第四話 最高の展開ニキ

〈逃げて!〉

〈にげろエル〉

〈気づかれてない?逃げて!〉

〈逃げ逃げ逃げ逃げ〉


 うるさいな!生憎こちとら腰が抜けて立てないんだけど!!なんでこんな所にS級のドラゴンが…いや、ダンジョンに「なんで」は禁句だったっけ。


「た、立てない…腰がぬっ、抜けちゃった…」


〈アカーン!!〉

〈そりゃ間近でこんなの見たらな…〉

〈絶望的すぎる…〉

〈他に攻略者いないの!?〉

〈この状況で腰抜けたとかヤバい〉

〈死んだな〉


 あっ同接めっちゃ増えてる…じゃない!こんな時にそんな事考えてる暇ある!?立て!立て私の足!…いや、このコメント…


 〈気づかれてなさそう?逆に動かなくて良いかも〉確かに、このまま息を潜めて岩陰に隠れてれば、やり過ごせるかも…


「ちょ、ちょっと…コメントでも出てるように…息を潜めたいと思います…」


〈賢い〉

〈実戦だと隠れるのも大事?〉

〈確かに気づかれてないっぽい〉

〈良かった〉

〈ドラゴンもどっか行きそうだよ!〉

〈ホッとした…〉


「もしかしたら…早い段階でこのドラゴン見つけられて良かったかもしれない…?大手ギルドとかが討伐隊派遣してくれるだろうし…」


〈確かに!エルちゃんナイス!〉

〈MVP!〉

〈まって、なんかドラゴンの前に別の攻略者いる〉

〈なんか攻略者っぽい人いるけど!?〉

〈ソロっぽい〉

〈見た感じ高校生?大人には見えん〉

〈配信やってないっぽいし、ヤバそうだね〉


 コメントを見て、えっ!?とドラゴンの方を向く、落ち着いて深呼吸をしたら、焦りとかも収まってきて、足も動くようになった。


 確かに人がいる、しかも私と同じソロだ。


 ソロでS級モンスターを相手に出来るなんて、S級攻略者しかいない。それに、S級でもソロでS級モンスター討伐なんて事はできない。S級がこんなダンジョンの下層に来てるはずないし、確かにヤバい状況だ。


〈かっけぇwww〉

〈ドラゴンと対面してその言葉出るか?〉

〈確かにかっこいいけど〉

〈武器は二丁拳銃?珍しい〉

〈A級S級で二丁拳銃持ちとか見たことない〉

〈死んだな〉

〈お も し ろ く な っ て き ま し た〉


「助けられそうにない…ど、どうすれば…」


 近くで見ていても、とてもS級に勝てそうには見えないし、確かにこんな人みたことがない。恐らく私と同じB級だろう。なのに何故、こんなに堂々ドラゴンの前に立てる・・・・・・・・・・・・・・・・


〈エルちゃんは逃げたほうが良い〉

〈この隙に逃げて〉

〈「まさかここまで最高の展開になるとはな」←?〉

〈現実逃避で頭イカれたか…〉

〈最悪の展開の間違いでは?〉

〈まさか勝てるのか?最高の展開ニキ〉

〈まさか厨二病患者ではあるまいな、最高の展開ニキ〉


 確かにここは絶対逃げたほうが良い、ただ…私の中の予感が、ここは離れないほうが良いとも言っている。


 最高の展開ニキって何?


「あっつ!ここまで距離あっても熱気が…」


〈ドラゴンブレスキター!!!!〉

〈あつそう〉

〈最高の展開ニキ死んだか〉

〈最高の展開ニキー!!!〉

〈いや、回避してる〉

〈すげぇ、最高の展開ニキやるやん〉

〈最高の展開ニキ、まさかやれるのか?〉


 二丁拳銃の男が岩陰に身を隠し、それに対してドラゴンは火球を乱射してくる、こっちにも飛んできたのですかさず回避。


 最高の展開ニキってなんだよ。


「あっぶない…」


〈最高の展開ニキの魔力弾、ノーダメージ〉

〈マジ?あの鱗魔力阻害か?〉

〈魔力弾で突破できる?詰んだ?〉

〈魔力阻害の鱗とかS級の中でも大分ヤバいな〉

〈討伐部隊来る前にその情報あって良かった〉

〈最高の展開ニキ、骨は拾ってやる、エルちゃんが〉

〈最高の展開ニキ耐えてるなー〉


 凄い、戦い方が上手い、ここまで上手かったら、戦うより逃げたほうが良いんじゃないか?何故逃げない?自分の力に自信があるから?相手の強さも分からないくらい頭が悪いの?


 だから最高の展開ニキって何?骨拾わねーよ?


「跳弾!?」


〈跳弾か!〉

〈跳弾ってマジで難しいから使えるのすげぇ〉

〈最高の展開ニキ、跳弾使いか〉

〈でも跳弾出来るとはいえ魔力阻害されたら意味なくね?〉

〈ぴょんぴょん跳ねて気に障るくらいしか無いでしょ〉

〈最高の展開ニキ、跳弾の使い方上手いね〉

〈勝てそうじゃね?完全に翻弄してる〉

〈勝てるわけねーだろ〉


 跳弾は死ぬ程扱いが難しいで有名だ、ここまで使いこなせるなんて、まさか私が知らないだけでA級以上のランクなの?


 そろそろ最高の展開ニキでゲシュタルト崩壊しそう。


「えっ!?」


〈最高の展開ニキすげぇぇ!!!!〉

〈ドラゴンの右目潰した!?〉

〈つえええええええええ!!!!!〉

〈なんでこの人無名なん?〉

〈かっ…けぇぇぇぇ!!!!〉

〈最高の展開ニキ、強すぎる〉

〈S級相手にここまで立ち回れるとかA級以上だろ〉


 跳弾をうまく使ってドラゴンの右目を潰した…!A級でもS級相手には10人以上で戦って死人が出る程なのに…1人でここまで!?もう最高の展開ニキには触れずにいこう


〈ただ大ダメージ食らったか〉

〈流石に右目潰せただけでめっちゃすげぇよ〉

〈うわぁ…流石にヤバいか〉

〈俺は信じてるぞ最高の展開ニキ!!〉

〈…ん?〉

〈www〉

〈最高の展開ニキ、壊れる〉

〈急に厨二病になるなwww〉

〈最高の展開ニキwww〉

〈最高最高うるせーなw〉

〈最高すぎるwww〉

〈最高の展開ニキ、語彙が最高しか無いのか?〉

〈イカれちまったんだ、ヤツは…〉


「だから最高の展開ニキってなんだよ!」


 配信で見ている分には笑えるのかもしれないが、生で見ていると狂気じみたまでの笑顔と笑い声が脳に響いて、凄い怖い。あと思ってたこと口に出しちゃった…恥ずかしい…


 同接数の数がグングン伸びていく、コメントの勢いが加速する。


〈ヒャッハーwww〉

〈やっぱり語彙最高しか無い〉

〈高校生っぽいし、語彙が終わってるんだろうね〉

〈こんなんでも実力エグいよな〉

〈なんか勝てそうじゃね?〉

〈最高の展開ニキ、ヒャッハー系か〉

〈立ち回りクソウメェ…!〉

〈参考にな…な…ならねぇな戦い方が!〉

〈あんなダメージ食らってよくこんな動けるよな〉

〈ドラゴンの上にまた乗った!〉

〈これならもう片目潰せる!〉


 この人何者なんだ!?S級!?なんでこんなダンジョンにいるの!?魔力弾が効かない相手に…真っ向からこんな…!


 コメントを見ると、もはや目で追えないほどの速度でコメントが書かれていく。同接数も爆増だ。


〈額殴り始めた!〉

〈鱗に物理でヒビ入れるのか!〉

〈ドラゴンめっちゃ頭振ってるのに落ちねぇ!〉

〈つええええええええええ!!!!!〉

〈なんだコイツ、最強か?〉

〈いっけぇぇぇぇぇ!!!!〉

〈パキっていった!!〉

〈もう撃つのか!?〉

〈鱗にヒビ入った!!〉

〈ドラゴン全然振り払えてねぇ!〉

〈鱗割れた!!!〉

〈いけいけいけいけ!!!〉

〈ドラゴンうっせwww勝てるぞこれ!!!〉


 まさか…まさかS級のモンスターに、ソロで勝つのか、この人は!!


 コメントの勢いが凄い、もう完全に目では追えないほどだ。もう私の画面ではコメントが固まっている。


〈倒れた!!!!〉

〈倒した!?〉

〈ソロでS級討伐!!??〉

〈世界初じゃね!?〉

〈すげぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!〉

〈つえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!〉

〈ヤバすぎる〉

〈魔石でっか!!!〉

〈やべぇ、つぇぇ〉

〈倒れた?〉

〈あのダメージで動きまくったからか…〉

〈うわまじでやばい、興奮止まらん〉

〈ヒャッハー!!〉

 ・

 ・

 ・

まさかここまで最高の展開になるとはな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る