連中をアイスランドまで押し返せ

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 ──連中をアイスランドまで押し返せ



 コロンビア海軍大西洋艦隊に向けて突撃するオストライヒ海軍大洋艦隊。


 その旗艦であるミサイル戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの主砲が僚艦のカイザー・バルバロッサとともにゆっくりと旋回し、水平線の向こうにいるコロンビア海軍を照準する。


「主砲、射撃準備!」


「復唱、主砲、射撃準備!」


 艦内にブザーが鳴り響き、乗組員が艦内に退避する。そうしなければフリードリヒ・デア・グロッセの主砲の砲撃で生じる衝撃波は、外にいる人間を殺傷し得る威力だ。


「主砲、撃ち方始め!」


「復唱、主砲、撃ち方始め!」


 激しい砲声。臓腑を揺さぶるような衝撃波が艦内にすらも生じ、フリードリヒ・デア・グロッセとカイザー・バルバロッサの47口径51センチ連装砲が火を噴いた。


 その主砲弾はベテランの砲術士官たちによって操作された結果、初撃で敵戦艦を捉えて一撃でそれを葬り去った。51センチ砲弾は易々とコロンビア海軍戦艦のバイタルパートを貫き、それをスクラップに変えたのだ。


 これによってコロンビア海軍に動揺が広がる。パニックが芽を出す。


 空母はあらゆる任務を放棄して撤退するように命じられ、残った艦艇もフリードリヒ・デア・グロッセの主砲を恐れて逃げ出す。


 しかし、フリードリヒ・デア・グロッセはそう簡単に獲物を逃がさなかった。次の砲弾は逃げようしていた空母を捉え、これに命中弾を出して撃沈。カイザー・バルバロッサは残っていたもう1隻の戦艦を沈めた。


 そのような破壊を繰り広げながら、フリードリヒ・デア・グロッセを戦闘とするオストライヒ海軍大洋艦隊はコロンビア海軍が展開する海域に向けて突撃を継続。


 この海域には上陸を待つコロンビア陸軍の部隊や、補給物資を乗せた船団も残っており、彼らは海軍による保護を必要としていた。


 さらに海域に面する場所には上陸作戦で確保した橋頭保がある。


 ここにオストライヒ海軍が突っ込めば──地獄が繰り広げられるだろう。


 ようやく事態の深刻さに気づいたコロンビア海軍部隊はオストライヒ海軍の突撃を阻止しようとあらゆる艦艇と航空機をそちらに向かわせる。


 だが、もう遅すぎた。


 オストライヒ海軍は海域に侵入し、虐殺を始めたのだ。


「見える船は全て沈めろ。全てだ」


 マルシャル提督の剣呑な命令が伝達され、突入したオストライヒ海軍はあらゆる目標を砲撃。輸送艦はもちろん護衛のために残った戦闘艦にも砲撃を加え、次々に彼らを撃沈していく。


