異世界への招待状 おじさんはそれなりにがんばる

りのぺろ

第一章 森脱出

第01話 紙?神?からの誘い?

俺はどこにでもいる会社員だ。結婚もしていて、嫁も子どももいる。子どもはちなみに2人とも男の子だ。


いつものように6時に起床し7時前には家を出る。当然だが家族みんなはまだ寝ている時間だ。


車通勤なのだが、これが良いもので、その時間は唯一の一人の時間となる。


いつも楽しみにしている異世界アニメを鑑賞するのが日課だ。スマホを手に取りサブスク契約をしているアプリを開き、車のデッキにつなぐ。最近はいろいろな異世界系アニメが増えてきているので尽きることはない。大体会社まで30分かかるので1話が終わる頃には会社に到着するのだ。


そして見終わった後は出社、そのまま仕事をこなす。この会社は繁忙期以外は定時帰宅なので長年努めている。当然帰りの車内ではアニメの続きを見る。途中コンビニによったりして帰宅。そんなルーティーンだった。


今日もいつものように帰り際、少し時間があったのでコンビニに立ち寄り、コーヒーを買って車で一息ついていた。


「異世界にもし行けたら、もし魔法があったら、俺だったら何をするのかな」


ふとそんな思いがよぎる。決してそんな世界がないとは思わなかった。


そんな毎日同じ様な生活を2年繰り返していると……


「観るもんがない……」


俺の車の中での幸せな時間が……。異世界アニメ以外の他のジャンルのアニメは観ようとは思わない。というか、ちょこちょこ違うジャンルのアニメを観てみたのだが、面白いと感じなかったからだ。


「とりあえず、音楽動画でも流して会社行こう……」


そして会社に到着したが、どうにもやる気が出ない。異世界ロスだ。


「まさか自分が◯◯ロスの仲間入りするとは思わなかった……」


そんな状態のまま定時時間になり、帰りにコンビニに寄り、コーヒーを買い、車に戻る。


「はぁ……何回も同じアニメを観てもなぁ」


スマホを見ながら、新着異世界アニメを探すがやはりない。すると、車のフロントガラスに一枚の紙が落ちてきた。


「なんだ? 紙? チラシ? か?」


車を降りて周りを見渡すも人影はなく、どこからこの紙が落ちたのかわからなかった。


とりあえず紙を取り、車に戻る。


「どっから飛んできたんだ?」


その紙? の内容を見てみると


――――――――――――――――――――――――――

剣と魔法の中世の異世界へ行ってみませんか?

ご招待します。

気になる方はこちらへ TEL:*** ****-****

――――――――――――――――――――――――――


「……えぇえええええ!!!!」


マ、マジか! いや、怪しすぎる! でも、気になる。とりあえず続きを読もう。


――――――――――――――――――――――――――

異世界へ行ってる間はこっちの時間は止まります。

( ゜∀゜)o彡°☆安心安全です☆( ゜∀゜)o彡°

とりあえず気になる方はこちらへ TEL:*** ****-****

――――――――――――――――――――――――――


「いや……顔文字やめい。それと電話番号を何回ものせるんじゃねえ!」


おっと、ツッコんでしまった。肝心なとこはそこじゃなかった。

時間が止まる? という事は異世界に行っても支障ないのか? うーむ。わからん。

そもそも自分自身の体内時間は進むわけだろ?

村木(むらき)京介(きょうすけ)43歳。異世界から帰ってきたらおじいちゃん! なんて嫌だぞ。笑って済む話じゃないな。


「とりあえず、そこんとこ電話で聞いてみるのもありか?」


電話してみよう。聞くだけなら無料だし。


「はいはーい☆」


えらい若い女性の声だ。


「あ、あの、異世界招待? のチラシを見て電話をしたんですが…」


「あ、やってくれますかー? ありがとうございまーす☆」


「えーっと。その前にこの内容で気になる事があるんですが、自分自身は戻った時? とかどうなるんですか? そもそも帰ってこれるんですかね?」


ここは気になる点だ。そもそもいくら時間が止まったままとはいえ、戻って来られなければ意味がない。


「帰ってこれますよー。まだ試験的に運用しているだけなんですー。ちょっとしたクエスト? 的な事をしてもらうかもしれませんがー」


「それはいつでも帰ってこれるんですかね? それと異世界から帰ったらおじいちゃんになっちゃってたりします?」


「いつでもってわけじゃないですねー。とりあえず異世界にずっと閉じこもったままとかじゃありませんー。どうしても帰りたい時は伝えてもらえればいいかとー。当然今の状態のまま帰ってこれるようにはしますよー」


ふむ。つまりは異世界に行っても歳は取らないし若返りもしない。時は止まったまま。

ディ◯か! お前はディ◯的な何かなのか!

いかんいかん。それはいいとして、これは至れり尽くせりな内容だな。

歳も取らず異世界で別の人生を歩む。セカンドライフ的な事だろうか。


「なるほど。異世界に行きたい場合はどうしたら良いんでしょうか?」


「電話で行きまーす☆ 的に言ってもらえれば、とりあえずそのまま行けますよー」


おぉ。いつでも異世界へ行けるのか。あ、その前にあれもきいておこう。


「わかりました。最後にもう一つ。まだ募集していますか?」


「してまーす。この紙はあなたにしか配ってませんのでー」


こ、これは行くべきでは。しかも時間経過なしで帰還できるんだから誰にも迷惑かからないし。


「じゃ、じゃぁ異世界に行きます!」


「了解でーす。それでは1名様ご案内~☆」


その言い方……なんか違う気がする。が、まぁいいか。思う存分異世界を楽しんでやろうではないか。


「では行ってらっしゃーい☆」


「え! 今から!? なうなの!? ま、いっか。って!!!」


どうやって元の世界に帰るって伝えればいいんだ? どうやって魔法って使うんだ? やばい!大事な事を一切聞いてなかった! そもそもスキルってあるのか?


「ちょ、ちょっと待って、どう……って……え……で……か」


「え?なにー?わかんなーい☆ あー!ステータス見たい時はステータスオープンって言ってねー☆ 後、なにかと不便かもしれないから異世界先のあなたの歳は若返らせてあげとくねー☆」


「え? ちょ……! …… …… ……」


そして俺は意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る