第三十七神話 天の星空/地の獄炎
「はぁぁぁぁぁぁぁ?!」
歓声が舞台に響く中、彼女の声が最も響いた。
「えっ?えっ?はぁ?!」
動揺しすぎて、声になっていない。
「ウェスタはん!おっ、落ち着きましょうや!」
「なんでカイジスさんも焦ってるんですか!呼び方が変になってますよ!」
「いやっ…でもっ…」
ウェスタは手足の震えが止まらない。
「え、なに?もしかして怖いの?」
カムイが挑発を含んだ言葉をウェスタに投げる。
「いや、怖いんじゃなくて…」
「楽しみなんだよねぇ…!」
ウェスタの身体は震えていた。
だが、それと違って、ウェスタの顔は笑みを浮かべている。
「…よし、震え止まった」
「それじゃあ!行ってくるね!」
ウェスタは自分の両頬をペチっと叩いたあと、走って控え室に向かった。
「…まぁ、ウェスタちゃんなら大丈夫か」
「うんうん!大丈夫でしょ!」
「まっ、あとは怪我しないことを祈るだけだな」
〜舞台〜
「めちゃくちゃ驚いてたわね」
フレイは杖を地面に刺し、風によって紅髪をなびかせていた。
「お待たせしましたぁぁぁ!」
「来たようね」
舞台の門から、ウェスタが大声で叫びながらこちらに走ってきた。
「ごめんなさいね、急に指名しちゃって」
「はぁっ…はぁっ…いえいえ!」
フレイと向かい合う場所に立ったあと、走って疲れたのか、ため息をついていた。
「……ちょっと休憩する?」
「いやっ…大丈夫…です…はぁっ…ふぅ」
ウェスタは強く息を吐き、その場で数回飛んだ。
「それじゃあ!やりましょう!」
ウェスタは子供のような笑顔で、フレイを見た。
「ふふ、それじゃあ審判?合図をお願い」
「はいっ!それでは決闘大会十一回戦!始め!」
シルフィムの宣言と共に、舞台は熱狂を浴びる。
何千、何万、何十万の歓声が、人の戦いを燃え上がらせる。
「先にどうぞ」
「そう?じゃあ!行くよ!氷撃!」
ウェスタは、手を広げ、手のひらの魔法陣から氷の岩を放つ。
「甘い!」
フレイは杖で魔法を弾き、左右に十個の赤い魔法陣を展開する。
「ちょっ…いきなり?!」
ウェスタは急いで、フレイとの間に結界を展開する。
「それじゃ、次はこっちね?」
「炎蛇」
その声とともに、十の魔法陣は光り輝き、炎の蛇が大地を燃やす。
炎の蛇は結界に衝突し、ジリジリと燃やしていく。
「ちょっとぉ!?」
ウェスタは結界を何度も張り直し、炎の蛇の進行を防ぐ。
「魔力ゴリゴリ減っていくんですけどぉ!」
「あはは!頑張って!」
フレイは子供のような笑い声を上げながら、自身が放った炎の蛇を防ぎ続けるウェスタを見ていた。
「(まずいまずい!これで終わるってぇ!)」
ウェスタは結界を左手で抑えながら、空いた右手を空に掲げる。
「あら?何をするの?」
「出来れば最初っから使いたくなかったんだけどねぇ!」
舞台上空に巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから氷の星が降り注ぐ。
「凍星!!」
「凄いね、ウェスタ」
フレイは小さな声でそう呟く。
「……█████」
フレイは、誰にも聞き取れないような声で、何かを詠唱した。
炎の蛇に向かって直進する氷の星。
フレイも直撃すればタダでは済まない。
氷の星は舞台に直撃し、衝撃音と共に、舞台を冷えた煙で包み込んだ。
「ふぅ…一旦休憩したいところだけど…」
「…まぁ、そうはいかないよねぇ〜」
煙の中でウェスタは杖を持ち、目の前の魔女を警戒する。
「はぁ〜押し切れると思ったのにぃ〜」
フレイの声が煙の中から響く。
「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ甘く見てたなぁ」
ウェスタは変わらず、目の前の魔女を警戒していた。
魔力探知の魔法を使い、確かに目の前の煙の中に魔女がいることは分かっていた。
──ただ、目の前の魔女の魔力は妙な反応を示していた。
「……なんかさっきより魔力多くなってない?」
探知していた魔力の反応はどんどん膨れ上がっていく。
フレイの姿は見えない。
だからこそ──膨れ上がる魔力の圧が、直接神経を刺してくる。
「えぇぇ…」
目の前にいる魔女は、紛れもなく七天神のリーダーを務める逸材。
その魔女が、今、煙の中から姿を表す。
『七天神ヶ壱:焔 フレイ』
「わぁお…」
目の前に居る魔女は、持っていた杖は炎を渦巻き、左に炎の龍、右に炎の騎士を顕現させた。
「……ズルくじゃない?」
「んーやっぱり?」
「じゃあ、こうしよっか」
