白竜様の最愛 呪いをといたら別れる契約なのに寵愛されています
青月花
序
「人間というのは
意味がわからなかった。言われた言葉も、置かれている状況も。自分は
期限付きとはいえ、自分なんかを花嫁にしようだなんて。この赤い目を見て、そんなことを言う男性がいるとは思わなかった。自分は『
家族でさえ
暴力や暴言を浴びせられないだけ家畜や使用人の方がずっとまし。そう思うほど悲惨な人生を送ってきた。
「夫婦になるということは、一緒に暮らすのですよね? この
思わず確認してしまう。
緋夏が
「全く思わん。
「いいえ。とても綺麗だと思いました。まるで月の神様みたいに」
緋夏はつい思ったままの印象を口にした。
腰もとまで流れる白銀の長髪は
長身で細身の体に、銀糸の
顔立ちも
もし月に神様がいるとしたら、かくやという印象――。いや、彼は白竜。竜の神様だ。
他の神様にたとえるなんて、失礼なことを言ってしまったかもしれない。
決まりが悪くなって
「ならば、こだわらなくてもいいだろう。もっと軽く考えればいい。これは契約だ。一生というわけではない。俺の呪いがとけたら自由にすればいいし、一人でも生活できるように手助けくらいはしてやろう。だから、生きろ」
白竜の言葉が胸に重く響き、緋夏は
生きることを望まれたのは初めてだった。
忌み子は周りの人間を不幸にする。だから家族にも死を望まれていたのに。彼は誰もが
こんなふうに言ってくれる男性を、自分のせいで不幸にしてはいけない。
「でも、万が一私と一緒にいることであなた様が不幸になったら――」
「忌み子の伝承のことか? あんなもの人間どもが勝手に決めつけた迷信にすぎん。俺はくだらん作り話など信じない。呪いをとくためにはお前が必要なのだ。だから俺の花嫁になってはくれんか?」
白竜は緋夏の言葉を
どうして彼はずっと欲しかった言葉ばかり与えてくれるのだろう。初めて会ったはずなのに。
本当は幸せになりたかった。ずっと必要とされたかった。誰かを不幸にではなく、幸せにしたかった。
忌み子の伝承を知りながら、こんなに自分を求めてくれる。
彼のことなら幸せにしてあげられるかもしれない。
「わかりました。あなた様の花嫁になります」
緋夏は胸に手を当てて決然と宣言する。
彼に愛され自分も愛するように努力すれば、きっといつかは呪いがとけるはず。
二人とも幸せになれると信じて、期間限定の契約結婚を受け入れたのだった。
愛を知れば離れがたくなることなど知らずに。
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