第10話
シュンランが照らしてる明かりを頼りにラクザンガ達は暗い通路を進んでいた。ラクザンガ達は警戒しながら進むが特に罠や魔物の気配も感じないのでどんどん進むと通路の先に大きな扉があった。
「ここがこの通路のゴールか?」
ラクザンガが呟くと後ろからユリが“そうみたいですね”と答えた。
「いいかお主ら、まずワタシが最初に行くからな。何が飛び出しても良いように構えておれ。」
シュンランがそう言ってドアノブにある鍵穴に指を指してすぅッと黄色い光が鍵穴に入った。その後、ガチャっと鍵が開く音がした。
ラクザンガとユリはシュンランの後ろで構えている。
そしてシュンランがドアノブを回して扉を開くと小さな部屋が見えた。中が暗くてよく見えなかったのでシュンランが指を鳴らし、天井にぶら下がってるランタンに明かりを点けた。そこは小物や古びた本が壁の棚に敷き詰められてたのでここは物置だったのだと三人は理解した。シュンランが部屋の中を周りを見ながら入っていった。その後に続いてラクザンガとユリも警戒しつつ、入っていった。部屋の中はさっきの王室と同じで埃や蜘蛛の巣まみれであった。するとシュンランは本棚から一冊の本を取り出して、モノクロを通して翻訳して一通り読むとどうやら当時、開発されていた魔法が書かれた物らしいのだ。
「ふむ...恐らくこの城はかつて王族の住処だけでなく、様々な魔法の研究所だったようだな。」
シュンランが本を読みながらそう言うと、ラクザンガとユリは首を傾げた。
「それはどういう事ですか?」
ユリの質問に対してシュンランは本を閉じて答えた。
「この本によればこの城は昔どこかの魔女が王なって作ったらしくその者が晩年に残りの寿命で研究を続けた物じゃと思う。そしてこの場所こそが魔法の研究施設だったみたいじゃな……」
「なるほど……それでその研究とは?」
ラクザンガの質問にシュンランは首を横に振った。
「それが書いておらんかったのじゃよ。だがワタシなりに予想ならできる。恐らく魔力の供給をどう効率良くするかじゃったんじゃないかと思うのじゃがな」
シュンランの言葉を聞いたユリは少し考え込んだ後、口を開いた。
「つまりこの城の何処かに魔力を供給していた魔法陣か何かあるという訳ですね?」
ユリの疑問に対してシュンランは頷いた。
「そういう事になるのう。ま、今のワタシらには関係ないがのぉ……」
シュンランがそう言うとラクザンガは“確かに”と言って笑った。そしてシュンランは本を棚に戻し、天井のランタンを見て言った。
「さてと...歴史の勉強はここまでにして、ここに隠れておる者を見つけるかの」
シュンランの突然の言葉にラクザンガ達は驚いて顔を見合わせた。
「...ちょ、ちょっと何言ってるんですか...!ここは廃城なんですよッ!とても人が住めるわけがッ...!」
ユリが慌てた様子で言うとシュンランは軽く微笑んで言った。
「落ち着かんかユリ。ほれここ、よく見てみ?」
シュンランがそう言って指を指した所をユリ達が見ると、棚の側面の埃に何やら跡の様なものが見えた。それはまるで人の手のように見えた。
「これは一体……?」
ユリがそう言うとシュンランはニヤリと笑って答えた。
「ワタシらは特に何も触ってないのにこの棚のこんな特定の場所に埃が付かないわけ無かろう?恐らく何者かがワタシらがここに入ってくると知って、急いで何処かに隠れておったのだろうな。」
シュンランの言葉を聞いたラクザンガ達は驚きを隠せなかった。それを気にせずシュンランは続けて言った。
「そしてこの棚の位置、可笑しいと思わんか?普通、棚を置くのであれば部屋の角まで詰めるはずじゃ。だがこの棚、何故か間を開けて置いておる。」
シュンランの説明を聞いたラクザンガ達は部屋の中を見渡すと確かに他の家具は部屋の角まで置かれているのに、この棚だけ部屋の真ん中辺りから少し横にズレていた。ユリがそれを見て呟くように言った。
