第二章 学校生活編+魔法操作薬編

第二十二話 優先するのは面白さ

「ふあぁぁ…」


 昨日はあまり寝れなくて、教室の中で欠伸をする。昨日の配信を見返して、「同接すげぇぇ!!」ってなっていたからだ。


 まだホームルームも始まっていない朝の日差しを窓から受ける事で、ギリギリ起きる事を保っている。


「ちょっとひかり、欠伸してる所悪いんだけど…」


「ん?どうかした?」


 今教室に入ってきた友達から話しかけられ、ぐでーっとした体制で話を聞く。この人が持ってくる話は大抵噂話なので、あまり真に受けて話を聞いたりしてはいけない。


「…今思ったけど、光の配信めっちゃ伸びてたし、昨日の例の配信にも出てたのに、誰にも話しかけられないのなんかおかしいよね」


「殺人ピエロの仮面つけてたからバレなかった」


 引き出しの中から仮面を取り出して見せると、滅茶苦茶引かれた、何故だろう。


「ま、まぁ一旦触れないで行こうかな、でさ、本題なんだけど…3組の丸崎童君って…昨日の配信の人だよね?」


「…は?」


 えっ、あっ…え?…と言った風の、心からの困惑顔を出してしまう、彼女の言った言葉を反芻しても受け入れきれず吐き出してしまうほどだ。


 反芻ってなんだよ気持ち悪いな、何口の中に戻してんだよ最初からよく噛んで食えや、お前だぞ牛。


 口の中で変なツッコミをしてしまった、どんだけ錯乱してるんだ私…


「えっ、知らない?」


「知らない知らない、知らな過ぎて知らない」


 発言から知性が見られなくなってきた、いよいよ錯乱が本格化してきたな。


 自分をここまで客観的に見れるんだったらマトモに話してくれ私。


「不登校の丸崎童君、こんなのもう確定じゃん!絶対そうだって、まさかあの有名人が同じ学校とはー!」


「一夜にしてのだけどね」


 まさか丸崎君がこの学校の生徒だったなんて…高校不登校中としか教えてくれなかったのに…マジか。


「…ん?待てよ、という事は」


「どうしたの!?やっぱ何かあるってこと!?」


 まず私が全力で丸崎君を学校に登校させるとしよう、そしたら丸崎君は勿論ダンジョンを知る者にとっては大の有名人な訳だから…


「めっちゃ面白いことになりそうじゃん…」


          ◇◆◇


 …どんだけ寝てただろう、疲労感がぐっと押し寄せてきて、意識を失って…それから完全に寝てたわけだが。


 今は何時だ…?17時…帰ったのが7時くらいだったから…ほぼ丸一日寝てたのか。


 なら今にでも潜らないと、ダンジョンに潜る時間がなくなってしまう、ご飯を食べたらすぐに出発しよう。


「飯は…あー、カップ麺でいいや」


 台所をあさり、カップ麺を見つけたのですぐお湯を用意する。最高火力で沸かしたのですぐに沸騰した。


 カップ麺にお湯を入れ、3分間待つ間にダンジョンに行くための身支度を…


『ピンポーン♪』


 何故だろう、すごく嫌な予感がする。またSAMURAIが押し掛けてきたのだろうか。だとすると最悪だぞ…よし、無視しよう。


 俺がダンジョンで着る服は『ピンポーン♪』ダンジョンによっ『ピンポーン♪』る事が多いの『ピンポーン♪』迷彩服を着るだ『ピンポーン♪』では逆『ピンポーン』に耐える『ピンポーン♪』為『ピンポーン♪』『ピンポーン♪』『ピンポーン♪』『ピンポーン♪』


