FPSオタクな私、異世界転生して魔法学園生活スタートしたけど魔法使えません!? −限界具現化(ゲンカイ・マテリアライズ)チートで乗り切ります!−

ちぇ!

異世界転生――赤ん坊になったオタク、まさかのスタート

信号が青に変わった。


横断歩道の前を歩いてた中学生の男の子が、めちゃくちゃスマホ見ながらふらふらしてて、「危なっ」って思ったその時――


 


鋭いクラクション。

まぶしい光。

身体にガツンとくる衝撃――


 


……目が覚めたら、天井一面に繊細な模様。高級そうなシャンデリアが目に入った。


そして、すぐ横に“でっかい顔”。


しかも、ふくよかな体格の紳士(※たぶん父)が超至近距離で覗き込んでいる。

その隣には、モデルみたいな美人の女性(※たぶん母)が微笑んでいる。


 


(え、誰!?

 ていうか、え?これ……ガチの異世界転生??)


 


混乱してるうちに気づく。

自分の手足、まったく動かない。

声も出せない。


 


なのに頭の中はめちゃくちゃクリアで、前世の記憶(女子高生オタク・現実逃避歴=年齢)もなぜか全部残ってる。


 


(……いや、これ私、もしかして赤ちゃん??)


 


あまりの状況に、逆に笑えてくる。

しかも、目の前の大人たちはやたら優しい笑顔で「クロノ、クロノ」と呼んでいる。


(クロノ……え、名前!? 私、クロノ!?)


 


高級なレースのカーテン越しに、庭園の花が見える。

自分はどうやらフカフカのベビーベッドに寝かされているらしい。

使用人っぽいお姉さんがミルクを用意している。


 


リアル人生リセットどころか、いきなり“ゼロ歳児”から再スタートとか――

さすがに想定外すぎる。


 


(チートスキルとか……あるの? なかったらこの先生きのこれる気がしない)


 


この新しい人生が「なろう」テンプレみたいな無双モードになるかは、まだ誰にもわからない。

一応、FPSやミリタリー知識だけはやたらあるけど……

いや、赤ちゃんじゃマジで何もできんわ!


 



 


ある日、母親が膝に乗せて、優しい声で絵本を読んでくれる。


「むかしむかし、“雷の勇者”が世界を救ったそうよ――」


 


中身はまさにファンタジーの王道。

勇者、魔王、魔法、剣、


 


(……え? 本当にこういう世界なの? いや、むしろ疑うやろ)


 


今はまだ、能力も世界の仕組みもわからず、

当然「魔法」なんて本当にあるのかも分からない。


 


それに今のところ、自分が“特別”って実感はゼロ。

ただ、たまに「クロノ」って呼ばれるたび、

(……リスタート、ってやつだなぁ)としみじみ感じるだけ。


 


でもすぐにわかった事が一つだけ……


二回目の人生は“女の子”確定。


……うん、わりと悪くないかも。


 



 


数ヶ月が経過。

やっと世界の空気が読めてきた。

大理石の廊下や書斎の本棚、掃除をする使用人――

少しずつ「貴族の家」の空気にも慣れてきた。


言葉もだんだん分かるようになり、

廊下で交わされる大人たちの会話も耳に入る。


 


分かったのは、

ここでは“魔法”が本当に存在するってこと。

……ただし、貴族とか選ばれし人だけの話らしい。


 


(うわー、こっちも“生まれガチャ”か……)


 


窓の外では、石畳の中庭を洗濯などをして忙しそうに駆け回る使用人、通りには商人の屋台やおしゃれな馬車が行き交う。聖堂院リュミエールの白い尖塔や、賑やかな市場の喧騒も遠くから聞こえてくる。




(こっちはこっちで“活気ある中世の街”って感じだな……)

 

 


両親は仲良しで、たまにも喧嘩もするけど、(お母さんが一方的)祖父母もいて、なんかにぎやかな家っぽい。


 


私も魔法が使えるかどうか、まださっぱり不明。

使えたら教会の学校に通う決まりもあるらしい。

一応“貴族の娘”枠だけど、油断はできない。


 


前世の私は――

・推し活に命を懸けたアイドルオタク

 ↓

・FPS沼にどっぷり(夜中に軍事系掲示板を巡回する日々)

 ↓

・リアルでは友達ほぼゼロ、ネットと二次元に逃げて生きてきた引きこもり気質女子


 


(……今世こそは、友達作れるかな……)


 


“友達100人”作るって、小学生みたいな誓いをベビーベッドで固めてみたり。

悪徳貴族の令嬢じゃないだけ、今世はかなりマシ。

って自分を励ましてみたり。

 


でも本音は――

推しとアニメと戦争ゲームの武器や戦術のことを考えてる時間が、いちばん落ち着くんだよね。


 


とりあえず今日も、心の中で

(リアルに人生リセットされて草)

とか呟きながら、

私はおとなしくミルクを飲んでいる。


 


――ここからが、私の“本当の冒険”の始まり。たぶん。

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