神様の選択
阿羅田しい
序夜 どちらにしようかな
どちらにしようかな。
こう暑くては判断が鈍る。嫌われるほうが必ずしも悪者とはかぎらないし。
嫌いな理由なんてつまらないもの。自分より容姿がいい、みんなに好かれている、好きな異性と仲が良い。そんな些細なことだらけ。
たぶん相性。この世には、生まれたときから相容れない相手が存在する。どうしようもない。
なるべく彼らが出会わないように配慮はしているつもりだ。あまり上手くいかないが。だからまかり間違って出会うようなことがあれば、速やかに引き離す。転勤や家庭の事情等、不可抗力によって。ときには病気、事故なんかもね。
さて、どちらにしようかな。
今回は熱中症ということにしておくか。ちょっと安易だけど、この時代だもの、きっと誰も疑わない。
さぁ、どちらにしようかな。
やはり彼女か。私でも好き嫌いはある。普段から慕ってくれる子に肩入れしたくなる気持ち、誰しもあるだろう?
私はね、これまでずっと彼女に都合のいい環境を整えてきた。彼女が嫌悪する人間はすべて排除してきたのさ。だって彼女がそう願ったから。
今回も周りの人間にひどく傷つけられ、悩み苦しんで、私に救いを求めてきたんだ。放ってなんかおけないよ。早いとこ引き離してあげなくちゃ。
よし、決めた。今回も彼女のために働くこととしよう。可愛い可愛い彼女のために。
歩道橋を見下ろす。ぎらぎら燃える太陽が、永遠に目覚めることのない彼女を容赦なく照りつけている。
私は横を向き、微笑んだ。隣に座る彼女の瞳には、二人の若い男が映っていた。
次はどちらにしようかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます