第26話
「あっ……と―――――まずは男子禁制ですから、ふふふ。残念ですねぇ? しかももう今後も無理だわよ、スケジュールぱんっぱんっだから無理だわ」
その意地悪な灯火の顔、スケジュールぱんぱん……?
それに気づく、恐らく同じ事を考えているとやっと感づいて――。
「あぁ……うそっ。全然取れないの……? いやでもさすがに譲ってくれよっ、せっかくの二人の時間じゃないかぁ――!?」
「まぁ、、無理です」「なんでだ!?」「ひとえに利益がないからよ。男女交際なんて芸能人にはマイナスだもの、それに……」
ふ……、フフフ。悪趣味に笑う、明らかに妨害だろう。「まぁ、親友の為ですしぃ? だから募集してないって言ったのだわ。あと何より論外なのよ、だってあの子……、私達の方は幼馴染で分かってますけど、アナタは会ってまだ数日くらいですから――」
「会って……数日―――――っ?」
その言葉に驚嘆するしかない。だが事実数えてみれば、2ケタに行かない、まさかの……。
「そうやって皆が諦めるんだよ~……。まるっと1年一緒にいてもね~~、体感1ヵ月とか3か月位しかって、そんな感じなのねぇ」
「それであっても私達は譲りませんからね……。記憶がある時の輪廻に彼氏役はほぼ必要ない、それは私達と被るからですよ、想定が甘いわよ……、アナタ――」
じゃあほらほらぁ……、輪廻さんお出しナサイな、私達への報償をっ。仙台からの献上品をぉ……♥!
「リンちゃんはお金持ちだから~~っ、ふふふ♥ まるっと輪廻さま~、お助けを~~っ」
その言葉と共に、いっぱいあったお土産を出し、片っ端から開け、バリバリ、もっちゃもっちゃ食べまくる2人、それを笑う輪廻。
芸能人ともあって金周りは良いらしい、それは2人に対しては惜しみなくて……。
「2人共、それ……。それはじゃあ本気で、俺はどうしようも……―」
絶対知っているはずのその彼女は、俺を知らない。我慢が一気に何か……色を変えるような、行ってはいけないとは思う。でもそれでも悲しくて悔しくて、憎くもあって。
何よりその、無垢な彼女の目線は確かに他人なんだ、多分本当に自分の感触が吹き飛んでいる。
初期設定に戻された彼女、だがそれでも諦めきれないんだ、彼女に俺は……。
「おっおっ……入るのかなぁ~、入らないのかな~~? まるっと壮太君はそれでも居場所を確保するのでしょうか~~っ、ふふふ♥」
「あぁえと……、戸北君……だよねぇ? ごめんね……、ちゃんと知ってるし、戸北君なりに頑張ってくれたみたいなんだけど。それでも今は2人と……うん」
まぁ一部の隙も無いくらいに3人。
今回の台本を広げ、現場の雰囲気や役者との会話と動きを、あと何度かやった通し稽古との差などを熱心に見ている。そのほとんど人もいないし民家も遠い路肩でポツンと。
多分3人はずっとずっと、こうやって繋がって……。
「あぁでもそうだろう……――ここで引くなよ、だってロミオとジュリエットはたったの5日だったんだぞっ……」
それで初潮まで持ち込み、結婚して無理心中に至ったんだ。それは創作だが、それでも今は……。
「あ、あの……、でも輪廻っ。義臣 輪廻さんっ!」
ふぅぅゥ……――― ゥ
「俺は……、俺とキミとはきっと目いっぱいでも、それでも少しの記憶しか残せないと思うっ、でも遅くないだろう……記憶に残りたいんだよっ。だって俺は君の笑顔が好きなんだからっ、僕は君をもっともっと見ていたいからだっ!」
「ヤダ、くっさい……――」
迷う――――――――、少しの言葉や表情で揺れる、だがしかし、いや。
「記憶が消える……、分かってるっ。でも君は何より恋愛が似合うと思うんだ、俺の中の君はそうなんだ。俺は君に応えられると思う……っ、俺は何度でも手を伸ばせる、それは恋人としてだよっ!」
その、言い切った静寂の中「それでね……、まるっと壮太君。本気で契約更新する気なのかな? また何も覚えてないよこの子、全部全部吹き飛んじゃってます……。そうして次もそうなる――」
「うん――。先輩、俺は3度目やるよ」「そうじゃないのよ……フフ。まぁ分かってないのでしょうけど」
その言葉に眉根を上げるが、灯火の視線の先では……。
「私に……恋愛……? それは……それって――」
無理だと、そう思った。
自分にあるのは少ない記憶、同世代よりもずっとずっと狭い記憶だろう。その中で男の記憶なんて数舜だ、そして何よりそんな事……。
「義臣 輪廻さん。俺とずっとずっと付き合って欲しいんだ、俺は本気でずっと横にいるよ――っ」
その言葉に目を逸らした「あぁあの………―、後で……良いですか。やっぱり私、今日は疲れてますので……」
その言葉に、うなずくしかない。
やっぱり近づくのは容易ではないようだ、あの3人に割って入るのは。
ただ帰る自分にオッパイ先輩が来て……。
「案外入っちゃってたよ~、あの顔……ふふふ♥ これも逆にまるっと強みだよねぇって、だってほとんどウブだから輪廻ちゃんは~~っ、やっぱりすっごい可愛いのぉ~♥」
ちょっと本当に心が動きやすいんだぁって……フフフ。
また何も知らない、覚えてない輪廻だが、それでも素顔が可愛いのは動かしがたい事実なんだ。なんていうか、その笑顔は本当の宝石で――。
「うん知ってます、見てた……、可愛かった……。人生で最高に可愛かったんだ……――」
戸北 壮太、その幸せそうな背中をマイチが見送った。
「これでイーブンかなぁ~……、 うーん。丸っともうちょっと、ううん、もうかなりデリカシーとを持って欲しいかなぁって………」
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