…可愛い。でもまだ足りんなー」
叶多:
「…じゃ、じゃあ……」
凛太郎:
「ベランダの確認?ということは…」
叶多:
「うっさい!黙ってベランダ出ろ!」
凛太郎:
「はいはい。寒…あ、毛布ありがと…はぁ……息が白い。冬の澄んだ空気って綺麗だよな。お、ちょうど満月じゃん。最高なシチュエーションだな。へー…なぁ、俺が知らないと思うか?あの有名な告白」
叶多:
「だから黙って受け入れろって!ニヤニヤすんな!(咳払い)……『今日は月が綺麗ですね』」
凛太郎:
「…………」
叶多:
「……はは、 は、バカ正直すぎたか。でも文学に疎い俺にはここが限界なんですよー」
凛太郎:
「バカ正直。でも、そういうまっすぐ突っ切るところ好き」
叶多:
「大正のころからある『I Love You』だよな。昔の文豪さんの表現力には負けるよ」
凛太郎:
「……でも、俺は、お前からもらえるから嬉しい!使い古されてようが、嬉しい……」
叶多:
「…その反応は、ズルい。いつもみたいに可愛い!って大騒ぎしないのかよ…」
凛太郎:
「内心爆発しそうなくらいドッキドキしてますけどー?はぁ…可愛いな…」
叶多:
「悩みに悩んだんだぞ。ネットで調べて図書館行ったりして………お前が好きそうな表現、どれが一番伝わるのかって、真剣に考えたんだよ……それでも学のない俺にはこんな典型的なのしか思い浮かばなかった…」
凛太郎:
「かなたぁ…健気ぇ…可愛すぎだろ…寒いから入ろ…」
叶多:
「で?返事は?お前が知ってる範囲でいいよ?」
凛太郎:
「シカトすんな。健気かと思ったら手のひらくるっくるで上から目線かよ。はぁー、女王様の尻に敷かれる俺の気持ちよ…」
叶多:
「その女王様を惚れさせたのはどこのどいつだ?」
凛太郎:
「…じゃあこう。……『月はずっと綺麗でしたよ』。……意味、知ってる?」
叶多:
「…知ってる…。なんだよ、同期だった時から、ずっと両片思いだったのかよ」
凛太郎:
「5年もすればちょっとは成長しますよ?」
叶多:
「初めて告白された時に比べたらな」
凛太郎:
「俺がお前のこと口説き落とした時のこと、ちゃんと覚えてる?」
叶多:
「さぁー?大雨の最中バキバキに折れた傘持って情緒がなさすぎる下手くそな告白した野郎相手には覚えてませーん(棒)」
凛太郎:
「怖いくらい覚えてんじゃん…じゃあ、俺の好きなとこ、具体的に言って」
叶多:
「…凛太郎は凛太郎ってだけで充分可愛いし、素敵だよ。名前通り凛としててかっこいいし、俺に対しての愛はすごいし、はにかんだ時のえくぼとか、優しそうな目尻とか、ちょっと高い鼻とか、薄くて綺麗な唇とか、照れた時に真っ赤になる耳とか、あと…」
凛太郎:
「わーーー!!!それ以上言うな!!充分伝わったから!!改めて口に出されるの恥ずかしいからやめろ…!」
叶多:
「自分から言ったくせに。あ、今の怒ってないむくれ顔も可愛い」
凛太郎:
「〜〜〜〜〜っっっ!!!もう!!!」
叶多:
「へへっ、仕返し」
凛太郎:
「…無自覚人たらしめ」
叶多:
「なんか言ったか?」
凛太郎:
「いいえなんにも。まぁ、家に帰ってくれば、飯用意してくれてる可愛い嫁さんいる生活最高だし?俺はATMだけど」
叶多:
「コンプラ違反にもほどがあるだろ。はい、はい!亭主関白反対ー!」
凛太郎:
「お前に対してだけ言ってんの。他のヤツだったら見向きもしないから」
叶多:
「そんなら余計問題だわ。…いい加減、俺のこと好きになれよ」
凛太郎:
「は?世界で一番好きだけど。どんな叶多でも嫌っつーほど愛するから。仕事中毎日想ってるって。俺の愛舐めんな。叶多ってさ、たまに自分を卑下するよな。疑ってんの?」
叶多:
「……疑って、ない、ことは、ない、とは、言いきれない………だって、あんときゃ、偏見やら差別やら酷かったもん。病気だ、普通じゃない、気の迷いだ、ホモだの気持ち悪いって……今は、理解が進んでだいぶマシになったけど…」
凛太郎:
「……それでも!俺は叶多を選んだし、叶多も俺を選んだ。その関係をとやかく言われる筋合いはない…世間にも、お前にも。……ほら、結婚した時の写真。見ろよ、ふたりでタキシード着てさ、お前がベール着けてるの」
叶多:
「……はぁ〜〜〜……何年前の話だろうな」
凛太郎:
「俺が無理言ってさ、誰もいない教会で、ふたりだけの結婚式上げたの、覚えてるか?」
叶多:
「ふふ、覚えてる。カメラマンもいないからセルフで撮るの大変だったな。しかも抱っこしてー!ってワガママ言う可愛いお姫様ここにいたし」
凛太郎:
「自分で自分を可愛いお姫様って言うな。事実だけど。…にしても、雲一つない空と綺麗な海をバックに、真っ白が映える。…叶多と一緒になれたの、嬉しかったよ」
叶多:
「…どっかで聞いたことあるんだけど、結婚式とかお祝いの時のドレスの色って込められた意味があるらしいぜ」
凛太郎:
「なに…?まさか意味怖系じゃないよな…?」
叶多:
「白いドレスは『あなた色に染めて』、黒いドレスは『あなた以外の色には染まらない』だったかな。記憶が正しければだけど」
凛太郎:
「……ぷっ、なんだ、それ。そんな意味がなくとも、俺は叶多に一目惚れしたからお前色に染まるつもりしかなかったけど〜?」
叶多:
「なんだよ、今更ナンパかよ。さらっとそんなこと言えっから社内の女の子にモテてたんだよ。俺みたいな陰キャ野郎がどんだけ隠れて爪噛んでたか知らないでしょうね〜?」
凛太郎:
「は〜〜〜?可愛いすぎなんですけど???え、なに、ヤキモチ妬いてたってこと?モテてたのは事実だけど、だからって女の子食い散らかしたりしてねーよ」
叶多:
「言い方!ほんとだろうな?お前から告白された時罰ゲームかなんかだと思ったくらいだぞ」
凛太郎:
「ほんとだって。俺はジジイになってもずっと隣にいる未来が見えるヤツとしか添い遂げないって、心に誓ってるから」
叶多:
「〜〜〜!!!そういうのが真顔で言えるからズルいんだろ…」
凛太郎:
「…嫌だった?」
叶多:
「…その聞き方は、反則。嫌だったら5年も一緒にいない。むしろ、なんで俺なんか選んでくれたのか不思議なくら…いっでぇ!!お前のデコピン強すぎ…!」
凛太郎:
「俺なんかって言うな。さっきも言ったけど、なんかじゃなくて、俺は!叶多だから選んだ!…いや、惹かれたってか?なんか…他の女子にはドキドキしないのに、お前が近くにいる時だけ…変だったり?」
叶多:
「……気のせいだとか、思わなかったのか?」
凛太郎:
「ううん、他のヤツも普通にイケメンでかっこいいなとかすっぴんの女子可愛いなとか思ってたけど、そっから先の感情出たことない。……俺もお前と一緒で、一目惚れだったんだろうな」
叶多:
「だろうなで済ますな。確信しろ。……(たじろぐ間)」
凛太郎:
「どうした?指輪弄って」
叶多:
「……不安に、なった。俺、昔から自分に自信ないからさ。だから…その……ぐす…ん…」
凛太郎:
「……あのさ、俺はさ、叶多の全部を愛してるんだよ。俺に笑いかけてる時も、隣に寄り添ってくれてる時も、結婚した時の笑顔も、俺のために飯作ってくれてる後ろ姿も、天使みたいな寝顔も、ケンカして反省してる時も、今みたいな不安で泣きそうな時も、なんなら泣いてる顔も、しわくちゃのジジイになっても、全部全部愛してる。絶対離れないから」
叶多:
「……ふふ、全世界敵に回しても、とか、キザなこと言うつもり?」
凛太郎:
「お望みならどれだけでも。もう嫌だーってなるくらい」
叶多:
「じゃあもう嫌だーってなるくらい愛してよ。まっ、一緒の墓に入るまで、いや…入っても、か。満足するつもりもねーけどな!」
凛太郎:
「あーあ、やっぱ叶多には適わねぇわ。この欲張りさんめ。名前通り、いっぱい好きなこと叶えやがって」
叶多:
「…ふふ、その返し方、好き!あ、そういえば、また聞いてほしい話あって」
凛太郎:
「ん?なぁに?」
叶多:
「恋の賞味期限って3年が限界なんだって。だからそれ以上の時間を過ごしてるふたりは、その都度相手に惚れ直してるんだとさ」
凛太郎:
「…俺に、惚れ直した?叶多」
叶多:
「ばーか。わかりきってること聞くなよ。……これまでも、これからも。50年後も、60年後も、ジジイになっても、ずっと一緒だよ。凛太郎」
*
*
*
*
*
END
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