フレイは、左右に顕現させた炎の化身を、杖で吸い上げ、頭上に魔法陣を展開する。
その魔法陣は、赤色に輝きながら、徐々にフレイに向かって下がっていく。
「降霊:カラミティフレイム」
魔法陣がフレイを通っていき、徐々にフレイの姿を変える。
フレイの身体が魔法陣を通過し終えた瞬間、炎の覇気が舞台を覆う。
「あっつ…」
ウェスタは反射的に、呟いた。
覇気が収まり、ウェスタはフレイの姿を見る。
「えぇ?!何その姿!!?」
彼女の背中が赤熱し、炎の角と翼が盛り上がるように形成され、竜人のような姿になっていた。
「じゃ、第二ラウンドと行こうじゃない!ウェスタ!」
フレイはまた、左右に魔法陣を展開する。
今度は、魔法陣全て合わせて、舞台の端から端まで届く大きさだ。
「ちょ!さっきからいきなりだってぇ!」
フレイとの間に結界を張り終えると、ウェスタは静かに魔法が来るのを待った。
「それじゃ、やろっか」
「
その瞬間、魔法陣が輝き、劫焔が噴き出す。
「はぁぁぁぁぁ?!」
結界は紙のように破られ、炎はウェスタを包み込む。
「ふぅ…終わりかな」
フレイはため息をつき、立ち上がって、その場を後にしようとした。
──だが
「あっつい!あちち!あぁちゃぁ!」
炎の中からウェスタの悲鳴が聞こえる。
「……やっぱり甘かったかぁ」
フレイは炎の方に向き直り、杖を突き立てる。
「(どう来るか)」
「ここまで来たら…使うしかないよねぇ?」
ウェスタの声が響く。
〜観客席〜
「ちょっと、使っちゃうんじゃない?ウェスタちゃん」
「いや〜さすがに…」
「いや絶対使うな、あれ」
〜舞台〜
「
ウェスタは何かを空に向かって投げた。
投げたものが空に浮くと、日差しは消え、星空に変わった。
「綺麗…じゃなくて!見とれてる場合じゃないわ!」
フレイは、宙に浮いているウェスタを見る。
「もうちょっと戦いたかったんだけどねぇ」
「えぇ、私もよ」
フレイは杖を掲げ、魔法を行使する。
「神焔龍:ムフェト」
「魔力を九割あげる」
巨大な魔法陣から、金と赤の鱗を持つ龍が召喚され、舞台は炎に包まれる。
まるで、地獄のような光景となった。
「「これで終わり!!」」
両者同時に魔法を発動する。
「
「放て、ムフェト、
龍が放つ放射状のブレスと、魔女の魔法が放つ星の光線、両者拮抗した勝負となる。
「くぅぅぅぅ!」
「…………」
ウェスタが死に物狂いで踏ん張る一方、フレイは涼んだ顔をしていた。
「ちょっ…とぉ…なにっ…これっ!」
徐々にブレスに追い詰められ、ウェスタの魔法は弱まっていく。
「くっ…ぐぬぬぬぬぬ」
どれだけ踏ん張っても、どれだけ魔力を強くしようとしても、敵わない。
ウェスタはこの瞬間、そう悟った。
ブレスはウェスタの魔法を押し切り、そのままウェスタを包み込む。
「…もっと強く、ならなきゃなぁ…」
ボロボロになった身体が落下し、舞台に叩きつけられる。
その瞬間、戦いは終わりを告げた。
「勝者!七天神ヶ壱:焔 フレイ様!!」
「わぁぁぁぁぁ!」
会場は歓声があがり、また舞台を響かせる。
フレイはウェスタに近づき、手をかざす。
するとウェスタの傷や服が治り、戦う前と同じ状態に戻った。
「んん…ありがとう」
「どういたしまして!楽しかったわ!ウェスタ!」
「うん!私も楽しかった!」
二人は握手を交わし、舞台を後にした。
〜観客席〜
「だぁぁ!負けちったァァ!」
「まぁ仕方ないっちゃ仕方ない」
「とはいっても、惜しいところまでは行ってんだがなぁ」
ウェスタに同行していた三人は各々、ウェスタの戦いを見て、色々と話し合っていた。
〜招待客席〜
「惜しかったねぇウェスタちゃん」
「うん、惜しかったねぇ」
ファラとミュウはまた同じように座って、ウェスタの戦いを見守っていた。
「さて、それじゃ、僕たちも行こっか」
突然、ファラがそんなことを呟く。
「え?行くって…どこに?」
ミュウはファラの言葉の意図を理解出来なかった。
「ほう、今回はその子とやるのだな、ファラよ」
「うん、ごめんなアルディール?」
「よい、先日の弟子の件もある、気にするな」
「そう?それじゃ、ミュウも行こっか」
ファラはミュウの手を引き、一緒に舞台に向かった。
「ねぇ!行くってどこに?!って言うか何するの?!」
「え?あ〜、ミュウちゃん?」
「……何?」
「そのぉ…今から僕と……」
ファラは少し、恥ずかしそうにしながら、この言葉をミュウに告げた。
「死ぬ気の戦い…しよっか」
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