第七神話 帰還と危険

クリュー迷宮を攻略しリヴァルセリムに帰還する途中のファラとアルトリス一行、何やらアルトリス達から質問攻めを受けているようだ。


「説明して下さい!!」


「あはは…落ち着いてアルトリス…」


「そうですよアルトリス、ファラさんが困ってますよ」


アルマスがグヴィルを背負いながらアルトリスを落ち着かせる。


次の瞬間アルマスの顔が少し険しくなる。


「ですが…僕もアルトリス同様、幾つか聞きたいことがあります」


「あはは…それはそうだよね…」


「ではまず…グヴィルをあの化け物に変えた黒い煙…あれはなんですか?」


少しだけファラは考え口を開く。


「あれは…そうだね…どこから説明したらいいか…」


「(流石に…全部話すのは…)」


「無理に全部を話せという訳ではありません、ですがあのような事象が起きた以上我々も注意が必要なんです、どうか教えて頂けませんか?」


少しの間沈黙が流れ土の音だけが流れる。


「……」


「……」


「……わかった幾つか話すよ」


するとアルマスは少しだけ笑みを浮かべた


「ありがとうございます」


「あの煙は魔障の煙と言って…触れた生命に莫大の魔力を供給する煙でして…触れた生命がその魔力に適応出来なかった場合魔物になるというもの」


「…なるほどではアルトリスが聞きたい質問はこれで終わりです、では僕から二つ目、あの化け物は、貴方の事を主神…と言っていたのを聞きました」


「…………」


「これでも僕は少々歴史を知っていまして、この世界を創った神が昔この世界を訪れて天恵を与えたと言う文献もあります、その時に神を指す際、主神と書かれていました…現にリヴァルセリムの王は神が成り代わってると噂されていますし…多少神という存在は認知しています」


「それについては…お聞きできませんか?」


「……ごめん、それについては…少し難しい」


「(むず痒い…ここで事実を述べた方が楽だということは分かっている、だけどこれを言ったら…またあの子達絶神が手を加えてくる可能性がある、だからここは言わない方が正解だと願いたいね…)」


「そうですか…すみませんね尋問みたいに聞いてしまって…それでは依頼を達成したことを報告しに行きましょうか」


気づけば城門前に着いており門番からの通行許可を貰いギルドに向かった。


ギルドに着き扉を開けると


「帰ってきた!!」


「おぉ無事だった?」


試験官だった魔法使い、ウェスタと水色の髪の男が酒場の机からコチラに手を振っていた。


よく見ればギルドにいる冒険者全員がファラ達の事を凝視していた。


アルトリスが汗を流しながら聞く。


「どっ…どうしたんですか?」


「良かったァ!無事で安心したよォ!」


「君達ぃ…よく生きて帰ってきたね安心したよ」


「それはっ…どういう…」


すると受付の獣人が汗を流しながら走ってくる。


「大丈夫でしたか?!誰かお怪我などは…」


「どうしたんですか?!どうしてそんなに…」


すると獣人の受付さんが依頼を受けた紙と魔力観測器具を見せる。


「貴方達が迷宮に向かったあとクリュー迷宮から強大な魔力反応がありまして…魔力鑑定をしたら…」


「魔力反応が……Bから…Sに…」


「えぇ…だから皆さんが僕達を見て驚いてるんですね」


すると受付さんが


「その…貴方達のパーティーメンバーは全員…

ファラさんを抜いてEランクでしたよね?

今回の事例もありまして…至急帰還した冒険者は例外としてBに昇格せよと上層部から通達がありまして…クゥーン」


「つまり?」


「試験無しでアルトリスさん達はBランクへ、

ファラさんはCランク冒険者認定となります!!

ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!!