「いいぞ、いいぞ。今日はオストライヒ帝国海軍最良の日だ」


 思わず口角がつり上がるほどマルシャル提督は満足していた。


 コロンビア海軍は少しでもダメージを与えようと戦闘艦が距離を詰めてくるが、残った巡洋艦や駆逐艦の類は戦艦の副砲や直掩艦のい砲撃で退けられてしまう。


 さらに混乱の中で輸送艦が右往左往と衝突が発生。戦闘艦も巻き込まれる。


「敵はもはや何の脅威でもないな。鏖殺してしまえ」


 このマルシャル提督の剣呑な命令ののちに、コロンビア海軍は海域にいた全ての艦船を失った。全ては水底に沈み、永遠に失われた。


「さて……。ここまで上手くいったのだ。アルビオンで戦う友軍たちを支援して帰るのも悪くない」


「ええ。敵の橋頭保は今は無防備な状態です」


「51センチ砲の威力、敵の地上部隊にも味わってもらおう」


 そして、物資が揚陸され、蓄えられていた港湾施設に向けてフリードリヒ・デア・グロッセとカイザー・バルバロッサの2隻が51センチ砲を照準する。


「撃ち方始め!」


 地上に向けて51センチ砲弾が降り注いだ。


 あらゆる建物が薙ぎ払われ、貯蔵されていた武器弾薬が誘爆し、そこにいたコロンビア軍の軍人たちも一瞬で死に至る。


 既に敵海軍の脅威なしと判断したフリードリヒ・デア・グロッセとカイザー・バルバロッサは地上に対する殺戮を思う存分楽しんだのちに、完全にコロンビア軍の橋頭保が破壊されたのを見て撤退を開始した。


 これによってコロンビア軍は制海権と航空優勢、そして物資集積基地を失うという大打撃を受ける。既に前線では補給物資が途切れがちになっていたのが、完全に物資が届かなくなったのだ。


「友軍が航空優勢を奪還!」


「いいぞ。これより我々は反撃に打って出る」


 第2皇帝親衛装甲軍団のフィッシャー大将はそう命じ、隷下の全部隊が反撃に転じた。これまで彼らを悩ましていたコロンビア軍の航空攻撃はもはやなく、彼らは意気揚々と反撃のために前進していく。


 物資がなく、燃料や弾薬が切れているコロンビア軍の地上軍はまともに反撃することもできず、諦めて降伏するか、ありあわせのもので抵抗しては全滅していった。


 前線は一気に押し崩され、もはや完全に崩壊したも同じものとなり、コロンビア軍は助けを求めて北へ、北へと撤退する。そのあとをオストライヒ・アルビオン両軍が追撃し、街道にはコロンビア軍によって放置された戦車などが多数残された。


「連中をアイスランドまで押し返せ!」


 これが合言葉となり、オストライヒ・アルビオン両軍は猛追撃。


 そして、ついにコロンビア軍は最初に上陸した地点の傍にある都市にまで追い込まれてしまったのだった。


「降伏せよ。諸君らはもはや完全に包囲されている」


 都市を包囲するアルビオン陸軍の将校が、都市に立て籠もるコロンビア軍にそう勧告。アルビオン陸軍としては自分たちの国の都市を戦火に巻き込みたくはないという思いがあり、降伏してもらえば人道的に扱うつもりだった。


 これに対してコロンビア陸軍は降伏を認める構えだったが、海兵隊が交戦継続をと意気込み、指揮官の間で意見に相違が生じた。


 そのため降伏交渉には時間がかかり、オストライヒ側は時間稼ぎではないのかと疑い始める。オストライヒ地上軍は都市を破壊してでも、残るコロンビア軍の残党を始末するつもりだった。ここは彼らの祖国ではなく、その点にためらいはない。


 交渉の期限が迫る中、オストライヒ地上軍は火砲の狙いを市内に定め、航空機も爆装して飛びたてるように準備が行われた。


「我々は降伏する」


 だが、コロンビア軍はついに降伏を決定した。どういう経緯か海兵隊の指揮官が銃殺体となってから、コロンビア軍はついに降伏したのだ。


 都市に立て籠もっていたコロンビア軍は陸戦条約に従って武装解除して捕虜となり、アルビオン陸軍に連行されて行った。


 こうしてアルビオン島での戦いは終結したのだった。


「次はアイスランドか」


 アルブレヒトはアルビオンに上陸したコロンビア軍が降伏したという知らせの報告を受けて満足げにしている。


 しかし、彼が満足しているのはこれだけではなかった。


 ユーディトが無事出産を終えたこともある。


 彼らはついにこの帝国の後継者となる子供を得て、その子供はマクシミリアンと名付けられた。今はユーディトとともに病院で過ごしているが、間もなく宮殿に戻ってくる予定である。


 アルブレヒトも既にマクシミリアンの健康な姿を見せており、ユーディトと喜びを分かち合っていた。


 そのような中で戦争は次のフェーズに進む。そう、最終フェーズへと。


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