「確かに、この棚だけ少しズレていますね……」
「そうじゃろ?つまりこの棚は誰かが意図的に移動させた物じゃ。そしてそれは恐らくこの城に住んでいた主か神隠しの犯人の仕業なんじゃろうな...」
シュンランがそう言うとラクザンガとユリは納得した様子で頷いた後、ラクザンガが言った。
「じゃあこの棚の間に何かがあるのか?確かめてみるか?」
「そ、そうだね。もしかしたら、神隠し事件の犯人かも...!でも気を付けてラック!何が出てくるか分かんないから!」
ユリはラクザンガに油断しないようにと心配する。そんなユリを見てラクザンガは“分かってる”と言って棚の間を慎重に覗いた。するとそこには窓枠2個分の扉が付いていた。ラクザンガがその扉の前の下を見ると、誰かの足跡があった。ラクザンガは誰かが入ってると気付き、ゆっくりとドアノブに手をやった。
「よし....開けるぞ?」
ラクザンガがそう言うと二人は静かに頷き、ラクザンガはゆっくり扉を開けた。そこにはブルブルと震えながら体育座りで縮こまっていた少女が居た。見た目は16歳で金髪のミディアムショート、服装はブカブカのローブを着ていたので恐らく魔法使いなのだと察した。
「お、おい……お前、大丈夫か?こんな所で何を...」
ラクザンガはそう声をかけると少女はビクッと体を震わせて恐る恐る顔を上げた。その少女の瞳はまるで死んだ魚の様で生気が感じられず、顔色も青白かった。そして少女の顔は恐怖の感情で染まっていたのだ。そんな少女にシュンランは優しく言った。
「大丈夫じゃよ、ワタシらはお主を捕まえる悪者ではないぞ?ただ少し話が聞きたいだけじゃ」
シュンランの言葉に少女は少し安心した様子で“良かった”と呟き立ち上がったがすぐにバランスを崩して倒れそうになったのでラクザンガが慌てて少女を支えた。
「おい大丈夫か?」
「は、はい……すみません」
少女は恥ずかしそうに顔を赤くしながらラクザンガの手を借りて立ち上がった。そんな少女の姿を見てシュンランが“ふむ”と呟いた後、言った。
「どうやらこの娘は魔力切れの様じゃのぉ…恐怖で精神的に気が参ってるのもあるが、何処かで大きく魔力を使い果たしたのじゃろ。」
シュンランがそう言うとラクザンガは“なるほど”と呟き、少女に向かって言った。
「えっと……とりあえず自己紹介まだだったな。アタシはラクザンガだ。でこっちがユリで、こっちがシュンランだ。」
「ど、どうも....」
ラクザンガはユリ達と共に挨拶したが少女はまだ少し警戒している様子だった。そんな少女にシュンランが近づいて言った。
「安心せい、危害を加える気はないぞ?ま、その状態では説得力が無いかもしれぬがな」
シュンランはそう言って少女のブカブカのローブの袖から出ている手を優しく握ってあげた。少女は最初は驚いた様子でビクッと体を震わせたがすぐに落ち着いたのか、シュンランの手を握り返して“ありがとう”と呟いた。そしてラクザンガが少女に質問した。
「なぁ……お前はここで何をしていたんだ?」
ラクザンガの質問に少女は“その...”と言ってこれまでの経緯を話した。少女の名前アマリネというらしい。彼女は元々、別のパーティーに所属していて、そのパーティーはアマリネの友人二人と途中参加の槍使いと弓使いで構成されていた。ある日、彼女達はギルドの依頼でこの古城調査を受けた。アマリネ達はすぐに準備して村に向かったのだった。
「なるほど……つまりお主らはその依頼を遂行中に神隠しにあってしまったという訳じゃな?」
シュンランの言葉にアマリネは頷いた後言った。
「はい……。その時、私はこの隠し通路を見つけて入ってたのですが、外で私のパーティーが誰かと争ってるのを聞いて、扉から覗いたら.....皆が謎の二人に一方的に襲われてて、私怖くなって....それで.....」
アマリネは申し訳なさそうに俯くとシュンランが言った。
「気にする事はないよ?誰だって怖くなって動けないから。」
ユリがそう励ますとラクザンガが質問した。
「それで、神隠しの犯人はどんな奴だったんだ?」
ラクザンガの質問にアマリネは少し考えてから答えた。
「私が見たのは黒いローブを来た大人の男性二人でした。一人は顔に傷が付いていて、もう一人は...帽子を深く被っていてよく見えませんでした...。」
アマリネの言葉にシュンランが少し頭を抱えて言った。
「ふーむ、きっと其奴らが今回の神隠し事件の犯人かもしれんな……。盗賊か、山賊か....」
シュンランの言葉を聞いたラクザンガとユリは少し考えてから口を開いた。
「とりあえず早くここから出ようぜ?ここで長居するのも危ねぇしよ?」
ラクザンガの言葉にユリ達は頷くと立ち上がって部屋を出ようとしたが、アマリネはラクザンガとシュンランの手を強く握って止めた。
「ま、待ってくださいッ!実は...まだ少し不安なんです……お願いです。もう少しだけ一緒に居てください……」
アマリネは今にも泣きそうな声でラクザンガ達に言った。そんなアマリネの言葉にシュンランは微笑んで答えた。
「うむ、構わぬよ?じゃがあまり長居するとお主の魔力も心配なのでなぁ……。ワタシが魔力を回復させるまで待っててくれんか二人共?」
「私はいいですよ!アマリネさんが安心するまで待てます!」
「まぁな、行動してる際に急に倒れたら堪ったもんじゃないからな。」
「は、はい...それではお願いします……」
アマリネはそう言って頭を下げた後、ラクザンガとシュンランの手をゆっくり離した。そして今度はシュンランがアマリネの手を握りながら深呼吸をすると、繋いだ手が光り、その光がやがてアマリネの体を包み込んだ。
「今ワタシの魔力をこの娘に注いでおる。早ければ数分で終わるからのぉ」
「あ、ありがとうございます...。なんだか体のダルさが無くなっていく気がします...。」
アマリネはシュンランにお礼を言った。そんなシュンランをラクザンガは少し退屈そう地べたに座って見ていた。その隣にユリが座って、ラクザンガに話し掛けてた。
「シュンランさんって本当に凄いよねぇ。色んな魔法を使えるし、回復も出来るし...。」
「...あっそ」
ユリの話に素っ気ない態度で返事するラクザンガに続けて話し賭ける。
「....ねぇラック、シュンランさんの事、嫌い?」
「...別に」
「嘘、だって私がシュンランさんと話してる時、いつもラック不機嫌に見てたじゃん。」
ユリの言葉にラクザンガはドキッとしてユリの方を向いた。ラクザンガはシュンランの事は別に嫌いではない。しかしシュンランとユリがよく話す事が多く、ラクザンガにとっては少し嫉妬していた。それに気付かれたラクザンガは焦って言い訳しようとしていた。
「べ……別にアタシは……ッ!」
「うんうん、分かってるよ。ラックがシュンランさんの事、嫌ってないってこと。」
「いや、そうじゃなくて....ッ!」
ラクザンガはユリに誤解を解こうとしてた。だが空かさずユリは話続けた。
「あのねラック、私はずっとラックの事を恋人になるぐらいに好きだよ。って言うかもうなってるし...だから何もシュンランさんとはそう言うのじゃないんだよ。私、シュンランさんに回復魔法のやり方を教わってたんだ。ラックが無茶してもすぐに回復出来る様にね?」
「そ、そうかよ....」
その事を聞いたラクザンガは顔を少し赤くして俯いた。そう言ってラクザンガの頭を優しく撫でた。頭を撫でられてるラクザンガの表情は満更でもない表情になっていた。そんな二人の時間はシュンランの魔力供給が終わった事によって打ち消された。
「……終わったぞい。」
「わぁ!力が漲ってきた...!ありがとう、シュンランさん!」
