第50話:準決勝2、決着

現時点での生存者

超神威:残り3人

・中島 塔也(念動力、2級)

 通称「前衛殺し」

・根藤 滝生(植物使い、2級)

 通称「北の死神」、北大陸最強の後衛バックアタッカー

・佐呂間 雪(降雪、3級)

 広範囲の降雪能力が凶悪


shadow attacks:残り2人

・重影 翔(重力使い、3級)

 戦闘能力と優れた嗅覚を併せ持つ

・霊泉 葵(透明化、3級)

 重影との複合異能力「空間移動」が強力


――――――――――――――――――――


 超神威の開始地点である草原では根藤 滝生と佐呂間 雪が待機していた。佐呂間の異能力「雪使い」により、周囲には雪が積もっている。


「凍次が脱落か。これで中島が重影か霊泉を倒せなければ負け確定って感じかな」


 根藤は既に異能力を解除しており、体力を温存している。


「そうですね。逆に相手チームのどちらかが残った場合はすぐに降雪の範囲を広げて捕捉しないと」


 佐呂間の降雪能力を使えば中島の援護は可能だが重影たちに遠くに逃げられる可能性を考え、現時点では開始地点の草原を守るのみに留まっている。


「俺、1つ重大なことに気付いたんだよ」

「どうしたんですか? 滝生さん」

「白金が脱落した時点でこのフィールド上には……」


 根藤は続ける。


「20代が俺しかいない」


『ドーーン』


 根藤の脳内で雷が落ちる。


「……そうですか」

「びっくりだよな」

「どうでも良すぎてびっくりです」

「いやどうでも良くねぇよ。明らかに回を追うごとに年齢層が若くなってんだよ」








 その頃、shadow attacksの2人は中島 塔也と戦闘を繰り広げていた。重影 翔は霊泉 葵を抱えたまま異能力「重力使い」を発動して高速で走り続ける。


(念動力の射程内でコンマ数秒でも止まれば確実に首をへし折られる。上手く隙を作って一瞬で仕留めないと)


「行くぞ、葵」

「うん」


 重影は霊泉の異能力「透明化」によって透明になった直後、隠し持っていた砂利を投擲。重力使いによって勢いを増した砂利は散弾のように中島に迫る。


『バチッ』


 しかし中島は異能力「念動力」を発動して目の前に力場を生成し、飛んできた砂利を弾く。


(そう簡単には行かないよな。それなら……)


 重影たちは周囲の砂を巻き上げ、複合異能力「空間移動」を発動。中島の真上に大量の砂を転送した。


(煙幕のつもりか。だが、どこから来ても同じことだ)


 重影は再び砂利を投擲し、直後に複合異能力で中島の真上に瞬時に移動。霊泉の異能力によって透明化し、重影の異能力で自身の重力を強めるとナイフを手に取り、上から中島に迫る。


(っ! 上か……!)


 中島は頭上に力場を生成して防ごうとするが、重力使いによる威力の増強で貫通。そのまま中島の首元にナイフを突き刺した。


(透明化によって発見を遅らせ、死角からの一突き。3級2人の連携でここまでの完成度に仕上げてきたのは見事だ。だが……)


『バキッ』


 次の瞬間、重影と霊泉は念動力によって首を折られた。


(藻部山には遠く及ばない)



「重影 翔、霊泉 葵、死亡」

「shadow attacks、残り0名」


「勝者、超神威」








 海元高校の控え室では、大橋 雷斗たちがモニターから試合を見ていた。会場では実況者たちが興奮気味に話している。


「中島ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「shadow attacks相手に4キルを果たし見事勝利! 危なかったですねー」

「これで中島が負けていたらキル数優位で一気に巻き返されていましたからねぇ。この試合のMVPは間違いなく中島でしょう!」


(決勝の相手は超神威か)


「冬海兄弟とか根藤もやばいけど、中島も相当だな」


 大橋の隣にいた津和崎 徹が呟く。画面に映った中島はナイフで刺された首元を押さえているが、不思議なことにほとんど出血していない。


「そうですね。傷もある程度なら念動力で止血できるみたいですし」

「首折りと力場生成によって攻守共に強力で、自身を浮かせて空中戦もできる。異能力の射程が短いことを除けばそこらの1級よりずっと厄介だな」

「これは作戦会議が捗りそうですね」


 試合の終了を見届けた海元高校のメンバーたちは円陣を組む。


「泣いても笑ってもあと1戦、勝てば優勝だ。それじゃあ最後も、」


 津和崎の掛け声が響く。


「楽しんでこーぜ!」

「「っしゃああああ!」」


 こうして第8回チームバトルトーナメント、グランドファイナル2日目は幕を閉じた。



【決勝戦:海元高校ビーチバレー部 vs 超神威】

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