アルビオンの危機
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──アルビオンの危機
コロンビア海軍大西洋艦隊は2隻の正規空母を失った。
オストライヒ海軍もまた浮上して無防備だった潜水艦を艦載機によって攻撃されてしまい、潜水艦3隻を喪失した。
「何ということだ。このままでは早くも厭戦感情が世論に満ちるぞ」
海軍から報告を受けたカーター大統領がそう唸る。
「閣下。ここはアルビオンへの上陸は諦め、これまでの方針通りにルーシに対する支援に集中すべきかもしれません」
「それでは伸び切ったルーシまでの海上航路が危険だと海軍が警告しているから、アルビオン上陸準備を命じたのだぞ。最初からルーシを支援する目的で、アルビオンへの上陸も計画されていたのだ。それをいまさら!」
補佐官が述べるのにカーター大統領がそう吐き捨てる。
「アルビオン上陸は決定事項だ。何としても行う。海軍には全力を挙げて制海権を確保するようにと伝えるつもりだ」
「……分かりました。では、そのようにしましょう」
カーター大統領の言葉でアルビオン上陸は決定し、コロンビア海軍と空軍は引き続き港湾爆撃と制海権の確保に努めた。
しかし、アルビオン周辺は旧大陸国家の庭だ。あらゆる場所からコロンビア海軍は攻撃を受けることなった。
水上艦による強襲や潜水艦による奇襲、航空機による攻撃まで。
そして、そのような海上での遅滞作戦が続く中で、オストライヒ地上軍はルーシに対する勝利を収めようとしていた。
すなわちモストグラードが陥落したのだ。
「素晴らしい。モストグラードを狙うものは敗北すると言われてきたが、我々はその忌まわしい伝説を破ったということだ」
アルブレヒトは陸軍からの報告にそう笑みを浮かべる。
「しかし、海上では今もコロンビア海軍からの圧力が続いていますね……」
「ああ。海軍はコロンビアはアルビオン上陸を狙っているとみている。そこで地上軍の一部を事前にアルビオンに向けることを計画中だ。ルーシでの戦争はこれからは残党狩りのようなものになるだろうからな」
モストグラードは陥落し、そこを中心にしたルーシの鉄道網は分断された。
政府首脳部はウラリア山脈に逃げ、南部の穀倉地帯では抵抗が続いているが、そのふたつの場所は鉄道で結ばれておらず兵站線が切断されている。
そのため南部でもルーシは敗北を続け、オストライヒ地上軍はほぼ今年中にウラリア山脈の向こうにルーシを駆逐することができるだろうという報告がある。
そのため既に一部地上軍部隊の帰還が始まっており、その帰還した地上軍をアルビオンに派遣する計画が陸軍参謀本部では持ち上がっていた。
コロンビアがアルビオンに上陸した場合、アルビオン陸軍だけではそれを食い止められない恐れがあるが故に。
「一度アルビオンが占領されれば、取り返すのは難しい。そう陸軍の将軍たちは考えている。しかし、俺としてはコロンビアは是非ともアルビオンに乗り込んでもらいたい」
「それは何故ですか?」
「簡単だ。地上戦で犠牲を出し続ければ、コロンビアの世論は反戦に傾く。あそこはそういう国なのだ。愚かしい民主主義という名の政治をしている国家なのだよ」
アルブレヒトがそう考える中で、コロンビアは着実にアルビオン上陸に向けて動いていた。アイスランドにアルビオン上陸のための陸軍と海兵隊部隊が集結しており、海軍は哨戒機でオストライヒ海軍を追い払おうとしている。
そして、来る帝歴1966年。
まだ冬の寒さが十分に残る時期にコロンビア海軍の大規模な船団が、アルビオンに向けてアイスランドを発った。
船団は厳重な護衛を受けながらアルビオン島に向けて進み、アルビオンの北部カレドニア地方を目指した。
この動きを掴んだのはアルビオン海軍の哨戒機と潜水艦で、彼らはただちにアルビオン本土に危機が迫っていることを通報。
しかし、ここでアルビオン海軍の艦隊は動かず。
動かずというよりも動けずというべきだろうか。これまでのコロンビア海軍の港湾爆撃によって損害が生じていたアルビオン海軍は、今のまま戦えば犠牲だけが増えて勝利は得られないと考えたのである。
オストライヒ海軍もまた動いていない。彼らの方は敢えて動かなかった。コロンビアをアルビオンに誘い出し、アルビオンに上陸したところで海上補給路を遮断することを狙っていたのである。
このような思惑が合わさってコロンビアはついにアルビオンに上陸した。
まず乗り込んだのは空母から発艦したヘリボーンする海兵隊部隊で、彼らが橋頭保を確保。それから次々に揚陸艦が押し寄せて兵力を上陸させていく。
アルビオン陸軍と派遣されていたオストライヒ地上軍はすぐさま上陸してきたコロンビア軍の上陸拡大を阻止するために展開するが、コロンビア海軍の空母艦載機がそれを阻止しようとする。
まずは航空優勢争いが始まり、両国の戦闘機が上空を飛び交っては、煙を吹いた戦闘機や攻撃機、爆撃機が撃墜されて行った。
「航空優勢はまだ確保できないのか?」
アルビオンに派遣されていた第2皇帝親衛装甲軍団のフィッシャー大将が参謀たちにそう尋ねる。
「まだです、閣下。コロンビア海軍の空母艦載機が我々の空軍の動きを妨げています。空軍からは7日以内には決着するとの報告が入っていますが……」
「7日も待てば橋頭保は完全に確保されるぞ」
既にコロンビア海兵隊が橋頭保を拡大しつつあり、港湾施設も占領された。このまま上陸作戦を妨害できなければ、本格的な地上軍がアルビオン本土に出現し、オストライヒとアルビオンに襲い掛かることになる。
「しかし、航空優勢なしに行動するのは危険です」
「それは分かっているが、空軍に短時間でいいので敵の航空戦力を黙らせることはできないのか? ルーシでは地上基地を叩いたりなどしただろう?」
「今回は敵空軍戦力は空母艦載機です。そして、空母の周りには高度な防空コンプレックスとして戦闘艦が何隻も配備されています」
「クソ。では、7日間、待つしかないのか……」
恐らくルーシ赤色空軍の地上基地より、はるかに高密度の防空コンプレックスがコロンビアの空母の周りには存在する。それを叩くのは困難極まりないだろう。
アルビオン上空での航空戦は続き、ルーシでの戦いを終えたオストライヒ空軍部隊も次々にアルビオンの到着し任務に当たる。
実戦経験豊富かつ機体の性能に遜色のないオストライヒ空軍は、コロンビア海軍の艦載機にダメージを与えつつあり、予定通り7日後にはオストライヒ・アルビオン側が航空優勢を得るだろうとの見込みだった。
しかし、その間にもコロンビア軍は橋頭保を拡大し、さらに内陸に向けて侵攻を開始。主力戦車と装甲兵員輸送車、トラック、それから徒歩の海兵隊員たちが内陸に向けて前進し、支配地域を拡大していく。
航空優勢の喪失下なれど、オストライヒ・アルビオンの同盟軍はこれを阻止するために交戦を開始した。
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