アマリネがシュンランにお礼を言った後、ラクザンガは立ち上がり、尻に付いた塵を払った。
「よし。アマリネも元気になったし、さっさとこんな薄暗い所出るぞ。」
皆が頷いて立ち上がった。そして皆でさっきの通路を戻り、隠し扉から全員出た。ラクザンガ達がネモネア達と合流しようと話してた時、アマリネがシュンランに話し掛けた。
「あの……シュンランさん……。」
「ん?何じゃ?」
「その……さっきは回復魔法ありがとうございました!私、このご恩は絶対に忘れません!」
そう言って深々とお辞儀したアマリネの姿を見たシュンランは微笑んだ。
「いいってことじゃ。それよりもお主には大事な任務があるぞ。今回の事をワタシ達と一緒ギルドに報告するんじゃ。神隠しの犯人の顔を知っておるのはお主しかおらん。頼んだぞ。」
「は……はい!私、精一杯頑張ります!」
シュンランの話を聞いたアマリネはやる気に満ち溢れていた。そしてラクザンガ達は王室から出ようとしたその時、玉座の方から謎の声がしてきた。
「ほぉお....やはりあのパーティーの生き残りが居たか。」
ラクザンガ達は玉座の方を向いた。そこには黒いフードを被った男二人が居た。その姿を見たアマリネは恐怖した表情でその男を見ていた。そしてユリが怯えながら男に話し掛ける
「あ……あの!一応聞きますが、あなた方は誰ですか?」
「俺達か?あぁ、今はこの古城での神隠しの犯人って言われてるぜぇ~?」
男は笑いながら答えた。それを聞いたラクザンガが驚いた表情をする。
「何だと!?じゃあてめぇらが……!?」
「そんな……ッ!」
ユリは男の言葉を聞いてショックを受けていた。そしてシュンランが男に話し掛ける。
「……お主ら、名は何という?」
「俺は『シァウ』、こっちは俺の弟分『エッセン』だ。よろしくな、嬢ちゃん達。」
「あ……あぁ…あいつらが、私の仲間を....」
「アマリネッ!お前は下がってろッ!」
ラクザンガ達は警戒して攻撃体勢に入った。しかしシャウは余裕そうに笑いながら玉座から立って歩いて来た。そしてラクザンガ達の前に立って、シャウが話始めた。
「まぁそう構えるなって。俺達もお前らに話があるんだよ。」
「何……?」
「実は俺達はあるデカイ金儲け話を聞き付けたんだ。だから今日もって盗賊家業もやめることにしたんだ。」
「金儲け....?盗賊....?そんな胡散臭いのとアタシらに何の関係があるんだ?」
ラクザンガは警戒しながらシャウに話し掛けた。シャウは更に話続ける。
「まぁ最後聞けって。その金儲けなんだがなぁ...どうやら2~3人程度じゃ成功しないらしんだよ。だからお前ら俺らと手を組まねぇか?そしたら生かしてやるよ。」
「てめぇ、何言ってやがる……?」
「そんな……!私はそんなの嫌よ!冗談じゃないわ!あんた達が私の友達を....!」
シャウの言葉にアマリネが反論する。しかしシャウは話続ける。
「じゃあお前含めてそっちの“新しい仲間”はどうなってもいいんだな?」
その話を聞いてアマリネは口ごもる。するとシュンランが前に出た。
「すまんがお主らは大きな勘違いを2つしておる。1つはこの娘とは仲間ではない、只の知り合いじゃ。もう1つ、ワタシらはいくら金に困っていても非道に堕ちてまでとは思わん。」
「何だよ、つまんねぇ。じゃあ最後の質問だ。てめぇらは“やるか”、それとも“やらねぇか”?」
それを聞いたラクザンガが怒鳴って答える。
「答えの分かりきった愚問投げんじゃねぇッ!!!てめぇらみてぇなクズ、今すぐぶっ飛ばして“やる”ッ!!!」
ラクザンガの言葉を聞いたシャウは笑って答えた。
「わぁ~お!勇気あるねぇ~!アハハハハッ!!!.....じゃ死ね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます