day16.にわか雨
花屋を閉めていたら、急なにわか雨に降られた。今日は夫と息子が剪定の仕事に出ていたけれど、もう帰ってきている。バイトの葵ちゃんは、一時間ほど前に義父が送っていった。
まあいいかと思って、ゆっくり片づけて帰ると、息子とその友達の瑞希くんが二人で飲んでいた。
「おばさん、お邪魔してます!母から惣菜のお裾分けを持ってきたんで泊まらせてください」
「ありがとう、もちろんいいわよ。藤乃、お父さんはどうしたの?」
「風呂入ってる。晩ごはんは台所にあるよ。惣菜は冷蔵庫に入れといた」
「わかったわ。……あなたたち、本当にお父さんたちにそっくりね」
つい漏らすと、二人はそろって顔をしかめた。
「それ、俺も親父に似てるってことですか?」
瑞希くんが嫌そうに言う。
「ええ。瑞希くん、顔はお母さん似だけど、藤乃と飲んでる姿はお父さんそっくりなのよ。藤乃もね……」
「親父、酒入るとうるさいんだけど、あれに似てるのか……やだな……」
口を尖らせながら、瑞希くんはビールを一気にあおる。藤乃も同じように飲みながら、話し込んでいた。
一番似ているのは、二人の仲の良さ。でも、それは言わずにおいた。スマホで写真を撮って由紀さんに送ると、「ふたりとも父親そっくりね」と返信がきた。
台所で晩ごはんを確認していると、夫が風呂から出てきた。
「桐子さん、おかえり。今日もすごく可愛い。お風呂、温め直してあるから入ってきな」
「……ありがとう」
夫とは高校で知り合った。初対面のときから、ずっとこんな調子だった。藤乃も付き合っている彼女を、付き合う前から、まるで同じ調子で口説いていたのを私は見ている。
風呂から上がると、雨はすっかり上がっていて、夫は息子たちと一緒に飲んでいた。
台所では義父が晩酌中で、よく見ると、スマホで義母とビデオ通話をつなぎながら飲んでいた。
さて、私はどうしよう。
迷う間もなく、夫が笑顔で私を呼んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます