第21話

「お~い!ミザァ!レダシ!コエビ!行くぞ~!」

「ラクザ姉さん!待ってよ!」

「あたしお腹空いた~!」

「ねぇね....」

広場で演じられてる英雄譚の人形劇を見に行ってる4人の女の子がいた。それがまだ人間だった頃の私達だ。私達4姉妹はまだこの世界が“まとも”だった頃、数千年前から一緒にいた。両親はコエビが生まれた後、病気と疲労の板挟みで他界してしまい、今は私達4姉妹だけで生きている。何事も前向きで活発な長女ラクザ、人一倍頑丈でその分、大食いな三女のレダシ、無口だけど常に私達に付いてくる末っ子のコエビ。私達は裕福とは程遠い生活をしてるのだが、何も毎日辛いという訳ではなかった。常に4人一緒に行動してるし、寂しいと言う思いは気がついた時には無くなってた。公演を見終わった翌日、土壁で出来たボロい家で朝ごはんを食べると時々こんなことが起こる。

「コエビ!レダシ!あなた達、また私のパンつまみ食いしたでしょ!」

「いかん、バレた。逃げるぞコエビ。」

(コクッ)

「ちょっと、レダシ!?コエビ!?」

私が3人を追いかけてる途中にラクザが声を掛けた。

「お~い!お前ら!ま~たケンカか?」

「だって……レダシ達が私のパン食べたんだもん!」

「だって……コエビがあたしのパン取ったから……」

「だって……姉さんのパンが美味しそうだったから。」

3人は口を揃えて言った。

「はぁ……お前らなぁ……分かった分かった。じゃミザァ、アタシのパンやるからもう怒んなよ。」

「え?でも姉さん、これは....」

「いいっていいって!アタシはもう自分の分食ったから。それと二人共、あんま人の物横取りするなよ。いいな?」

「「はーい。」」

ラクザはそう言うと、私の頭をポンポンと優しく叩いて、外に出て顔洗いに行った。そして私はラクザがくれたパンを食べた。朝ごはんを食べ終えた私達は今日も日銭を稼ぐために街の商業通りに行った。今日はラクザはパン屋で持ち前の明るさや人当たりよ良さでの接客、コエビは静かに淡々と作業するのが好きなので服屋で裁縫作業、レダシは持ち前の頑丈さと力持ちで育児と雑用の手伝い。私がしてるのはこの3人よりも稼げるように頑張る事。

「よし!今日こそ働くぞ!」

だが私の希望とは裏腹に今回も銅貨5枚しか手に入らなかった。他の3人は銅貨10枚から15枚前後を手にして帰ってきてたのに……どうして私だけ……

私は家に着いてからずっとこのことを考えてた。するとラクザが帰ってきたのだ。

「ただいまー!ミザァ、今日の分もちゃんと稼いだ.....あれ、どうしたミザァ?元気無いぞ?」

「姉さん……また私、銅貨5枚しか稼げなかった。私、向いてないのかなぁ....」

落ち込んでる私を見たラクザ姉さんは黙って隣に座って私の頭を撫でてくれた。

「そんな事ないぞミザァ、お前はアタシらの中じゃ一番賢い奴だ。実際職を転々としてるアタシらと違って同じ店でずっと通えてるたけでちゃんと銅貨10枚稼いだだけ偉いぞ。」

「うん……」

「自信持てって!大丈夫だ!約束したろ?どんな仕事だろうと皆で稼げればいいって!」

そう言って頭を撫でてくれた姉さんの手は仕事のせいかボコボコとしてたがとても温かくて優しかった。それから暫くして、ラクザ姉さんは帰り道で自分で獲った獣や魚を町で売ってくると言って外に出た。するとレダシとコエビが帰ってきた。私は二人に聞いた。

「ねぇ……2人共、今日の稼ぎってどれくらい?」

「あたしは銅貨8枚くらいかな?コエビは?」

「コエビは……銅貨10枚。」

私は2人の答えに驚いた。私より年下なのにもうそんな稼いでるの?

「え!?コエビ、あなたそんなに稼いだの!?」

「うん....」

「そっか~!偉いぞコエビ~!」

「.....うん、偉いわよコエビ。」

私達はコエビの頭や顔を褒めながら撫で回した。そんなコエビはなんやかんや嬉しいそうだった。そうだ。別に誰が良くて誰が悪いかなんて関係ない。力を合わせて生きるって約束したんだから。その後、ラクザ姉さんが帰ってきて皆で稼いだお金を僅かに出し合って今晩のご飯である食事を買って分け合って食べた。残りのお金は部屋の置くにある床下の穴の奥に貯めた。その日の夜だった、私が寝ようとした時コエビが私の布団に入ってきた。

「ねぇね...」

「ん?どうしたのコエビ?」

「....眠れない」

「もう...しょうがないですね。ほら、こっちおいで....」

「ん....」

私はコエビを私の布団の中に招き入れて、手を握った。

(ゴソゴソ……ギュッ)

「....あれ?姉さん、どうしたの?」

何故かラクザ姉さんも入ってきたのだ。しかもなんの悪びれもなく。

「いや~!アタシも今日は寝付きが悪いからさ~一緒に寝ようかなと思ってな!」

「ふふ♪あたしも!」

「ちょ、ちょっと皆!狭い狭い!」

ラクザ姉さんだけではなくレダシまで入ってきて、私の布団は既にギチギチになっていた。

「もう!これじゃ暑くて眠れないじゃない!」

「いいじゃんいいじゃん!一緒に寝たいんだからさぁ!」

「あたしも寝たい~!」

「コエビも...」

「はぁ……もう分かったわよ……」

そして私達は手を繋ぎながら眠りについた。窮屈でも貧しくても、寒くても腹ペコでもこの4人ならなんでも出来るし、どんな困難も乗り越えられると思った。こんな生活がずっと続けばいいなと思っていた。ずっと...ずっと皆で....

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