第4話 人形と実娘

翌日の朝二人は、いつものように朝を迎え、朝食を取り、魔術工房での仕事を終えた。 

昼食後にアリシアがフィリアに命じる。

アリシア「今日は図書館に行きたい、過去にあった、ホムンクルスの事件と魔物がおこした事件に関する調書を一緒に集めて欲しい。」


フィリア「何故マスターも一緒に来るのです?そのような仕事私に全て任せてくださればいいのに」


フィリアは疑問を持ってアリシアに伝える。


アリシア「ま〜いつもならな。

ただ、今回は書物の量が尋常じゃないくらい多いんだ。

それとお前が変な輩に絡まれないようにしないといけないし、今回行く場所はお前だけでは入れないからな。」


アリシアは若干楽しそうに言う。

ホムンクルスとはいえ、人と一緒にいたいのだろう。


フィリア「かしこまりました。

ただ、マスターを守るのは私の仕事ですよ」


フィリアは笑いながら答える。


アリシア「あ〜そうだったな。では、準備して行くか」


アリシアは娘を見守る母のように笑う。


二人は外出する準備を整え


図書館へ向かう。


図書館に到着した二人、そこは宮殿のように美しい、外観をしており、入ると無機質な瞳をした、ホムンクルスが受付をしており、二人を中へ通す。


美しく整えられた木の机、壁全面にはびっしりと本が詰まっており、天井には美しい、シャンデリアが飾られている。


館内はインクの匂い、革装丁の香りで溢れており、二人は上級魔術師達の静かな視線を浴びていた。


ここは国の魔術師の中でも上級魔術師しか入れない「賢者の書庫」膨大な知識とそれを応用できるものしか立ち入ることが許されない場所である。


二人は、図書館でホムンクルスの暴走、魔力暴走、魔物に関する書物を集めた。


アリシアが椅子に座り軽く本を読んでいる


アリシア「黒き情念…… 魂が魔力に与える影響……」


アリシアは考え込むようにブツブツ呟く


アリシア「ふっ… 面白そうだ。」


アリシアが不敵に笑う


フィリア「マスター……?」


アリシア「あ〜〜すまん。そろそろ行くか。」


アリシアはふと我に返るように、本を持ち出す準備をする。


受付に申請を行い本を借りる準備を行う。


館に戻り、本を整理する作業を行う二人、


フィリアが呟くように話しかける。


フィリア「それにしてもすごい量の本ですね。」


アリシア「あ〜〜何を調べるにしても学ぶにしても知識は重要だからな。」


アリシアも呟くように答える。


フィリア「何故そんなに重要なのですか?」


ふと疑問をぶつける。


アリシア「お前からそんな疑問を投げがけられるとわな。」


アリシアが笑いながら答える。


フィリア「申し訳ございません。不快な思いをさせましたか?」


フィリアが気を使いながら伝える


アリシア「いや、違う。嬉しいんだよ。最近のお前は色々と質問してくれるし、一緒にいて楽しい。」


アリシアは子供に話しかけるように笑う


アリシア「知識が重要な理由は自分が悩んでいることや不安なことの解決策を先人達が、既に出しているからだ。

言わば知識を収集できる本は他者の経験が無料で手に入るようなものなんだよ。」


アリシアは子供に教えるように嬉々として、答える。


フィリア「勉強もお好きなんですか?」


教師に教えを請う生徒のようにフィリアは質問した。


アリシア「あ〜、昔は嫌いだったがな。勉強するとわかる。

世の中は勉強しないものから奪われるようにできていると、世の中の法律や政はたいてい知識を持つ賢い人間達が勉強をしない馬鹿な連中から富を巻き上げるようにできている。

評議会の爺共が良い例だ、講演会では治安を良くするだの、富の分配だの綺麗ごとばかり言ってるが、実際は自分たちの利益のことしか考えていない。

常識や法律とは基本的にそうできている。

フィリア、お前も常識とは何か疑って生きていけ」


アリシアは勉学の重要性をフィリアに伝えた。


フィリア「は…は〜」


フィリアは情報量が多く処理しきれていないようだった。


会話が終わったちょうどその時、来訪を告げる。魔力鈴が突然鳴った。


アリシア「一体誰だ… せっかくの楽しい一時を……」


作業を中断しアリシアは不機嫌に来訪者の対応しに行く


そこに立っていたのは、酒臭いボロボロのローブに、髪がボサボサで、目の下にはクマができているが、顔立ちはアリシアに似て、切れ長の美しい紫の瞳に美しい美貌を持った女が現れた。


アリシア「お前はカリーナ?!」


アリシアは驚きと困惑と失望をあらわにした。


彼女の名前はカリーナ・クレイン、アリシアの実の娘だ。


カリーナ「久しぶり、母さん」


カリーナ笑顔で軽快に母に話しかける。少し体が震え挙動不審だ。


アリシア「なんだ、お前か……」


アリシアは実の娘に不機嫌な顔を向ける。


アリシア「何の用だ?」


アリシアは実の娘と話してるとは思えない温度感で冷徹に質問する。


カリーナ「お金が必要なの、今仕事を探していてそれで……」


アリシアに対して媚びへつらうように伝える。


アリシア「先月金は渡しただろ。また酒に金を使ってるな……」


アリシアは呆れている様子だった。


カリーナ「ね〜お願い、少しだけでもいいの、今月だけきちんと仕事も探してるからさ。お願い」


カリーナはアリシアに金を無心していた。


アリシア「お前に金はやらん、次金を無心してきたら絶縁だ。」


アリシアはカリーナに冷徹な言葉を浴びせる。


カリーナ「なんですって!!

どうせ実の娘より、その人形と、家族ごっこしてるのが良いんでしょ!!」  


カリーナの視線がフィリアに向く


カリーナ「こんな人形!!!」


カリーナがフィリアを押し倒そうとした。


アリシア「やめろ!!!」


アリシアが杖を抜きカリーナに敵意と共にそれを向けた。


カリーナは実の母に杖向けられ唖然としていた。

カリーナ「何よ!!実の娘よりその人形の方が大事なのね!!

母さんはいつも魔術のことばかり、幼い頃も研究研究で、私のことなんて見ようともしない!!

喋るときもずっと魔術の勉強ばかり!!!

そんなんじゃ役に立たないとか、無能なままで終わりたいのかとか、そんな言葉ばっかり!!!

私のことを見て、遊んでくれたことが一度でもあった!!!???」


カリーナは激昂し今までの不満をぶちまける。


フィリアはただ黙って、二人のやり取りを見つめていた、何か胸に棘が刺さったような痛みが走った。


アリシア「これ以上近づくな。次はない」


アリシアは冷徹に告げる


カリーナ「どうせ、あなたが、人生で愛したものなんて、その人形と自分の魔術だけでしょ。

人のことなんて愛したこともないくせに……

私のことだって………」


カリーナは唇を噛みしめ、震える肩を隠すように背を向けると、崩れ落ちそうな足取りで書庫を去っていった。


カリーナが去った後、アリシアはわずかに拳を震わせた。

しかしすぐに無表情に戻り、フィリアを振り返る。


アリシア「見ろ、あれが欲に溺れ、自己研鑽を辞め、酒というドラッグに溺れたものの末路だ。

フィリア、よく覚えておけ」


アリシアは冷徹にフィリアに教えた。


その日は空気が悪いまま二人は眠りについた。

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