黒刻の牙
最弱の味噌汁
第一章
第1話 牙を持たぬ者
その夜、渋谷の空は焼けていた。
ビル群の隙間を炎の柱が走り、黒煙が空を裂いた。街は騒がず、誰一人気づかない。これは“結界”の中で起きている出来事──人の目から隠された、裏世界の戦争だ。
「ギャハハハッ!! もっと喰わせろォオ!!」
斧を振り回す異形の男が、交差点の中央で狂ったように笑っている。皮膚はただれ、体格は常人の倍。目は黄ばんで濁っていた。それはもう、人ではなかった。
彼の前に、黒い影が降り立つ。16歳の少年。無機質な目。肩まで伸びた白髪。黒コートの裾が揺れる。腰に下げた漆黒の刀は、まるで呼吸しているかのように脈動していた。
「……氷川レイ。所属:掃除班第七分隊。確認と抹消、実行する」
少年は感情を感じさせない声でそう呟き、歩き出す。
この世界の裏側には、表向きの警察や行政とは異なる"管理機構"が存在する。異能、呪い、喰い人──現実から切り離された脅威を、一般市民の目から隠すための組織だ。氷川レイが所属していた“掃除班”は、その実働部隊。異能を暴走させた者や
異能を持つ者は、先天的・後天的を問わず“異質な力”と定義され、必ず代償を伴う。喰い人とは、その代償を支払えず理性を失った者たちだ。喰い人にはランクがあり、最も危険視されるのが“牙持ち”──異能を武器に昇華させることができる特異個体。
氷川レイの
斧の男が気づき、顔を歪めた。
「んだァ!? ガキがひとりで、なめてんのかテメェ!!」
怒声と共に振り下ろされた斧が、アスファルトを割る。瓦礫と火花が飛び散る中、レイの姿は掻き消え──
「速ッ──」
次の瞬間、男の右腕が斬り飛ばされていた。
「……遅い」
レイの刀が、血もつけずに黒光りしていた。
「な、にが……っ!? クソがああああああああ!!」
断末魔とともに男の身体から黒い瘴気が噴き出す。“異能解放”──呪いそのものを放ち、暴走状態に入った。
コンクリートが崩れ、ガラスが砕け、周囲の空間が歪む。だがレイは、ただ静かに刀を構える。
「牙、“
刀が黒煙を噴き上げ、形状が変化する。刃は伸び、紋様が浮かび上がる。その一太刀で、全てが終わった。
──数分後。
瓦礫の中、レイは膝をついて刀を突き立てていた。残されたのは、異能の核──黒い結晶体。レイはそれを手に取ると、刀に吸わせた。刀が一瞬、脈打つように光を放つ。
「……牙を持たぬ者は、喰われるだけだ」
そう呟いた彼の表情に、感情はなかった。
だがその奥底に、確かに何かが燃えていた。
“あの日”からずっと、燃え尽きないままの怒りが──。
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試しに書いてみました。
今のところは謎が多すぎて、「つまんねえ」と感じる方もいらっしゃると思います。
ぜひとも、後輩みたいな感じで温かく見守っていただけるとありがたいというかなんというか、って感じです!
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