第47話:司令塔潰し

複合異能力

・重影 + 霊泉 → 空間移動


――――――――――――――――――――


『開始』


 超神威の開始地点では、白金 碧以外のメンバーが2人組を作っていた。根藤 滝生と佐呂間 雪、中島 塔也と冬海 凍次という組み合わせであり、離れないように腕を組み合っている。


「僕か雪ちゃんが良いって言うまで腕を解いちゃダメだからね」

「「了解」」


(なるほど空間移動の対策か。くっついてる2人はまとめて転送するしか無いからな。それに……)


 凍次がそんなことを考えていると、佐呂間は異能力「降雪」を発動し、周囲に雪を降らせ始める。


(1〜2分もすれば雪の異能力で俺たちに有利な雪原が出来上がる。重影たちからしたら時間も限られてくるわけだな)


 佐呂間と腕を組んでいた根藤が唐突に凍次を煽り始めた。


「いぇ〜い、凍次くん見てるぅ〜?」

「あいつ殺していいか?」

「ああ。俺も手伝う」


 凍次は異能力「氷使い」を発動し、氷柱を出現させると根藤に向ける。凍次と腕を組んでいた中島も異能力を発動する準備をする。


「冗談だって冗談」

「滝生、ちょっと……」


 異能力「未来視」を発動して今後の状況の変化を見ていた白金が根藤に近付き、何やら小声で話し始める。


「あー、そういうことね」

「何だ? 何の話?」

「すぐに分かるよ。それじゃ……」


 白金は根藤から離れると、他のメンバーたちに振り向く。


「あとはお願いね」


 そう言った次の瞬間、白金の姿が消えた。








 shadow attacksの重影 翔と霊泉 葵は、超神威の開始地点付近まで接近し、複合異能力「空間移動」を発動。単独の白金を自分たちの開始地点付近に転送し、腕を組み合っている中島と凍次をまとめて離れた位置に転送した。


(っ! 未来視の通り、まずは単独の僕を潰しに来たね)


 shadow attacksの開始地点付近に転送された白金の前に、安楽岡 剛と裂山 風花が現れた。


「行くぜっ!」


 安楽岡は異能力「無効化」を発動して白金の異能力を無効化し、武器の手斧を構えて突撃する。対する白金はナイフを持ち、安楽岡を迎え撃つ。


(っ! 早い!)


 白金は初撃を上手く回避したが、安楽岡の異常に高い身体能力によって次々に攻撃が繰り出される。


「がはっ……!」


 ついに腹に斧が炸裂し、白金はその場に倒れ絶命した。


「ふぅ、カウンターが来そうでヒヤヒヤしたぜ」

「ああ。碧様が……」


 ここで、白金のファンである闇沢 千里が現れ、彼の死体に近付く。


「死んでる顔も綺麗」

「怖いわ」


『グサッ』


「え……」


 突然、倒れた白金の体から鋭い根が伸び、闇沢の胸を貫く。


「千里! ……っ!」


 直後、さらに白金の体から多数の根が瞬時に伸び、周囲に突き刺さっていく。裂山が異能力「風使い」を発動して風の刃を飛ばし、彼女と安楽岡に迫って来た根を切り裂く。


「根っこってことは根藤の植物使いだよね。白金は自分の体に予め植物を仕込ませていたってこと?」

「みたいだな。まさか、最初に闇沢を狙ってくるとは」



「白金 碧、死亡」

「超神威、残り4名」


「闇沢 千里、死亡」

「shadow attacks、残り4名」








 鋭い根に貫かれ、脱落した闇沢はステージ上に転送された。ステージには超神威の控えの冬海 氷河と、ほぼ同時に死亡した白金がいた。


(最初に支援サポーターの私を潰してきた。千里眼の索敵能力が序盤で無くなるのは痛いな)


「やあ、千里ちゃん。この前一緒に食事したとき以来だね」

「あ……碧様」


 白金が闇沢に近付き、声を掛ける。


(か、顔近っ……!)


「ごめんごめん、千里ちゃんの反応が可愛くてついね」

「可愛っ!?」

「なあ碧、その辺にしといた方が……」


 白金の後ろにいた氷河が止めに入る。観客席の最前列にいる白金の女性ファンたちの視線が一斉に闇沢に突き刺さった。


(わざとやってんだろこいつ。一緒に食事って5ヶ月前に凍次がバトロワの後に打ち上げ連れてきたときの話だろうが)


 氷河は呆れつつ、フィールドを映したモニターを見上げる。shadow attacksのメンバーたちは、凍次と中島のペアに接近しているようである。


「複合異能力で相手チームを分断して、倒せそうな相手から確実に削って有利な状況を作る。ほんと厄介な戦法だな」


(だが、闇沢の脱落によって千里眼による瞬時の索敵は出来なくなった。それに……)


超神威うちの前衛2人のペアはそう簡単には倒せないよ」


 超神威とshadow attacksの戦いは、早くも次の戦闘が始まろうとしていた。

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