「なんじゃうるせぇな!!」


 耐えきれずに扉を勢いよく開ける。目の前にはエルが立っていた。


「やっほー丸崎君、家、SAMURAIちゃんから聞いたよー」


 後で全員火炙りにしてやる。普通に迷惑行為だろ勘弁してほしい、警察に突き出すことだって出来るんだからバカヤロー共。


「何の用だよエル、またダンジョンに潜ろーって話?俺これからそのダンジョンに潜る予定だったんだけど、勿論ソロで」


「いやいや違う違う、別の話だよー」


 エルが、ニコニコと胡散臭い笑みで語る。嫌な予感しかしない。さっきも嫌な予感してたのに…俺の予感嫌しか察知できねぇのかクソ。


「…別の話って?」


「丸崎君学校行きなよ!」


「急な学校!?なんで?え?」


 何故急に学校の話になったんだ、今まで俺たちの関係って攻略者とか配信とかで繋がってたじゃん、学校生活持ち出してくんなよ。


「知らないと思うんだけどー、私と丸崎君って同じ学校なんだよね」


「そうだったのか…だから?確かクラスは違うはずだろう、見た事なかったし」


 俺は先日のS級ドラゴンの件で初めてエルの存在を知ったし、顔を見たのもだ。確かに俺は他人に無関心がちだが…


「クラスは違えど学年は同じ、絶対学校来たらおもしろ…じゃなかった、楽しいと思うけどなぁ」


「面白って言おうとしたよな?あわよくば俺を笑いものにするつもりじゃないか?」


 この野郎、面白そうだからって理由で学校まで行けって誘ってきたのか…態々家聞いてピンポン連打して。


「いやいや、そんなつもりはないけどさ、丸崎君程の有名人が学校に来ないなんて勿体ないよ」


「いやいや、今回ばかりは俺に利がない、ギルドの提案とか配信の提案はまだ俺にもメリットがあったけど、今回に関しては本当に何もねーだろ」


 そうだ、俺にとっては何も面白くない、俺にとっては時間を食うだけだ、その間ダンジョンに潜ってたほうが何杯もメリットがある。


「じゃあなんで高校入ったの?中卒で良くない?」


「親に入れって言われて…」


「じゃあ学校行きなよ、親もどういう神経してるんだか」


 これに関しては正論なので何も言えない。実際問題親には結構電話越しで怒られている。


「いや、まぁ、それはそうだけど…俺今まで学校通ってなかったから気まずいんだよね…」


「いや大丈夫だって!丸崎君面白いし、ちゃんと人とも話せるじゃん、ちょっと厨二病だけど…あっ!高校生活体験してないから中二のまま抜け出せてないのか!ごめんごめん」


「普通の会話にしっかり棘入れ込んでくるのなんなんだ?喧嘩するか?」


 結構グサグサ刺してくるので心が痛い。結構遠慮ない超えて普通に刺してくるから多分エルは人としての思いやりがないのだろう、刺したくて刺してるよなコイツ、人間性の問題じゃないか?なんかもっとドス黒い何かを感じる、ナチュラルに人を煽る事を楽しんでいるように感じてるので、多分天性のものだろう。


「あーごめんごめんつい本心が…」


「ついでそのクソ本心出してくるのやめてくれないか?せめて自制しろよ」


「あははー、冗談冗談!」


 てへぺろーと、全く反省してない謝罪を受ける。やっぱり性格残念なんだ…コイツ。


「ね、ほらほら学校行こうよ引きこもり君!」


「引きこもりではねーよ、不登校不真面目なだけだろ」


 自分で言うのもなんだが。


 扉を閉めようとすると、間に足を挟んで妨害された。悪徳セールスマンかよ。


「ねー!お願いだよ絶対面白いことになるって、そしてすぐ学校中で名が広がり、それによって配信で関連してる私も学校の有名人になれる!」


「結局そこじゃねーか!なんだよ、俺には承認欲求とかないんだよ」


「そう?私は承認欲求の塊だからその考えよくわかんないや、はは」


 承認欲求の塊なのはどうぞだよ、別にいいけど、それに俺を巻き込むな。


「ねー!お願いだよー!認めないとSAMURAIちゃんと協力して迷惑行為しまくるよ?」


「SNSで拡散して炎上させてやろうか」


 結構発言がヤバイ奴である、イカれてらぁ。


 とはいえ確かにSAMURAIもエルも普通にこういう事してきそう、昨晩は現にされたし、今も言いようによってはそうだ。


「私さ!学校に友達が多いと嬉しいんだよね!お願い!来てー!」


「…ま、まあ、そこまで言われたら仕方ないな、いいよ、分かった通ってやる」


 ここまで言われたら流石の俺でも引くしかない。まぁ、楽しくなかったらまた登校やめるだけだ。


「チョロ!マジ?いよっしゃー!いじりまくるぞー!」


「引っ叩くぞ」


 この時…俺は気づいていなかった…


 カップラーメンを放置していた事に…

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