神様の選択

阿羅田しい

序夜 どちらにしようかな

 どちらにしようかな。


 こう暑くては判断が鈍る。嫌われるほうが必ずしも悪者とはかぎらないし。

 嫌いな理由なんてつまらないもの。自分より容姿がいい、みんなに好かれている、好きな異性と仲が良い。そんな些細なことだらけ。


 たぶん相性。この世には、生まれたときから相容れない相手が存在する。どうしようもない。


 なるべく彼らが出会わないように配慮はしているつもりだ。あまり上手くいかないが。だからまかり間違って出会うようなことがあれば、速やかに引き離す。転勤や家庭の事情等、不可抗力によって。ときには病気、事故なんかもね。


 さて、どちらにしようかな。

 今回は熱中症ということにしておくか。ちょっと安易だけど、この時代だもの、きっと誰も疑わない。


 さぁ、どちらにしようかな。

 やはり彼女か。私でも好き嫌いはある。普段から慕ってくれる子に肩入れしたくなる気持ち、誰しもあるだろう?


 私はね、これまでずっと彼女に都合のいい環境を整えてきた。彼女が嫌悪する人間はすべて排除してきたのさ。だって彼女がそう願ったから。

 今回も周りの人間にひどく傷つけられ、悩み苦しんで、私に救いを求めてきたんだ。放ってなんかおけないよ。早いとこ引き離してあげなくちゃ。


 よし、決めた。今回も彼女のために働くこととしよう。可愛い可愛い彼女のために。




 歩道橋を見下ろす。ぎらぎら燃える太陽が、永遠に目覚めることのない彼女を容赦なく照りつけている。

 私は横を向き、微笑んだ。隣に座る彼女の瞳には、二人の若い男が映っていた。


 次はどちらにしようかな。

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