おかえりなさい!!」


「わぁぁぁぁぁ!!」


試験の時も聞いた歓声がギルド内に響き渡る。


「おめでとぉぉ!!」


「おめでとう先越されちゃったねウェスタ」


「ホントだね!私達も頑張らなきゃ!!」


「まぁファラさんは同じランクだからこれからもよろしくな」


「えぇよろしくお願いしますね」


「そういえばウェスタさん他の仲間の方達は何処へ?」


「今は依頼行ってる!!そろそろ帰ってくるんじゃないかな!!」


「なるほど…」


すると後ろの扉が開き三人の冒険者が入ってくる。


「ただいまー帰って…あ〜!帰ってきてる!!」


白と黒の色が混ざったフードを被った冒険者が

ファラ達を見て笑顔を浮かべる。


「おぉー…生きてましたか心配だったんですよ?」


そういい目の前に来たのは背丈が六尺程ある筋肉

質な男


「(すごい背が大きい)」


「ウェスター!」


そういい魔法使いの方へ走って行ったのは……


「リス…?」


「あらー!おかえりー!」


「スゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」


「(わぁ…めっちゃ吸ってる)」


リスだった。


するとフードを被った冒険者が

「あそうそう、ちょっと不味いことになったよ」


「不味いこと?」


「この街だいぶヤバいかも」


その言葉を聞きギルド内で疑問や不安の声が聞こえてくる。


「は??」


「どういうことだ!」


「ちゃんと言って!」


そんな事を言われ冒険者は続ける。


「まぁまぁ落ち着いて、僕達が依頼を受けに行った迷宮の中にドラゴンの卵が大勢あった、しかも迷宮内だけじゃない、外にある山脈の中にも百以上の卵があった、それももう少しで孵化する物ばっかり、壊そうとはしたけど…なんかすごい硬い結界で守られててひとつも壊せなかった」


「なっ……てことは…」


何人かの冒険者がその言葉の結論に至り汗を流し続ける。


「つまり…そのドラゴン達がこっちに来るかもしれないって…ことか?」


「うん…ドラゴンは飼い慣らされてない野良の状態だと、人が多くいる場所を襲う…僕達が帰ってきた周辺に村もないし…襲われるのは多分…この国だ」


するとアルマスが


「受付さん!今すぐこの事をリヴァル王に伝えて下さい!」


「はっ…はい!!」


そういい受付の獣人は扉を開け急いで王城に向かった。


「………なぁおい…どうするよ…」


「いやいやドラゴンだろ…?しかも数百体…無理無理無理!」


「にっ…逃げようぜ」


そんな声が聞こえる、ファラは心を読めることも出来る故に逃げようと考える人や色んな声が聞こえていた。


「(無理もないよ……ドラゴンの襲撃…この世界でのドラゴンのランクは基本B以上…それが百以上も襲ってくる、どんな冒険者でも狼狽えるよ…逃げる方が…)」


「護りましょう」


「───え?」


そういいアルトリスは声を上げる。


「この国を…皆さんで守りましょう!!私達は冒険者です!!戦わずして何が冒険者ですか!!

……確かに私も死ぬのは怖いです!!死なずに冒険して!楽にお金稼いで!何も危険なく過ごせたらって何度も思います!!

ですが!いつも依頼をこなし何度も危険な目にあってる私たちが!!いざ危険が迫ってるこの国で戦わなきゃ…誰がこの国を守るんですが!!

王様ですか??確かに、この国の王様は強い力をお持ちです!!ですが!それでいいのですか?!頼るだけでいいのですか?!私達の存在意義を失っても…良いんですか?!私は嫌です…もう…護られるだけの存在は嫌です!!今度は…私達が護り抜きましょう!この国を…私達の誇りを!!この国に恩を…返しましょう!!」


少しだけギルド内で沈黙が流れる。


「(…………やっぱりこの子は凄い…怖がりはするけど…それでも突き進む精神がある…私には…)」


するとウェスタが


「いいんじゃないですかー!!私もこの国に…というよりこの国の人達を助けたいし!今まで良くしてくれた人達に恩を返さないとね!」


「そうだね、ぼくもそう思う!今まで危険な事でも突き進んできたのが僕達冒険者なんだから…

こんな時こそやらなきゃ面目丸つぶれだからね」


その言葉を聞き他の冒険者たちも賛成していく。


「俺も!私も!僕も!」


「ふっ…ここまで来たなら…僕達も参加しない手は無いですね」


「そうですね!!頑張りましょう!」


やがてギルド内にいる全ての冒険者が声を上げ自分たちを鼓舞する。


「……やっぱり人間って強い」


するとギルドの扉が開き先程王城へ向かった受付さんが戻ってきた。


「皆さん!!リヴァル王からの伝達です!今回ドラゴンの襲撃の防衛に参加した冒険者には金貨三十枚を…またドラゴンを狩った数につきプラス一枚ずつ足していくとのことです!」


「マジかよ!!」


「大振りだなリヴァル王も!!」


その言葉を聞き先程よりもより大きく、激しい声が響き渡る。


すると受付さんがファラに伝える。


「それとファラさんは至急王城に来て欲しいそうです、これは王命だそうで…」


「…わかった」


そういい扉を開けようとすると


「ファラさん!!」


アルトリスが呼びかける。


「……?」


「また後で!!」


無邪気な…子供のような笑顔を浮かべ手を振る。


「……えぇまた後で」


そういい扉を開け王城へ向かう。


「………言えた」


〜王城前〜

王城の大きな門の前に佇んでいる門番に話しかける。


「すみません王命で来ました、ファラです」


すると門番が


「貴方が……ご案内しますこちらです」


そういい王城の扉を開け中に入る。


少し長い廊下を歩き階段を上る。


その間ファラは考えていた。


「(あの子を吸い上げてから…異様に気分が暗くなってる…なんと言うか根暗な気分みたいな)」


「こちらの扉の奥に王がいらっしゃる、不敬の無いように」


「はい」


そうして扉を開けると少し離れた玉座には青と白の色が混ざった髪に白色の目と青色の目を持った老体だった。


「おぉ!ソナタが…………は?」


すると目の前の老人は汗をダラダラと流し始める。


「あはは…久しぶり…リヴィルセリア…」


「そっっっの呼び方…お前ェ…まさかァ…」


頭の血管が少しずつ浮き上がり今にも爆発しそうなぐらい顔の色は赤くなっていた。


「こっっの…バカ創造神がァ!!何故来たのじゃ!!ただ名前が一緒なだけの冒険者だと思ったのにぃぃぃぃァァァァァ!!」


そう、アルマスが言っていたリヴァルセリムの王は神が成り代わってるというのはあながち間違いではなかった、正確に言うと…


「まあまぁ落ち着いてリル様」


「あっリヴァル王、相変わらず苦労してるみたいですね」


「誰のせいでこうなってると思ってるんじゃ!」


「あはは…お久しぶりです創造神様そちらでは何年経ちました?」


「五百年以上ですかね…」


「これまた随分と長い…私も不老不死になってからそこまで経ちましたか…ささどうぞこちらへ座ってください」


そうリヴァル王は

のリヴァル王とのリヴァル王、表立って政治を行うのは人間のリヴァル王

裏、国の危機に関わる内容の処理は神のリヴァル王が務めている。


では何故最初にファラは気付かなかったのか、答えは簡単だ。


時間の流れによる周辺地帯の変化だ。


元々海の国リヴァルセリムはリーヴァスと言う豊穣の国だった。

ファラはその時の時代までしかエンドクロスの管理をしていなかったのでそれ以上に進化していたことを知らなかった。

何と管理をしなくなってからエンドクロスは

五百年以上経ってしまっている。

故に最初にリヴァルセリムの景色を見ても何も気づかなかったのだ。


ではなぜ気づいたのか、それはの場所にある。


元はリーヴァスに住む冒険者たちの練習場として創造したクリュー迷宮だったが、五百年以上たった今、凶暴なダンジョンとして存在していた。


それとリヴィルセリアことリルがこんなにキレているのはファラが豊穣の国の管理を任せてから連絡も寄越さずずっと放置していたからである。


「五百年も放置しよって!!見ろ!お陰でバカデカい歪みができているではないか!」


「あはは…そのことに関してなんだけど…」


「…む?」


「長くなりそうですので紅茶を入れてきますね」


いつの間にか綺麗な一室に移動していた。


そんなことを気にせず端的にリヴァル王に事情を話し、事を進める。


「なるほどのぉ……つまりお主の配下が反旗を翻したと…」


「恐らく今回のドラゴンの襲撃もあの子が起こしたと思う」


「ふむぅ…ワシもそう思うが…」


「それを起こした絶神?様はどこに行ったか…ですよね創造神様」


そう言い人間のリヴァル王は紅茶を二人の間に置きリルの横に座る


「セリアよあの様な小娘に様を付けなくても良いぞ」


「あはは…」


「して…何故お主は女の姿のままなのじゃ?いつもの様に男に…」


リルの問をファラは遮るように話す。


「それよりもリヴァル王!!この襲撃を…どう対処しますか?」


「むぅ…冒険者達に防衛を任せたいところじゃが…圧倒的に戦力が足らん…他の国に救援を望みたいし…お主の力も借りたいのじゃが…そうなったとしても必ず今回の戦は死傷者がでる…」


「その根拠は?」


「ワシが持つ力を忘れたか小娘」


そういい青い目を見開き機械的な魔法陣を目に宿す。


「神眼:未来視」


「何度か見たが…随分と酷い有様じゃ…惨い…」


「私が全力を…」


「いいや辞めておけお主が本気を出してしまっては世界が壊れる」


少し頬を膨らませ不貞腐れるファラ。

「…むぅ……」


「まぁそんなに不貞腐れるでない!!戦うなと言ってる訳では無いのじゃから」


「ですがリル様まずは死傷者を無くすことを優先しなければ、彼等をこんな所で死なせてしまっては…ご家族に顔向けもできません…」


「まぁ、最悪死んでしまってもワシが生き返らせることは出来るが…それでもやり過ぎると魂にヒビが生じてグールと大差ない程の自我になってしまう…人によっては一回で精神が崩れてしまう者もおるからヤケになって蘇生は出来ぬし…」


「……なら」


「ん?」


「私が本気を出さずにドラゴンを…倒すよ」

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